友人・知人の数だけ、付き合いがあるといつてよい。それゆえ、人間関係を深めることは難しい、と感じる人もいるだろう。対人関係に一歩深く踏み込み、人生をより豊かにするには、何を心掛け、いかに行動すればよいのか――。心理カウンセラーの高平嘉明氏に話しを聞いた。
思い切って、人の輪の中へ
 ――近年、競争社会の進展や地域社会の崩壊などに伴い、人間関係の希薄化がよく指摘されます。
 職場であれ、地域であれ、家庭であれ、一昔前に比べ、社会環境は確かに変化しました。家庭では、少子化によって、子どもが多くのきょうだいに揉(も)まれながら育つことも少なくなりました。テレビや新聞では時々、親子関係の軋轢(あつれき)から生じた事件が報じられます。
 ただ、家庭の内外を問わず、対人関係の悩みは、今も昔も変わりません。
 人間関係に悩んで、相談(カウンセリング)に来る方は昔から絶えません。孤独でさびしいという人もいれば、人と交わるのが嫌いで、一人になりたい方もいる。その多くは、生真面目で、物事に敏感です。人に依存したり、甘えることが苦手な方も多い。
 実は、悩むことは、問題解決の出発点です。彼らにとっては、話せる相手を探すことが何より大切なのです。
 ――人間関係を深めよう、との姿勢に、古今の差はないのですね。
 そう思います。もちろん、だれに対してもバカ正直に接することはできませんから、多くの人は〝仮面〟をかぶり、生活しています。
 けれど、仮面を脱げば、みんな同じ、悩みを抱えた人間です。対人関係に苦しむ人には、そのことを最初に分かってほしい。
 ――希薄化のイメージが強いためか、人によっては、人間関係を新しく築いたり、それを深めたりすることが難しく感じてしまいがちです。
 「世の中に、変な人が増えている」と考えれば、他人と関わることが、どうしても怖くなってしまいます。日常の付き合いであれば、不安がる必要はありません。思い切って、人の輪の中に飛び込んでほしい。
 「おはよう」と、あいさつすることから始めましょう。
 絵を描くことが好きな方であれば、その種の学校やサークルに通ってみては?カラオケが好きならば、歌仲間を探してみてください。日々の暮らしの中でも、ちっとした工夫で人間関係を深めることができるのです。
 自分を売り込むことで、自分の長所が生かされる――それが、私たちの暮らす社会であると思います。
 近ごろは、さまざまなメディアが発達し多くの人がそれらに生活時間を取られがちですが、人間が人間らしく生活するためには、やはり生身の人間である他者と関わり合わねばなりません。今一度、そこに立ち返ることができれば、豊かな人間関係、潤(うるお)いのある社会を保つことができるでしょう。

つづく・・・