「痛む」「こぼす」「せき込む」――症状が見えれば受診を
訪問歯科の利用が望ましいのは、介護を必要とする高齢者です。その際、患者本人が受診を訴えることは、ほとんどないため、家族や介護者の協力が欠かせません。訪問歯科について、先日に続き、日本訪問歯科の前田実男理事に聞きました。
本人は自覚症状を訴えまい
訪問歯科の一番難しいところは、介護を必要とする病気や認知症の患者が多い点だと前田理事は指摘しています。
「介護を要する高齢者の場合、自覚症状を訴えることが、あまりありません。周囲の家族や介助者が、患者の食事や日常生活の様子から読み取るしかないのです」
かみ合わせがよくない、かむと痛い、入れ歯が合わない、口臭がきつい、食べ物や飲み物をぼろぼろこぼす、うまく飲み込めなかったり、せき込んだりする、寝たきりである――など、当てはまることがないかどうか、チェックしてみるとよいでしょう。
もう一つ、訪問歯科の難しい点は、要介護者の場合、ほかの全身性疾患を発症している場合がほとんどだという点です。
「たとえば患者さんの体勢を変えただけで、せき込んでしまうこともあります。あるいは血が固まりにくい薬を服用しているような場合は、抜歯には特に注意しなくてはいけません。
このようなケースにおいては、あらかじめ、かかりつけ医と連携の上、治療計画を立てなくてはならないのです」
治療後の口腔ケアも大切
訪問歯科は、治療後、口の中の衛生状態を保つための口腔ケアも対象となります。
さらに、口や舌の動きをよくするなどの口腔リハビリ指導を受けることもできます。
口は、雑菌も栄養も、すべての異物を体内に受け入れる入り口です。ほとんどの異物は、口を通して侵入してきます。
「ご家族や知り合いの方が認知症になれたら、年に1回は歯科を受診し、口腔ケアを行ってください。そして、必要に応じて治療を受けるよう心掛けてほしいと思います」
訪問歯科は医療保険、介護保険ともに適用となります。医師やスタッフへの交通費や特別な謝礼は一切必要ありません。
治療費も意外なほど安く済みます。
相談は各地の保険所などへ
訪問歯科診療を行っている歯科医の数は、まだ少ないのが現状です。
前田理事によると、全国の歯科医6万7千人のうち、一度でも訪問歯科を行ったことがあるのは約1万5千人。そのうち定期的に訪問診療しているのは、5分の1から10分の1程度だといいます。
そのため、最初の申し込みから実際に治療を受けられるまで、少し日にちがかかってしまうことがあります。
前田理事は「地域にもよりますが、当協会では可能な限り、2、3日のうちには歯科医師が訪問できるように目指しています」と語っています。
訪問歯科に関する相談・申し込みは、各地の保健所、または訪問歯科を紹介してくれるところへ問い合わせを。日本訪問歯科協会もその一つです。同協会の受付窓口は電話0120 099 505
ホームページもあります
http://www.houmonshika.org/shiritai/index.html