「もう私にしといたらどうですか?」




君にそう言われた時、

「無理だよ、そんなこと言わせるくらい気を使わせてごめん笑」

って返した私。

そんな私に、

「…ですよね、なんか逆にすみません…笑」

そう返した君。


そんな君が悲しそうな顔をした事に私は少しも気づかなかった…


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「はぁぁぁ…、今日もダメだった…」

「遅くなってすみません、由依さん」

「…おー、夏鈴…おつかれー」

「その様子じゃ今日も気持ち伝えれなかったみたいですね笑」

「…今日は近づけすらしなかった…」

「うわ、今日はいつもに増してヘタレですね」

「…うるさい」

「まぁいつも理佐さんの周りには人がたくさんいますもんね」

「今日さー、体育あったんだけどさ、なんとバレーだったの!ただでさえカッコイイのにバシバシアタック決めちゃってさ!もう、そりゃ大人気!私なんかが近づける隙もないくらいに!」

「あー、確か理佐さんバレー部ですもんね、それでクラスの子が昼休み動画見て騒いでたんだ」

「え!動画回ってんの!?」

「えー、多分?なんか今日はいつもの倍カッコイイって騒いでましたよ」

「うわー、わかりすぎる。マジでかっこよかったもんアレ、てか動画欲しすぎるから後で誰かに貰お」

「相変わらず理佐さんのフォルダは増やしていってるんですか?」

「もちろん!昨日みいに貰った写真見てよこれ!この寝顔かわいすぎない?あーー同クラだったらずっと見てるのに」

「すごい、ほんとにこんな顔が整ってるんだ、同じ人間じゃないみた…「そうなの!同じ人間とは思えないくらい整ってんのよ!」

「もー…、そんな好きなら早く気持ち伝えちゃったらいいじゃないですか」

「それができないから困ってんだよー、だってまともにちゃんとお話もしたこともないやつに急に好きとか言われても困らせるだけじゃん?」

「じゃあもっとアピールしたらいいじゃないですか」

「だからそれができないんだってー、目の前にいくとかよりもう姿が見えただけでドキドキしちゃうんだもん」

「…由依さんのヘタレ、意気地無し、このままじゃ誰かに取られちゃいますよ?」

「…えぇ…それは嫌だ…そんなこと言わないでよ…」

「明日はちゃんとお話してくるんですよ?」

「…うん…頑張るけど…」

「けど?」

「無理だったらまた慰めて?」

「もー、しょうがないから話くらいは聞いてあげます」

「ありがとーー夏鈴ー!大好きだよー!」

「もう、私にそれ伝えれるなら理佐さんにも言ったらいいのに」

「夏鈴だから言えるのー」

「…なにそれ、全然嬉しくない」(ボソッ)

「ん?今なんて言ったの?」

「なんもないですー!ほら、早く帰って明日話しかける内容考えなきゃですよ!」

「わ!ほんとだ!なんて話そー?ねぇ、なんて話したら笑ってくれるかな?」

「…知らないですよ!それくらい自分で考えてください!」

「急に突き放すじゃん、ねぇねぇ夏鈴ー!」


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「夏鈴ー!ねぇ!ごめん、夏鈴いる?」

「夏鈴ちゃん〜、先輩が呼んでんで〜」

「んん、ねむ…ありがと…」

「お!夏鈴!おはよっ!」

「テンションたか…てかなんで由依さんがここに?」

「聞いてよ夏鈴!理佐と話せた!」

「…おぉ、絶対無理だと思ってました、てゆうか後輩の教室前でそんな大きな声で話して大丈夫ですか」

「あ、話聞いてほしすぎてまだ夏鈴の教室だったの忘れてた」

「…はぁ…、全くこの人は…で、何お話したんですか?」

「私が下駄箱に着いた時にちょうど委員会で外に出る理佐と鉢合わせたからおはよう!って言ったらめっちゃ笑顔でおはよう!って返してくれたの!」

「…え…っと…、もしかしてこれだけとか言わないですよね?」

「え!だって挨拶できたんだよ?朝から理佐を見れてまさかあんな笑顔で挨拶返してくれるなんて今日はいい日だ!!」

「…その後何か話さなかったんですか?」

「えー、だって理佐は委員会の仕事あるし」

「いや、一言二言話すくらいはできるでしょ」

「えー、でもちゃんと何話そうか考えてたんだけどあの笑顔見れたら全部吹っ飛んだ笑」

「…前から思ってたけど由依さんてもしかしてばかなんですか?」

「えー、今日当たり強めじゃない?寝てたのに起こしてごめんって、でも夏鈴に1番に聞いて欲しかったんだもん」

「…もうほんとそういうとこですよ、」

「そういうとこって?」

「…じゃ、私まだ眠いから寝るんで」

「うん!夏鈴、いつも聞いてくれてありがとね!じゃあまた放課後!」

「はい、終わり次第いつもの場所行きます」



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放課後に私達が待ち合わせるいつもの場所

学校の駐輪場の近くにある大きな木の下

そこが私達の集合場所

特に時間は決めてなくてHRが終わったら集合

いつのまにか夏鈴の委員会のない日の月水金はいつも会うようになってた


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「ねぇそういえば夏鈴は?」

「え?」

「夏鈴は好きな人とかいないの?」

「なんですか急に笑」

「いや、いつも私の話ばっかり聞いてもらってるからたまには夏鈴の話聞くよ?」

「別に私の話はいいですよ…」

「あ!その反応は好きな人いるでしょ!」

「嫌です、いても由依さんには教えませーん」

「えー!なんで!!!」

「だって由依さんに話しても良いアドバイス返ってきそうにないですもん笑」

「うわ、ひどーい!私だって恋愛相談くらいのれますー!」

「いつも私がアドバイスしてる方なのに?」

「…それは…そうだけど…でも!私も夏鈴の役に立ちたいもん!」

「その気持ちだけで大丈夫です笑」

「あー!そうやってはぐらかそうとしてるんでしょ!もう今日は夏鈴の好きな人聞くまで帰らないんだからね!」

「あーあ、それは大変だ、一生帰れないですね〜笑」

「もー、真剣に言ってるからね!じゃあ好きな人ってどんな人なの?同じクラスの子?」

「だから答えないですって…」

「あ!わかった!あの夏鈴といつも一緒にいる子だ!あの関西弁でいつもニコニコしてる子でしょ!」

「…ん?保乃のことですか?」

「あの子保乃ちゃんて言うんだ!かわいいよねあの子!」

「確かに保乃はかわいいけどもう彼女いますよ」

「え!じゃあ夏鈴いつのまにか失恋してたの?ごめん、全然気づいてあげられなくて…」

「全然違いますけど」

「へ?」

「保乃はただの友達ですよ」

「え、じゃあ誰なの?」

「もー、由依さんしつこいからヒントだけ教えてあげます、私の好きな人はかわいくていつも全力ででもばかでヘタレでいつも私なんかを頼ってくれる人です」

「へぇ〜!夏鈴にそんなに思ってもらえるなんてその子はきっと幸せ者だね〜」

「…あー後、超鈍感です」

「あー、その子夏鈴の気持ちにまだ気づいてないんだ?じゃあ夏鈴も私も片思いかぁ」

「まぁでも私の好きな人には好きな人がいるから叶わないんですけどね」

「ええっ!なにその展開!夏鈴てばその子の恋愛相談までのってあげてんの?絶対苦しいじゃん!流石に夏鈴良い子過ぎない?」

「…まぁ…そうですね…」

「よし!今日は思いっきり泣け!私が胸を貸してやる!」

「…いらないですね」

「え、なんで!そこはありがとうって泣きながら抱きついてくるところじゃん」

「だってまだフラれてないですし…」

「あ、確かに」

「後、私は良い子なんかじゃなくてその人の話を聞いて応援しながらも失敗を望んでるむしろ悪いやつなんです」

「そう?全然悪くないじゃん」

「だってその人の不幸を願ってるんですよ?」

「別にその失敗がその子にとっての不幸だとはわかんないじゃん、その後に夏鈴と付き合って幸せになれるかもしれないし」

「…それは…」

「みんなそんなもんだよ?そこら辺にいるカップルだって今は幸せそうだけどそれがどうなっていくかなんて誰にもわかんないし」

「…なんか由依さんがちゃんと歳上っぽい…」

「おいー!私のこと何歳だと思ってるの笑」

「ごめんなさい、後、ありがとうございます、自分の気持ち諦めようとしてたけどやっぱりもう少し諦めないで頑張ろうと思います」

「うん!お互い頑張ろ!また夏鈴の話いつでも聞くから話してよ」

「…気が向いたら…」

「そこは嘘でもはいって言っといてよ笑」

「由依さんは私の事よりまず自分のヘタレを克服してください」

「…ちぇ、私も頑張るもーん」


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それから夏鈴の委員会の活動が忙しくなって会えない日が続いた

その間に私は理佐と少しずつ話すようになった

朝の挨拶はもちろん、たまに廊下で会った時、体育の時には一緒にペアになったりもした

それでもやっぱりみんなから人気な理佐の周りにはいつも人がたくさんいて分け隔てなく接する理佐を見て私もこの中の1人でしかないことを嫌でも思い知らされた

前までは姿を見れるだけでよかったはずなのにいつから私はこんなに貪欲になってしまったのだろう

夏鈴に話したらなんて言うのかな

どうせ夏鈴のことだからばかって言うんだろうな

なんて考えながら歩いてたら目の前にポニーテールの背の高い子、その横に楽しそうに笑ってる夏鈴がいた

「あ…夏鈴だ…」

あ、もしかして夏鈴がこの前言ってた好きな人ってこの子の事なのかな

あんなに笑う夏鈴初めて見たかも

今度話せた時おめでとって揶揄ってやろ

そう思い夏鈴達とは別の道で帰ろうと曲がった瞬間…

「由依さん?」

「へ?…あ、ああ!おー、夏鈴じゃん…!」

「お久しぶりです、元気でしたか?」

「え、あー、うん!めっちゃ元気!あはは」

「…あれ、少し痩せました?」

「…え?あー、そうかなぁ?笑」

「…なんかありました?なんか元気ないです?」

「…だ、大丈夫!全然元気だよ!」

「…夏鈴?もしかしてよく話してる先輩?」

「ん?あーそやで、1つ上の由依さん」

「初めまして!夏鈴と同じクラスの山崎天です!夏鈴からよくお話聞いてます!」

「…へ…あー、えっと小林由依です…!」

「由依さん人見知りし過ぎですよ笑」

「あ、夏鈴、先輩と一緒に帰ったら?」

「…へ?、いや、そんな邪魔はしないよ…!」

「全然邪魔じゃないですよ!なぁ夏鈴?」

「はい、最近由依さんとお話できてなかったのでむしろ一緒に帰りたいです」

「…いや…それは流石にちょっと…」

「では、私は先に帰りますね!また明日ね夏鈴!」

止める間もなく天ちゃんは走って去っていった

「…そ、その…私のせいでごめん…」

「なにがですか?」

「…天ちゃん?と一緒に帰ってたのに…」

「あぁ、別に天とは明日も会いますし」

「…でも…」

「由依さん、私が会いに行けないうちになにかあったんですか?」

「…え…」

「たまに学校で見かけた時は理佐さんと結構仲良さそうに話してたからてっきり上手くいってると思ってましたけど」

「…うん、なんかふとしたきっかけで話すようにはなったんだけど…」

「けど?」

「やっぱり理佐の周りにはいつも人が溢れてて私もその中の1人でしかないって考えると悲しくなって…あ、でもわかってたんだよ?理佐は人気だし優しいしなんでも出来るし…」

「ようするに、理佐さんの周りにいる人達に嫉妬したと?」

「…恋人になれた訳でもないのに嫉妬するってのも変だよね、はぁ…いつから私こんなに貪欲になったんだろ…って、好きって難しいなぁ…」



「だったらもう私にしといたらどうですか?」



「…え?」

「だから、私と付き合えばいいじゃないですか、私は理佐さんよりも由依さんのことをたくさん知ってる自信あるし」

「いやいや、無理だよ、そんなこと言わせるくらい気を使わせてごめん笑」

「…ですよね…なんか逆にすみません…笑」


その後の帰り道は何故か少し気まずくていつもなら気にならないすこしの無言がやけに長く感じた

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だいぶ前に投稿したつもりができてなかったみたいです💦

また新しいのを書いてしまってた……、、