公的なカウンセリング窓口の設置を
高塚雄介 明星大学教授に聞く
ニート、ひきこもり、早期退職の増加など、働くことのできない、あるいは働くことを避けようとする若者が近年、よく話題に上る。彼らは、がむしゃらに働き続けた一昔前の若者と違い、働くことにためらいや不安、抵抗感を覚えるようだ。若者たちの心理的背景に、どんな変化が生じたのか。その要因は何なのか――。高塚雄介・明星大学人文学部教授に、解決への方途も含めて語ってもらった。
プライドと不安が同居、一歩を踏み出せず
――働くことのできない若者が近年、各種メディアでよく取り上げられます。
社会にうまく適応することのできない若者は、確かに増えています。私がこの論議の中で気になるのは、ニートとひきこもりが綯(な)い交(ま)ぜに考えられている点です。イギリスに始まったニートの基本的な概念は「16~19歳の教育機関に所属せず、雇用されておらず、職業訓練に参加していない若者」でした。ここには、働く意欲をもつ若者が多く含まれています。
バブル崩壊直後の日本では、就職できなかった若者がやむなくフリーターになりましたが、彼らはイギリスのニートと同類でした。そんな彼らに対しては、働く場を増やしていく行政上の施策が必要です。
一方で、ひきこもりの若者はそれとは違い、働くこと自体に不安を抱えています。人間関係が苦手で、できる限り避けようとする傾向がある。何かしらの職業訓練を受けたとしても、おそらく働くようにはならない。
行政や社会が若者の雇用対策を立てるにしても、ニートとひきこもりを明確に区別して考えなければなりません。
――ひきこもる若者の心理的背景・要因等について、東京都は昨年度、実態調査を実施。高塚先生は、座長を務められました。その報告から、彼らの心理に、どんな特徴が見受けられましたか。
主に、3つの大きな特徴が挙げられます。第1に、ひきこもりの若者には、自分へのこだわりがとても強い。「これがやりたい」「あれができるはず」との意識が強く、それは自身のプライドにもなっています。自己評価に大切な柱になっている。
他方、それを人前にさらけ出し、貫くだけの自信はない。これが、第2の特徴です。周囲からの批判に耐える強さは持ち合わせておらず、「うまくいかなければ困る」という不安をいつも抱いています。だから、第一歩を踏み出す勇気が出ない。
3つ目として、他人との対立、意見の衝突を避けようとする傾向があります。この傾向は、今の日本の一般的な若者にも当てはまります。それらの要素が絡み合って、身動きがとれなくなってしまったわけです。
――そうした心理に至った要因は何なのでしょうか。
学校教育の影響は大きい、と考えられます。近年、学校現場では、自己決定や自己責任を重視し、子どもたちに「自立」の精神を育むよう教えてきました。この部分は、子どもたちの心に、しっかり根付いた。自分へのこだわりがつくられたのです。
それと同時に、周りの人との対立を避ける、日本的な「和」を尊(たっと)ぶ気持ちも、学校教育によって十分に養われました。他人の視線にも敏感になったはず。
しかし、この2つの行動規範は当然、自家撞着(どうちゃく)に陥りやすい。自己を大切にしつつ、他人とぶつからないようにするのですから。真面目な子ほど、大人になるにつれ、その矛盾に耐えられなくなってしまうのです。
つづく・・・