「日本食茶の会」理事長 石川美知子
秋の風情を感じる料理

 もともと〝茶わん〟と〝湯飲み〟は同じ物。茶を飲む磁器性の〝わん〟のことで、茶釜や水差などの茶道具と一緒に、中国から伝わってきました。
 秀吉の桃山時代になると、武士などの支配階層の人々によって、茶葉の粉末である。〝抹茶〟に湯を注ぎ、かき混ぜて飲む「茶の湯」の文化が花開き、高級な茶わんが求められました。
 お茶が一般の庶民に普及するようになったのは、江戸時代後期になってから。それまでの抹茶に対して、茶葉をせんじて飲む〝煎茶〟という新しい喫茶文化が誕生し、湯飲みと急須があれば、誰でも簡単にお茶が飲めるようになったのです。
 明治時代になると、庶民でも白米が手に入るようになり、陶磁器の茶わんに、ご飯を入れて食べるようになりました。
 煎茶は、お茶を友として詩文や絵画の世界に遊ぶ、中国の文人たちに対する、あこがれから生まれたといわれています。それだけに、煎茶の道具である急須や湯のみは姿形が端正で、小さな物が好まれます。
 最近は陶芸趣味が盛んで、自分で茶わんや湯飲みを作る人もいます。その時、身度尺(人間の体の大きさを基準にして、対象物を測ること)によって大きさを決めると、手の中にすっぽり入って、収まりが良いといいます。茶わんや湯飲みは毎日使うだけに、手にしただけで安らぎが生まれるような物でなければなりません。
 ご飯を盛る茶わんの直径は、男子の平均身長の7.5%で、12センチくらいの長さが最も手になじみやすいといわれています。また、湯飲みの直径は平均身長の5%、だいたい人さし指の長さ(直径約8センチ)だと、握り具合が良いとされています。蕎麦猪口の直径は、この長さに準じています。
 器選びのポイントは、①自分の体になじむ大きさ②好みに合う材質と色や柄③季節によって使い分ける、の3点です。
 新茶には緑色が映える湯のみ、新米にはシンプルな柄の茶わん・・・と、楽しみながら器を選ぶ。そんな心の豊かさが、日々の暮らしには必要ではないでしょうか。