愛情を試してくる時期
 ――反抗は成長の証しだと、まずはとらえるべきなのですね。
 そうです、この時期の反抗は、「こんな自分でも僕のことを受け止めてくれるのか?」と、さまざまな形で親の愛情を試してくる意味合いもあります。これまで親に見せなかった部分も、さらけ出すようになります。
 大切なことは、その子の言動をまず認めてあげることです。「何をやっているの!」と否定的な言葉掛けをすると、子どもは親に認められない、愛されていないと感じ、ますます不安になってしまいます。
 そうではなく、「どうしたの?」と、子どもがやろうとしていることを、まず理解しようとしてほしいと思います。
 親から認められれば、子どもは心が満たされ、自分に自信をもつようになります。この自信がその後の人生の土台になるのです。
 反対に、認められない場合、認めてくれる人を求め、外に出ていきます。これが結果的に、非行に結び付くのです。
 ――そのほかに、親に気を付けてほしい点はありますか。
 私は以前、法務教官として、少年院に送られてきた非行少女を立ち直らせるサポートをしていました。その子たちとじっくり話し、非行に走った原因などを聞くと、ある共通した答えが返ってきます。それは、家庭環境の悪さです。
 「いつも親が家にいなかった」
 「親に愛されていない」
 「親に必要とされていない」
 このように親子の触れ合いに不満を感じ、寂しさと不安、愛情不足を強く感じている子が、実に多かったのです。
第三者の協力が必要な時も
 ――家庭が心の安らぐ場所になっていないのですね。
 本来、家庭は子どもにとって一番の安心と信頼を得られる場所です。家庭で十分な愛情を得る中で、子どもは人間としての力を身に付けていきます。
 しかし、非行に走る子どもの場合は、残念ながら、子どもにとって家庭が窮屈なものになってしまっているようです。
 家庭で安心と信頼を得ることができなかった場合、学校に行っても、人間関係をうまく築くことができにくくなります。
 ――どうすればよいのでしょうか。
 子どもは、親自身の覚悟を見ていると思うのです。どんな自分でも、親は受け入れてくれるのか。自分の最低な部分を出しても、愛してくれるのか。信頼してくれるのか――この覚悟があると分かると、子どもは心から安心し、悩んだ時でも、親に相談できるようになるものです。
 ただ、暴力が日常的になり、度が過ぎてきたら、親子関係だけで解決しようとは思わずに、積極的に第三者の助けを借りることが必要です。
 ともあれ、思春期は依存と自立のはざまで葛藤する時期なので、子どもとの関係を築くのに難しい部分があるのは事実です。大変な時期だからこそ、子どもを信じ、主体性を尊重するかかわりを心掛けてほしいと思います。

おわり