臨床心理士 吉田 晴美
D君が困難な状況に陥るたびに、父親は助けてくれました。最初に起きた問題は、小学4年時の「いじめ」でした。D君の変化に気づいたのは、母親。相談を受けた父親は、息子の話を何日もかけ、じっくり聞きました。D君は学校での出来事を泣きながら話したとか。その後、両親が学校に出向き、問題は解決したそうです。
いじめなくなったものの、D君は学校に行きませんでした。イライラして、母親に当り散らす頻度は次第に増えました。普段、深夜まで働いている父親は、息子の暴力がひどい折は帰宅時間を早め、D君と話し合いを。暴力は少しずつおさまっていったそうです。
D君は、父の転勤もあり、知り合いのいない中学校に入りました。入学直後は登校していましたが、そのうち友達と学校をさぼるようになり、喫煙、深夜徘徊、家出と、行動はエスカレート。自転車やバイクを盗んで乗り回し、深夜、学校に忍び込んだことから、補導されてしまいました。
まるで、父親の登場を待っているかのように起こす、様々な問題。「自分たちの何がいけなかったのでしょう?」と、両親はセラピストに尋ねに来られました。「ご両親は問題が起こるたび、きちんと解決してこられましたね。何か悪いところがあるのですか」――逆に聞き返したセラピスト。
家族療法の見方の一つとして、問題は時に、家族に望ましい変化を引き起こすと考えます。この場合、親同士、親子間でのコミュニケーションが明らかに増えています。ですから、それぞれのコミュニケーションを促進するだけで十分だと、セラピストは考え、それを両親に気づかせようとしたのです。
父親とD君は、「家族旅行」「母への誕生日プレゼント」など、様々なことについて話し合いました。D君は、家族の好みを父親以上に知っています。父親は、D君を頼るように・・・・・・。D君の問題を父親が解決するという関係性ではなくなり、時に対等な相談相手にもなれる、そんな家族の柔軟性が育ってきたのです。
D君の進学先を決めるという、重要なテーマ――これも、一家がきちんと解決したことは言うまでもありません。