教員生活の原点――1本の栄養ドリンク
 私の教員生活の原点は、「1本の栄養ドリンク」です。新任のころ、どうにも手の付けられないB君がいました。毎日、登校までに他校の生徒と「けんか」をしてきます。また、「シンナー吸引」で補導され、私が家庭裁判所に出向いたこともありました。クラスも落ち着かず、毎日が悩みの連続でした。
 そんな中、7泊8日で九州を観光バスで1周する修学旅行がありました。案の定、勝手に宿泊場所から抜けて海に入ったり、たばこを吸ったり・・・と問題続きでした。
 疲労困憊して帰京する日、博多駅のホームに立って、「もう教師なんかやめよう」と真剣に悩んでいるときでした。
 B君が「先生、これ」と、私に1本の栄養ドリンクを差し出してくれたのです。B君の、ドリンクに込められた「心」が、これほどうれしかったことはありませんでした。追い詰められた心境が一気に開け、これまでの心労が吹き飛んだ気がしたのです。
 一番悩んでいた生徒からもらった栄養ドリンクが、その後の教師生活を続ける原点になったと思います。彼は、その後、退学しましたが、東京・青山で「カリスマ美容師」として活躍してきました。何かあると、今でも連絡してくれます。
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 教育現場では、不登校、いじめ、学級崩壊や、また保護者との対応に神経を使うなど、複雑で混迷した教育課題が山積みです。日本社会を直撃する少子化問題も、教育界にとっては大きな問題です。
 その中で、ご存知のように教員採用試験にかかわる不正問題など、教育界の大人の社会規範を逸脱する行為も表面化しています。
 〝真に子どもの幸せを願う〟教育のあり方、教師の存在が、今ほど求められている時はないと思います。
「その道の天才になる!」と確信
 日蓮大聖人は「桜梅桃李(おうばいとうり)の己己(ここ)の当体を改めずして無作三身(むささんじん)と開見(かいけん)すれば」(同784ページ)と延べられています。
 ――桜は桜、梅は梅、桃は桃、李(すもも)は李と、おのおのの当体を改めず、そのままの姿で仏と開きあられしていくのである、と。
 おのおのの個性を最大に生かしながら、自分らしく輝いて幸福になる道を説いているのが仏法です。桃の木に桜の花を咲かせようとしても、無理です。梅の木に李の実を求めても手に入れることはできません。
 同様に、人それぞれに個性があり、それぞれの得意な分野があるものです。子どものそれぞれの個性を認めて、それを生かしていくことが、何よりも大切なことではないでしょうか。教育にあっても、おのおのが努力した結果は、それぞれに価値があるのです。
 池田名誉会長は子どもの可能性について、「どんなに大きな違いがあるように見えても、すべての人間は、遺伝子(DNA塩基配列)の99.9%パーセントが共通している。だから一人にできたことは万人にできる。あなたは、あなたの道の天才になれる。自分の中の『宝』を疑わない限り、いくらでも伸びていける。どんな苦しい闇も打開できる。必ず、できる」と記されています。
 子どものもつ可能性を信じ、個々の努力を最大に評価して、それぞれの子どもたちのなかにある〝宝〟を開花させる「教育」という使命の道を走り抜けてまいる決意です。
おわり