換気扇下では不十分、屋外で
受動喫煙によって子どもが受ける健康被害について、呼吸器だけでなく、耳や歯の病気、育成障害、メタボリック症候群など幅広く影響していることを紹介しました。さらに恐ろしいことがあります。脳の障害やがん、うつの発病との関係です。前回に引き続き、静岡市保健福祉子ども局保健衛生部参与の加治正行さんに聞きました。
酸欠に弱いのが脳細胞
子どもたちの受動喫煙による影響の中で最も深刻なのは、たばこの煙が脳の細胞を傷つけるということです。
煙に含まれる有害成分の約8割を占めるのが、一酸化炭素です。一酸化炭素は、血液を一時的に酸欠状態にします。
「酸欠に最も弱いのが、実は脳細胞です。海外では、妊娠中の喫煙で子どもの知能指数が低下するというデータがあります。
それほど、その危険性が指摘されています」
近年、注目されている注意欠陥・多動性障害(ADHD)についても、遺伝的な要素と共に、妊娠中の喫煙との関連性が指摘されるようになってきました。
受動喫煙や妊娠中の喫煙とさまざまな障害を故意に結び付けるのは、よくありません。しかし、たばこの煙が子どもの脳の発達に悪い影響を及ぼす危険性があるとすれば、深刻に受け止めるべきでしょう。
ショッキングなデータ
当然、がんの発症率を高めることは、すでに広く知られています。
「子ども時代の受動喫煙と成人後の肺がん発症率を比較した調査では、子ども時代に受動喫煙がなかった人たちに比べ、毎日受動喫煙していた人で約2倍、毎日長時間の受動喫煙で約3.5倍にも達しています。
また厚生労働省の調査では、乳がんにかかる危険性は、喫煙も受動喫煙もない女性に比べ、受動喫煙のある女性で2.5倍以上、喫煙する女性では4倍弱にも跳ね上がるという結果が出ています」
さらにショッキングなデータがあると、加治さんは警告しています。
「米国の青年を対象にした調査です。喫煙は精神的不安定をもたらし、うつ病の発症率を、吸う人は吸わない人の約4倍に、また自殺率を、1日20本以上吸う人は全く吸わない人の約3倍にも高めるという、恐ろしい結果が報告されています」
3、4分間は有害物質が
受動喫煙を防ぐため、各家庭でも、さまざまな取り組みを行っていることと思います。
代表的なものは、キッチンの換気扇の下で、排気口に向かって煙を吐くというものです。
しかしこれは、思ったほど効果がないといいます。
「たばこの煙は、7メートル先まで届きます。実際、計測器で測ってみると、回っている換気扇に煙を吸い込ませたとしても、目に見えない煙が子どものいる居室の方で計測されています」
一方、ベランダや玄関の外など屋外で吸っている人も多いようです。
「喫煙者の呼気(吐き出す息)からは、たばこの火を消してから3、4分間は、多量の有害成分が出続けています」
せっかく外で吸う配慮をしているわけですから、効果を十分もたせるためには、たばこを消してから5分前後、外で何度も大きく息を吐いてから入室したいものです。
「受動喫煙は虐待」とも
たばこが切れてとイライラする、という人は、ニコチン依存症の疑いがあります。
「血中に入ったニコチンは速やかに分解されて30分程度で半減します。そのため、すぐにまた吸いたくなってしまうのです。
ニコチンが切れるとイライラし、ニコチン濃度が上がればホッとするといった具合に、気分が左右されます。こうなると、喫煙はストレス解消どころか、ストレスの原因になっているのです」
最近、スモーキングハラスメントという言葉も聞かれます。
「受動喫煙は、がんの種を子どもの肺に植え付けるようなものです。子どもにもたばこの煙を吸わせることは、無意識のうちに子どもを虐待していることになるのではないでしょうか」
幸い、今では薬を使って楽に禁煙ができる治療法があり、しかも保険で治療が受けられます。(保険適用のための条件あり)。
たばこをやめられない人は、自身はもちろんのこと、子どもをはじめ大切な家族や周囲の人たちのため、禁煙治療を始めてみませんか。