言葉の奥の〝叫び〟を聞く
山下 作中の子どもたちがクラスの「いじめ」と向き合い、自分の考えを見詰め直すシーンは、深く考えさせられました。
吉富 大人から「いじめは悪いこと」と言われても、当の本人たちはピンとこないのが現実です。本の登場人物を通して、いじめられる側の痛みを知ってもらえたらと思っています。
山下 吉富先生の思いが、ひしひしと伝わってきます。
吉富 以前、子どもの相談に携わっていた時、多くの子どもたちに〝信頼できる相談者がいない〟ことを知りました。ひとりで抱え込むから悩みはどんどん深くなり、大きくなります。〝出口への誘導灯〟は必要です。その役割を担う大人が少ないように感じました。子どもを取り巻く周辺への「怒り」が、わたしの著作活動の原点といえるかもしれませんね。
山下 やはり大人の責任は大きいと思います。名誉会長の著書『希望対話』の中でも〝「どんな『いじめ』も、断じて許さない!」という強い意志が、大人になければいけない〟と綴られています。
吉富 大人は表面上の言葉だけで子どものすべてを判断しがちです。わざと悪ぶってみたり、十分に思いを表現する言葉を知らない子どももたくさんいます。
事の善悪を、大人がしっかり子どもに伝えるためには、まず何より、子どもの言葉に耳を傾けること。そして、言葉の奥にある真意を、くみ取ってほしいと思います。
山下 大人が子どもに寄り添い、打ち明けられない思いに気付く必要があるのですね。
吉富 そう思います。親の悩みも共有していきたいですね。社会問題化した「モンスターペアレント」の叫びにも、親のSOSが隠されているように思えるんです。
山下 子育ての悩みを誰にも相談できず、学校に苦しみをぶつけてしまう。それをモンスターと言われ、行き場を失っている・・・。
吉富 その鬱憤(うっぷん)の先が、いつしか子どもに向かうのではないかと危惧しています。親だからといって、いつも寛大でいられるわけではありません。愚痴を言い合ったり、時には子どもを預かったり。地域や社会が、子育てをフォローするような環境をつくっていきたいですね。
「真の勇者の道を歩まん」
山下 『チェンジング』には、人と人との素敵な交流が描かれています。
吉富 人と人とのつながりがあってこそ、自分の「味」も深まっていくと思います。
山下 人生に、決してムダな出会いはないということですね。
吉富 〝あのときのつらさが今になって、いい味を出しているんだな〟と穏かに振り返れるような生き方をしたいですね。年齢を重ねてこそ、見える世界があると思います。
山下 『チェンジング』のとうびを飾る言葉に、「真の勇者の道を歩まん」とあります。私の大好きなフレーズですが、そのあるべき姿とは、どういうものでしょうか。
吉富 真の勇者とは、優しい人です。優しくあるためには、強くなければならない。自分の命を賭してまで、信念を貫く勇気。そこまでの優しさは、なかなか持てません。自分にも、言い続けている言葉なのです。
山下 法華経には、「忍辱(にんにく)の心は決定(けつじょう)し端正(たんしょう)にして威徳(いとく)有り」と説かれています。人々の幸福を実現するためには、いかなる辱めをも耐え忍ぶ、威厳と人徳に満ちた地涌の菩薩の姿が描かれています。ここに「真の勇者」の姿をみる思いがします。それをどう実践していくか・・・。
吉富 そうですね。環境に流されることなく、自分の答えを見いだしていくのは決して楽ではありません。常に学び、自身を見詰め直す必要があるのではないでしょうか。学ぼうとする謙虚な姿勢でいれば、人との関わりも子どもとの関わりも深まっていくように思います。
山下 自身の現状に安住せず、向上心を持って学び続けていく。そのなかで、真の勇者としての自分が磨かれていくのですね。限りない優しさと勇気こそが、〝変わっていける〟鍵であることを、あらためて実感しました。本当にありがとうございました。
おわり
山下 作中の子どもたちがクラスの「いじめ」と向き合い、自分の考えを見詰め直すシーンは、深く考えさせられました。
吉富 大人から「いじめは悪いこと」と言われても、当の本人たちはピンとこないのが現実です。本の登場人物を通して、いじめられる側の痛みを知ってもらえたらと思っています。
山下 吉富先生の思いが、ひしひしと伝わってきます。
吉富 以前、子どもの相談に携わっていた時、多くの子どもたちに〝信頼できる相談者がいない〟ことを知りました。ひとりで抱え込むから悩みはどんどん深くなり、大きくなります。〝出口への誘導灯〟は必要です。その役割を担う大人が少ないように感じました。子どもを取り巻く周辺への「怒り」が、わたしの著作活動の原点といえるかもしれませんね。
山下 やはり大人の責任は大きいと思います。名誉会長の著書『希望対話』の中でも〝「どんな『いじめ』も、断じて許さない!」という強い意志が、大人になければいけない〟と綴られています。
吉富 大人は表面上の言葉だけで子どものすべてを判断しがちです。わざと悪ぶってみたり、十分に思いを表現する言葉を知らない子どももたくさんいます。
事の善悪を、大人がしっかり子どもに伝えるためには、まず何より、子どもの言葉に耳を傾けること。そして、言葉の奥にある真意を、くみ取ってほしいと思います。
山下 大人が子どもに寄り添い、打ち明けられない思いに気付く必要があるのですね。
吉富 そう思います。親の悩みも共有していきたいですね。社会問題化した「モンスターペアレント」の叫びにも、親のSOSが隠されているように思えるんです。
山下 子育ての悩みを誰にも相談できず、学校に苦しみをぶつけてしまう。それをモンスターと言われ、行き場を失っている・・・。
吉富 その鬱憤(うっぷん)の先が、いつしか子どもに向かうのではないかと危惧しています。親だからといって、いつも寛大でいられるわけではありません。愚痴を言い合ったり、時には子どもを預かったり。地域や社会が、子育てをフォローするような環境をつくっていきたいですね。
「真の勇者の道を歩まん」
山下 『チェンジング』には、人と人との素敵な交流が描かれています。
吉富 人と人とのつながりがあってこそ、自分の「味」も深まっていくと思います。
山下 人生に、決してムダな出会いはないということですね。
吉富 〝あのときのつらさが今になって、いい味を出しているんだな〟と穏かに振り返れるような生き方をしたいですね。年齢を重ねてこそ、見える世界があると思います。
山下 『チェンジング』のとうびを飾る言葉に、「真の勇者の道を歩まん」とあります。私の大好きなフレーズですが、そのあるべき姿とは、どういうものでしょうか。
吉富 真の勇者とは、優しい人です。優しくあるためには、強くなければならない。自分の命を賭してまで、信念を貫く勇気。そこまでの優しさは、なかなか持てません。自分にも、言い続けている言葉なのです。
山下 法華経には、「忍辱(にんにく)の心は決定(けつじょう)し端正(たんしょう)にして威徳(いとく)有り」と説かれています。人々の幸福を実現するためには、いかなる辱めをも耐え忍ぶ、威厳と人徳に満ちた地涌の菩薩の姿が描かれています。ここに「真の勇者」の姿をみる思いがします。それをどう実践していくか・・・。
吉富 そうですね。環境に流されることなく、自分の答えを見いだしていくのは決して楽ではありません。常に学び、自身を見詰め直す必要があるのではないでしょうか。学ぼうとする謙虚な姿勢でいれば、人との関わりも子どもとの関わりも深まっていくように思います。
山下 自身の現状に安住せず、向上心を持って学び続けていく。そのなかで、真の勇者としての自分が磨かれていくのですね。限りない優しさと勇気こそが、〝変わっていける〟鍵であることを、あらためて実感しました。本当にありがとうございました。
おわり