希望への執着が「やる気」を削ぐ
――すると、私たち自らの自由意志で体を動かしているように感じていましたが、実は脳によって動かされているのでしょうか。木暮 御書には、「心の師とはなるとも心を師とすべからず」(892ページ)と述べられているように、そうした一面もあると考えられます。自由意志といっても、脳が何を根拠に意識的に選択しているかが大切です。ゆえに、「言葉」「経験」「学習」によって、脳を〝鍛え〟〝磨く〟ことが必要になってくるのではないでしょうか。
――ふだんから脳を鍛えておくことが大切なのですね。それでは、「やる気」のある脳とは、どのようなものなのでしょうか。
木暮 人間の大脳皮質の前頭葉は、「さあ、やるぞ」「新しいことに挑戦するぞ」「善悪の判断をする」といった意志力が発現する場でないかと考えられています。その意志力の元としてドーパミンなどの神経伝達物質があります。人間は脳内で自らを興奮させたり、覚醒させたりする物質をつくって、それを使っているのです。
このドーパミンは、「A10神経」を通じて前頭葉に到達するのですが、途中で快感に関係する部分を通過するのです。ここで、本能的欲望に執着し過ぎると、途中でドーパミンが使われて枯渇してしまい。前頭葉における人間性の発露である注意力が弱くなってしまうのではないかと考えられています。
――つまり、本能的欲望に執着し過ぎると、人間的な「やる気」が失われていくのですね。
木暮 「少欲知足」とは実に的を射た言葉だと思います。本能的欲望は人間が生きていくために欠かせないものであることは間違いありませんが、それをあまりに追求することは「やる気」を失っていくことにつながってしまいます。ですから、ドーパミンを、「人々や社会のために行動すること」によって得られる歓喜のために使うべきなのです。学会の多くの同志が人々を励まし、苦しみから救う喜びに満ちあふれ、「歓喜のなかの大歓喜なり」を証明している姿に学ぶべきではないでしょうか。
おわり