育児・保育コンサルタント 原坂 一郎

 子育ては、子どもの姿をありのまま受け止めることが大切だとよく言われます。子どものすべてを丸ごと受け止めるというのは、なかなか難しいものです。でも私は、それさえできれば、子育ては必ずうまくいくと思っています。
 子どもの姿を丸ごと受け止めた人にしかできないことがあります。それは「あきらめる」ということです。「あきらめる」ことができたとき、子育てはうまくいき始めます。
「あきらめる」といっても、親が犠牲になろう、というのではありません。
 例えば、赤ちゃんのお母さんは、本当は赤ちゃんとおしゃべりができたらどんなにいいだろうと思っています。でも、赤ちゃんが話すことはあきらめています。赤ちゃんのことを丸ごと受け止めているからです。だからこそ、お母さんは赤ちゃんにやさしくできるのです。
 2歳くらいの子どもをお持ちのお母さんは、5分で行けるスーパーも、子どもと一緒のときは、20分くらいかけて行っています。ゆっくりしか歩けない子どものことを認め、5分で着くことは、すっぱりとあきらめているわけです。
 子どもと一緒でも、5分で行くことをあきらめられないお母さんは、子どもに「早く」を連発します。たとえ道端にタンポポが咲いていても、一緒に見ることなんて許されません。「あきらめない親」を持っている子どもには、小さな災難が毎日やってきます。
 「あきらめる」ことを覚えると、その代わりに「楽しむ」ことができるようになります。
 たとえば、「チューリップが大好き!」という人も、秋にはチューリップをあきらめています。すると、秋の花を楽しむ余裕が出てきます。秋でもチューリップを見ることにこだわっている人は、秋を楽しむことも、コスモスの美しさに気付くことも、できないかもしれません。
 さっきの例でも、スーパーまで5分で行くことをあきらめているお母さんなら、子どもと一緒にそのタンポポで遊ぶ余裕も生まれます。少しの時間を失いますが、たくさんの笑顔が得られます。
 子どものありのままを認め、「あきらめること」ができると、子育ての楽しさや喜びがたくさん見えてきます。子どもも親も、笑顔の数がうんと増えるように思います。