秋の気配が一段と深まり、〝読書〟に最適な季節がやってきました。子どもと一緒に、読書にいそしんでみてはいかがでしょうか。今回は、「ねぇ この本読んで! 親子の読書」ワイド版をお届けします(選評=加藤悦男〈日本児童文芸家協会会員〉、平山冨佐子〈児童図書評論家〉、細野眞由美〈コピーライター〉。
10月27日から11月9日までの、「文化の日」を挟んだ2週間は、「読書週間」でした。戦後間もない1947年(昭和22年)、「読書の力によって、平和な文化国家をつくろう」との趣旨から始まりました。
〝書(本)を読む〟ということは、その作者や主人公という〝人〟と出会い、喜びや苦しみを共有することです。そうした経験の積み重ねが、本を読んだ人の幅を広げることになるのでしょう。あたかも、多くの人との出会いが、人格を形作るように・・・・・。
アメリカの思想家・エマソンは、次のようにつづっています。「良書を読むのは良い人との交わりに似ている」(入江勇起男訳『エマソン選集』日本教文社)。
「活字離れ」といわれて久しく、情報の伝達手段の多様化によって、その傾向はますます強まっています。子どもたちは読書よりも、テレビゲームなどのバーチャル(仮想)空間に夢中です。
こうした時代だからこそ、読書の魅力・活字の力を、大人たちがしっかりと伝えていくことが大切ではないでしょうか。子どものときから、「読書週間」ならぬ、読書の〝習慣〟を身につけていきたいものです。
小学生上級~
海辺の博覧会
芦原 すなお 著
直木賞作家である著者が、小学4年生から6年生までの思い出を背景に描いた連作短編集。舞台は昭和30年代の四国・香川県の海辺の町です。
皆の遊び場である海辺で、ある日突然工事が始まります。市制5周年記念の博覧会でした。子どもの入場料は20円。5円足せば、うどんが食べられるほどの金額です。
お金がないので、皆は周囲を囲んだ鉄条網のすき間から、中に入り込みます。〝おしりから入れば、見つかったときに出ようとしたと言い訳ができる〟と――。こうした心和む話が、豊かな方言の魅力を生かして7編、フィクションを交えてつづられています。
伸びやかな子どもたちと、それを包み込む木訥(ぼくとつ)な大人たちとの交流の、人間模様のつづれ織り。懐かしい昭和30年代という時代を映した光景が心に広がる、小学生上級から大人までが楽しめる1冊です。
(ポプラ社 208ページ 1470円)
つづく・・・