「日本食茶の会」理事長 石川美知子
秋の風情を感じる料理
海外旅行で、宿泊先のホテルに着き、やれやれこれで一服と、日本から持ち込んだ緑茶を入れたところ、お茶の味も色も出ず、がっかりしたという経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。
「それは、国によって水質が違うからよ」と気付く人も、最近は多くなりました。
私も、30年ほど前に、米国のラスベガスやフランスのパリで、同じような経験をしました。水によって、お茶の出方がこんなにも違うのは、なぜだろうと調べてみました。
水には、カルシウムやマグネシウムなどの含有量が多い硬水と、比較的少ない軟水があります。ラスベガスやパリの水は硬水で、日本の水は軟水だったのです。
緑茶に合うといわれる軟水は、お茶の成分や色、香りをバランスよく引き出します。
一方、硬水は、お茶の成分とミネラル成分が結合して、素材の持ち味を引き出しにくくします。その結果、色が悪くなり、苦味もあくも強くなるので、スッキリした味わいになりません。だから、チャイやミルクティーのようにお茶を煮出す方法で飲みます。
エスプレッソを生んだコーヒー文化の国・イタリアも、非常に硬度の高い硬水です。また、中国、トルコ、イギリス、ロシアなどの硬水圏では、紅茶やウーロン茶が飲まれています。
日本を始めとした東南アジアや、米国のサンフランシスコなどの軟水圏では、緑茶が好まれています。煮物、鍋物など、素材の味をそのまま引き出す、日本料理の繊細な味わいは、まさに軟水があってこそ、出すことができるものなのだと思いました。
フランス料理とコーヒー、イタリア料理とエスプレッソ、中国料理と中国茶、イギリスのお菓子と紅茶、トルコ料理とチャイ、日本料理と緑茶・・・。
こうして、硬水圏と軟水圏の料理と飲み物を挙げてみるだけで、面白いですね。それぞれの地域の食文化は、その地域の水質に大きな影響を受けながら、長い年月をかけて、独特の発展をしてきたといえそうです。