言いたいことはあっても、それをうまく相手に伝えられない。苦手な人を前にすると、なおさら言葉に詰まってしまう。そんな悩みを解決する手段として、近ごろ注目されるのが、アサーション(さわやかな自己表現)である。アサーションとは、どんな概念なのか。その具体的な実践法とは?――この分野に詳しい園田雅代・創価大学教育部教授の語ってもらった。

自分の意見を分かりやすく率直に伝える

相手の気持ちや状況にも配慮
 ――アサーションは「さわやかな自己表現」「適切な自己表現」と訳されますが、これだけでは、どうも分かりにくい。簡単に説明してもらえますか。
 自分の気持ち、意見、あるいは相手への希望を述べたい時、なるべく分かりやすく、その場に適した表現で率直に伝える方法が、アサーションスキルです。
 例えば、夫は自宅で休みたいが、妻は出かけたいという時や、私は海に遊びに行きたいけれど、友人は山がいいという場合など、人間関係には意見が異なる場面が少なくありません。
 コミュニケーションには当然、相手が伴います。相手の気分をことさらに害したり、誤解が生じることを避けるためには、自分の意見や考えを相手にわかってもらえるように、うまく正確に伝えたいものです。
 具体的には、おいおい、例に即して話しましょう。
 自分を大切にするだけでなく、相手も尊重する――これがアサーションの基本です。自己表現がさわやかならば、さわやかな人間関係を築くことができるでしょう。
――1960年代、公民権運動や人権獲得闘争が盛んだった米国で、アサーションは大きく広がったとか。
 差別されてきた人たちは当時、人権の大切さを説明されても、理解することがむずかしかったのです。そもそも人権を実感できない状況で、いくら「人間の尊厳が守られるべき」なんて言われても、ピンとこないし、力にならない。またはその人たちの運動が過激な暴力などと化し、結局は取り締まりや弾圧の対象にされてしまったり、と。
 そんな状況を改善するために、対人コミュニケーションを切り口として人権のことを説明したわけです。対話に際し、自分と相手を共に大切に考えること、そして、それをうまく伝える具体的な練習方法として、アサーションは生み出されました。
 ――アサーションの力を高めるには、どうすれば?
トレーニングをします。日々の言動をアサーションに照らして振り返るとともに、状況や場に見合った、自分らしい表現をあれこれ書きながらつくったりもします。また、ロールプレイ(役割演技)の練習もよく行います。
 日常の中でも、鏡の前とか、駅のホームで電車を待つ時など、一人でちょっとした練習もできるでしょう。
 ――例えば、自分が仕事等で疲れ切っている時に、友人が電話で悩みを相談してきた場合、相手を傷つけず、うまく断る方法はありますか。
 こう答えてみては、どうでしょうか。「相談に乗りたいけれど、今の自分は疲れすぎていて応じられない。私も相談に乗る以上、あなたの話をしっかり聞きたい。だから、後日にしてもらえると、ありがたいんだけど」と。
 この場合、後日の方が互いにとって、メリットは大きいわけですから、そのことをわかりやすく伝えるようにしたいものです。

つづく・・・