許されなかった恋 ~女子中学生と塾講師の悲しい恋・有賀理奈の物語~ -22ページ目
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第1回

ホーム下の線路の上には斉藤源一がいた。

「降りなくては・・・。」

そう思うも、脚が震えて動かない。


ふと遠藤浩市の事が頭をよぎる。

「死にたくない。」有賀が出した結論だった。


「理・・・」斉藤が名前を呼ぼうとした瞬間、

有賀は斉藤に背を向け、改札に続く階段へ向かった。

不思議と斉藤に対する罪悪感はなかった。


階段を昇り始めた時、ホームから大きな音が聞こえた。

それが電車のブレーキの音なのか、

人の叫び声なのかは分からない。

しかし有賀は立ち止まらなかった。


斉藤の事は既に頭の中から消えていた。

今は早くこの場から立ち去りたい、

それだけを考えていた。







有賀理奈が入塾を決めたのは中学2年の8月だった。

私立の中高一貫校に通っていたが、成績が芳しくなく、

親から無理矢理入らされたという面が強い。


ただ親と初めて塾を訪れた際の塾長の人柄の良さ、

教室のきれいさを気に入り、

塾通いがそこまで嫌というわけではなかった。


塾では岡田奈津という大学1年生の先生に教えてもらった。

岡田は一見ボーっとしてそうに見えるが、

授業は上手く、会話も面白かった。


特に、周りには聞こえない声でコッソリ話す岡田の恋愛話は、

恋愛未経験の有賀にとっては興味深いものだった。


有賀は元気の良い中学生だった。友達も多く、

時間のある時は学校帰りによくカラオケに行っていた。

見た目も可愛く、しばしばナンパもされた。


しかし根は真面目であり、そのような

誘いに乗ることはなかった。


女子中に通っており、男子との接点はなく、

好きな人もいなかった。ただ漠然とではあるが、

恋愛、セックスに対する興味はあった。


岡田も有賀の事を良く思っていた。明るく、元気も良く、

宿題はしっかりやってくる。申し分のない生徒だった。


有賀が

「今度授業帰りにスタバにでも行きませんか?」

と誘った際、即OKの返事をもらえたのも

それを証明している。


スタバでは岡田にバニラフラペチーノをおごってもらった。


最初は普通の会話をしていたが、

やはり有賀は恋愛について、

そしてセックスについて岡田から話を聞きたかった。


「先生は今まで何人と付き合ったの?」

3人…かな。」

有賀は意外だった。もっと少ないと思っていた。


「最初に付き合ったのっていつ頃なの?」


「中学2年生の夏だったかな。

その人とは高校に入ってからお別れしたんだけどね。

ちょうど今の有賀さんの年の時に付き合い始めたって感じかな。」


「…その時にキスもした?」


「うふっ、まぁ…人並みにね。」


岡田は笑いながら答えた。すかさず有賀は聞いた。


「セックスも…その時にした?」


さすがに岡田もびっくりした。

ただ自分の中学2年を思い返してみると、

確かにそういう事に興味を持っていた年頃だった。


「有賀さんのご想像にお任せします。」

と笑顔で答えた。


有賀は本当はもう少し踏み込んで聞きたかった。

しかし根は真面目であり、このような事を聞いている

自分自身を恥ずかしく思い、それ以上は聞けなかった。


2人の間に変な空気が流れたが、

岡田が中学の頃の話、主に受験勉強についての話をし始め、

その日はその会話で終わった。


そして入塾して1ヵ月後の9月、

小学校の頃の同級生である高田綾子が入塾してきた。




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