雇用形態の違いを学ぶ
 ――講師を学校に派遣して、授業を行っているのですね。もう少し具体的な中身について教えてください。
 まず、1カ月の給料が20万円としたとき、一人暮らしがどれくらいかかるのかを予想してもらいます。
 家賃、水道・光熱費、食費、交際費、国民年金、所得税、住民税などに分けて、それぞれ金額を決めます。その後に、実際の相場と比較することで、自分の予想と現実の違いを実感するわけです。
 生活費の合計が7~15万円くらいを予想する子が多いのですが、実際に一人暮らしをしている若者の、1カ月の生活費の相場は、20万円くらいです。
 ――高校生にとっては意外と高いという認識なのでしょうね。
 そうです。働いたお金がすべて自分のものになるわけではなく、税金や国民年金などの費用があることを、この時に初めて知る子もいます。
 ほかに、働き方も学べる教材になっています。フリーターや正社員、派遣社員であった場合の収入や労働時間を学んだ上で、それぞれの雇用形態であった場合に、1日の生活時間、遊べる時間がどれくらいになるのか、模擬体験をしてもらいます。
 収入は高いが労働時間が長い、収入は低いが遊べる時間は長いなど、それぞれの雇用形態の特徴を知る機会になります。フリーターが悪い、正社員の方が良い、といった単純なことを伝えるのではなく、本人にとって、どのような働き方が理想なのかを、自分で考えてもらうわけです。
 高校生にとって一番関心が高いのは、進路選択です。最近は、入社してから自分が想像していたものと違うなどの理由で、早期離職する人も増えていますから、こうした模擬体験をすることは大切だと思っています。
〝地域のつながり〟が大事
 ――家庭でも金銭教育に取り組めますか。
 紹介した金銭教育の教材「MoneyConnection R」は、マニュアルも含めて「育て上げ」ネットのホームページに公開しています。自由にダウンロードして使えるようになっています。
 高校生くらいのお子さんがいたら、ぜひ、活用してみてください。新たな会話のきっかけにもなると思います。
 ――親に気をつけてほしい点はありますか。
 高校生は、多くの仕事を知りません。
 普段使う店や、CMを出しているような企業くらいしか分からず、職業の多様性が理解できないのです。そのために、将来の職業を早い段階で決めるのは難しいのが現状です。
 だからこそ、家庭では積極的に仕事の話題を出していくべきでしょう。
 また、地域のつながりも大事です。自分の親以外の大人と、仕事についての話を交わすうちに、幅広い社会への見方が身に付き、職業観が豊かになると思います。
ホームページ 
http://moneyconnection.jp/
おわり