岩手大学名誉教授 大沢 博

 ある母親がかつて、「統合失調症」の息子の経過を手紙につづってくれた。今回は、それを紹介したい。

 「息子は26歳です。平成14年(2002)年、電話で話した時は、息子が命をたつかもしれず、私たちもどうすればいいか分かりませんでした。(中略)23歳の時、病院から処方された薬を飲んで眠れなくなり、ご飯も食べられなくなり、やがて歩くのも難しい状態に。顔の形相(ぎょうそう)も変わってしまい、昔の面影はなくなってしまいました。ちなみに、薬はデパス、ドグマチール、パキシル・・・などでした」

 2003年2月、幻聴(げんちょう)がひどく、人に危害を加えかねなかったため、母親は息子を再び神経科に連れていった。薬を代えても病状は改善せず、動くことも、眠ることもままならなかったことから入院。その後、なんとか退院したものの、窓から飛び降りそうになったこともあったという。

 そんな時、彼女は友人の薦めてくれた雑誌を読み、栄養・食事療法を知る。さらに、栄養療法の第一人者であるホッファー博士の本を一読したところ、息子と同じ症例が紹介されていて驚いた。

 彼女の記憶をたどってみると、両親が近くに住んでいることから、幼いころの息子は祖父母宅に遊びに行っては、チョコレートやジュース、アイスクリーム、菓子パンなど、甘いものばかりを食べていた。中学時代は、スポーツに励んだものの、卒業を迎えるころ、体重が2カ月で40キロも増えたとか。

 彼女は早速、アイアシンアミド(ビタミンB3のひとつ)を入手し、みそ汁などに混ぜてみた。すると、息子の表情は、少しずつ変化していった。1週間続けてみると、息子の顔は、少し明るさを取り戻した。

 「この時に、糖分を減らし、栄養・食事療法をしていれば、もっと早くよくなったのかも・・・。息子は甘いものがやめられず、話もできない状態でしたから、どうしてもできなかったのです。けれど、最近は、食べてはいけないものを食べた時は、分かるようです。次は口にしませんから」

 精神医学が、栄養療法をとり入れるようにならないものだろうか――そう思えてならない。