温暖化を防止し、地球の資源を有効利用していくために、子どもたちへの環境教育の必要性が叫ばれています。今回は、幼児期からの環境教育について、日本野外生活推進協会の高見豊会長に聞きました。
スウェーデン 若者の高い環境意識
――高見会長は、スウェーデンの野外教育プログラム「森のムッレ教室」を日本に導入し、幼児のための環境教育を推進しています。この「森のムッレ教室」について教えてください。
森のムッレ教室は、スウェーデンから始まった4、5、6歳児を対象にした野外教育プログラムです。ルーペで詳しく観察したりしながら、自然を五感で体験し、生物の共生や自然の循環を知ることを目的にしています。
このプログラムの特徴は、大人がふんする「ムッレ」という森の妖精が登場することです。この妖精プログラムの最後に登場し、自然の仕組みを教えます。幼児期の子どもにとっては、まだ想像の世界と現実の世界が入り交じっていますから、妖精の言葉は、大人の言葉以上に大きな影響を与えます。
妖精は「近くに鳥の巣があるから、森のなかではあまり大きな声を出さないで」「空き缶やビニールなどのごみは捨てないで」などと自然への気遣いを語りかけるのです。
――妖精の登場は子どもたちもうれしいでしょうね。
そうです。スウェーデンでは1956年から行われており、これまでに200万人以上の子どもたちがこの教育を受け、高く評価されています。
その教育の成果を象徴する一つのエピソードがあります。
現在のスウェーデンでは、環境にやさしい食料品への需要が急増しているのですが、日本とは状況が異なっています。日本の場合だと、買い手は主婦が多いのですが、スウェーデンの場合は、大多数が若い世代の人たちなのです。幼児期からの環境教育を受けるなかで、自然を守る大切さを若者がよく分かっている証拠です。
人間も循環のなかに
――森のムッレ教室は日本でも実践する保育園が増えているそうですね。
はい。子どもが遊んだり、学んだりする場所として、自然より適した場所はないでしょう。幼いころに自然と深い接触をもち、体験した人こそが、大人になってからも環境について自分の意見をもてるようになるのだと思います。
大人になってから、環境を大事にしよう。ごみを少なくしようといくら言われたとしても、日ごろの習慣を変えることはなかなか難しいでしょう。
幼児期から、自然で遊び、学ぶなかで、自然を好きになり、自然を守る大切さを実感することが大事だと思います。
――どのようにして教えていけばよいのでしょうか。
自然のあらゆるものに価値があり、無駄なものはないと教えることです。
太陽があるおかげで、植物は光合成をして酸素や栄養分を作り出すことができます。また、その植物を餌にして、多くの動物が生きています。さらにその動物を食べる動物がいて、やがて死んでいく。死んだ動物や植物を細かく分解する菌類がいて、植物の栄養に変えていく・・・。
これは食物連鎖、の循環といわれる関係ですが、空気の循環・水の循環・植物の光合成などの自然の仕組みを、分かりやすく自然のなかで語りかけるのです。そして私たち人間もその循環のなかにいることを伝えます。
問いかけて興味を引き出す
――具体的には。
たとえば、森のなかにキノコを見つけたとします。キノコの名前を教えてあげることも大切ですが、キノコの自然界での役割を教えてあげてください。倒れた森の木を分解して、植物が大きくなるのに必要な土の栄養を作るという役割を教えてあげるのです。
自然のなかのあらゆるものがつながっていて、すべて役割をもって生きていることが、幼児であっても次第に分かってきます。アリでもすべて役割をもっていることを知ります。すると、アリを踏みつけて遊ぶような子どもは減ります。
また、分解されず、植物の栄養にならない、空き缶やビニールごみがいかに自然にとって有害であるかも理解でき、ゴミを減らす意識も根付くのです。
自然を大切にするということは、地球上の生命を大切にするのと同じことです。日常生活の身近な自然を大切にすることから、もっと大きな範囲の生命を大切にする考えを身につけていけると思います。
――親のかかわり方で大切な点は何でしょうか。
日常生活のなかで、さまざまな動物や植物を発見することがあると思います。子どもは興味をもって「これは何?」と聞いてくると思いますが、その疑問にじっくりと付き合ってほしいと思います。
親だって、植物の名前や、動物の名前、また自然界における役割などはなかなか答えられないかもしれません。でも、分からなくてもいいのです。子どもと一緒になって考えてみる。そうした姿勢を子どもに見せることが大切です。
そして、「この虫はいつも何を食べているのだろうね」などと問いかけもしてあげてください。問いかけで、子どもはさらに好奇心を燃やしていくでしょう。そのように子どもの興味を引き出していくことも心がけていきたいですね。