不思議な事だけど、約束があった前の夜。お互いが、
付き合っている今の関係を
「これ以上続けられないのでは…?」
と思った。
これは間違いない。
次の日のデートは、最初からかなり空気が重かった。
私は私でかなり思いつめていたし、彼は彼でそんな私の表情を読み取ったのだろう。
お互いほとんどしゃべらないで、気まずい雰囲気のまま電車に乗って、よく散歩する、大きな公園に着いた。
楽しそうに話すすれ違う人たちをぼんやりと見たけど、何を話したら良いか分からなかった。
彼も無言のまま、ずんずん進んでいった。
私の頭の中は、先日、彼がメールで送ってきた一言がずっとずっとぐるぐると渦を巻いてた。
前の夜、バイト先で、彼から借りる予定だったゲームソフトを、私が忘れた。
近頃は、どちらかが物を貸す時、バイト先では相手に直接渡さず、指定の場所に置いておくのが普通になっていた。
バイト仲間には、本当に一部の人しか私たちがつきあっている事が知られていなかった。
うすうす、何か感じていた人はきっといるだろうけど…
「わざわざ言いふらす必要もないよね」
最初はそういう理由だった。
でも、最近は、言わない事で―付き合っている事で逆に、バイト先での会話は、仕事以外ではほとんど無かった。
私はそれがすごく悲しかった。
ともかくも、先日メールで「ここに置いておくね」と言われたのにも関わらず、私はすっかりそれを忘れ、帰りかけた。
それを彼があわてて追いかけ、「これ」と渡した。
帰ってからメールで、お疲れ様、と
「忘れてごめん」
と送った。
そうしたら、
「頼むから、もうちょっとしっかりしてよ」
という
絵文字も、顔文字も、記号も、。すらないたった一言のメールが帰ってきた。
私はそのメールを見た瞬間、
「もう駄目だ」
と思った。
なんだか思い切り拒絶され、見放されたような気がした。
前に仕事の事で落ち込んだとき、フォローしてくれなかった彼は、
きっと今回こそ仕事も、言ったこともろくに覚えられない私に呆れて、愛想を尽かしてしまったんだ、と思ってしまったのだ。
もちろん、忘れた私が悪い。
でも、彼が直接渡してくれれば、絶対忘れることはなかったんじゃないか、とか、責任転換のような事ばかり頭に浮かんできた。
気の強い女の子は、ここで一言文句を言ってやろうと電話を掛け、真意を確かめるんだろうか。
メールでは、伝わらない事の方がたくさんある。
けれども、私にそんな度胸はなかった。
私は弱かった。
昔から、何でもない言葉にも、琴線に触れれば、脳天をぶち抜かれたような衝撃を受けてしまう。
悲しくて悲しくて、まず、明日のデートに行きたくない、と思った。
私は弱かった。