思春期に入ると、子どもは、反抗、暴力、夜遊びといった非行に走る場合があります。特に、暴力に対して、親はどのように受け止めればよいのでしょうか。元法務教官で、大阪府教育委員会の訪問指導アドバイザー・魚住絹代(うおずみきぬよ)さんに聞きました。
成長段階と受け止めて
 ――思春期の子どもの暴力は、何が原因だと考えていますか。
 暴力行為が起きるとき、初期段階は、自分の思いを言葉で表現できないために、暴力で表現しようとするとこが多いようです。
 大人は理路整然と話すことができますが、子どもは自分の思いを理屈で納得できるようには、なかなか話せません。伝えられないイライラと、もやもやしたものを抱え、それが積み重なり、言葉ではなく暴力で自己表現すような場合があるのです。
 ――「昔はいい子だったのに、なぜ?」と子どもの変貌(へんぼう)ぶりに驚くことも多いようです。
 親からずっと「いい子だね」と言われ続けた子が、思春期になって突然、暴力を振るい始める――こういったケースは、よくあります。
 一つの要因として考えられるのは、子どもの成長に伴う変化を、親が肯定的に受け止められないことから起きているという点です。
 ――どういうことでしょうか。
 親子のかかわり方は、子どもの成長段階によって異なります。
 思春期は、自我が芽生え、自分らしさを追求するようになります。親に何から何まで面倒を見てもらう時期ではなく、むしろ、親からの自立を試みる時期です。
 この時期に、親と意見が衝突するのは当然なのです。しかし、親にとっては、この変化がなかなか理解できません。「これまで、いい子だったのに、どうして最近は言うことを聞いてくれないの?」と、子どもの自己主張を否定的にとらえてしまいがちです。
 本来、反抗は子どもが立派に成長している証しでもあるので、必ずしも悪いことではありません。
 しかし、親が否定的にとらえてしまうことで、子どもは「自分のことを分かってもらえていない」「愛されていない」と感じます。「いい子」でなければ受け入れられないことに嫌気が差し、暴力という形でストレスを発散させるのです。

つづく・・・