「 愛と死の殺人迷路 東京-新潟 350kmを死体が走った?! 」 (1998年)

 

(ゲスト)

筒井美也子…田中美奈子、 小原勇三…秋野太作、 河島千晶…あいだもも、  安西敬一…青島健介、  吉岡登…貴山侑哉、  筒井清子…児島美ゆき、 由香里…穴繁加奈子、   三郎…金子貴俊

 

 

オープニング。タクシー運転手さんが客を拾うときに注目するのは客の身なり、特に履物らしい。夜明さんが拾ったのは筋が悪そうなサンダル履きのお客さん。結局、その客はタクシー強盗。ナイフを夜明さんに突き付けるが、夜明さんは隙をみてボールペンで応戦し、身柄を確保。強盗さん、相手が悪かった。

 

次に拾った客はくたびれたコートを着たおじさん。タクシーに飛び乗るなり「前の車を追え!」とドラマのような展開。尾行を命じたその男は小原勇三、尾行されていたのは筒井美也子。

 

立て続けにダメな客に当たって売り上げが伸びず、係長にいやみを言われて嫌な気分で帰るが、あゆみちゃんが来ていることに気づくと、とたんにすごくいい笑顔になる夜明さん。あゆみちゃん、無事、大学に入学できたらしい。よかった。

 

そんな大人の階段を順調に上っているあゆみちゃん、友達と温泉旅行に行くらしい。夜明さんは、旅費の足しにして、と、お小遣いをあげ、理解ある父親風。そこへ元妻からの電話。あゆみちゃんが友達と旅行に行くことが心配で、その不満をガミガミ夜明さんにぶつけた模様。「子供信じてやるのが、親の務めってもんじゃないの。お前も、そろそろ子離れしなきゃ」とここでも理解ある父親(あくまでも、ここまでは)。このシーンの最後に、中学の頃のあゆみちゃんの写真が映るのは、子供から大人へ、という時の流れを感じさせて、いいなぁ。

 

蓉子さん!

まだ最初のオープニングコントの形式ではないけど、コント要員として登場。初乗り価格が安いタクシーと思って乗ったら通常価格だったことにクレーム。

だったら乗るんじゃなかったわよぉ~。まけてよ日出夫ちゃん(ハート)

 

 

相変わらず客の引きが悪い夜明さんだけど、蓉子さんの後に美也子を乗せて、越後湯沢までのロングをゲット。以前、尾行をした相手だと気づくが触れず。ラジオから流れる美空ひばりの佐渡情話に涙ぐむ美也子。

 

途中休憩でお互いの身の上話。美也子の生まれ故郷は佐渡、職業はホテルの経営コンサルタント。越後湯沢に行くのは担当しているホテルの視察のため。夜明さんも身の上話。元刑事、ということを聞き、それを利用しようと考えたのか分からないが、夜明さんを4日間貸切に。夜明さんは「あんなきれいな人と、越後路二人旅か、まいったな~。風呂だ、風呂、おんせ~ん」と浮かれ気味。

 

そんな夜、東京で、安西の死体が発見される。安西の部屋に安西、美也子と千晶の3人が写った写真。

 

翌朝、ホテルのラウンジで美也子と朝食をとる夜明さん。タクシー業界では、長距離の往復でお客さんが付くことを「往復ビンタ」と言う、なんてことを話していたら、あゆみちゃんが三郎君とともに登場。同じホテルに宿泊していたらしい。

 

で、夜明さんの部屋に勢い込んできたあゆみちゃん、いきなり夜明さんに往復ビンタをかます。「どうして俺があゆみに往復ビンタされなきゃいけないの!?」「私のあと、つけてきたんでしょ!」「違う、たまたま!」「それも、女の人と一緒に来るなんて、信じられない。あの女の人、誰なの?」「じゃ、俺も聞きたいよ。誰、あの、もやしみたいなの」「誰なの」「誰なの」「友達に決まってるじゃない」「お客さんに決まってるでしょ」。いや、こんなところまで東京からタクシーで来る人、めったにいないから、決まってないw

あゆみちゃんは、最初、由香里ちゃんとの2人旅を予定していたけど、三郎君が「新潟は俺の田舎」とくっついてきて3人旅になったらしい。あゆみちゃんの怒りは解けず、お父さんとは口もききたくない、と去る。夜明さんは夜明さんで、あんなに物分かりのいい父親だったのに、「失敗したなぁ、旅行なんて行かせんじゃなかった。あー、失敗した!」とダメおやじに転落。どっちもどっちだな。

 

けんか別れした夜明さんとあゆみちゃんだけど、友達と一緒に楽しんでいても、言いすぎたな、と反省しているのが、あゆみちゃんの表情の端々に表れるのが、いいなぁ。

 

憂い顔のあゆみちゃん

 

 

安西の部屋に残されていた写真に写っていた美也子を追って、東山も越後湯沢に来る。美也子への事情聴取で、美也子は安西と付き合っていたこと、でも、3日前に別れたことが判明。美也子は、安西が女性にだらしないいい加減な男と分かって自分から別れたと供述。アリバイも、夜明さんと一緒にいたことで完璧。写真に写っていたもう一人の女性である千晶は美也子の高校時代の同級生で親友。

 

今回の東山は捜査情報漏洩に対する警戒が強い。民間人を連呼して捜査情報を漏らさない。それなのにに、電話で国代がペラペラ漏洩。神「どうして相手を確かめないで話をするんだ、バカ!」、東「もしもし、国代君、君ねぇ、なに民間人にペラペラペラペラしゃべってんの。てんこ盛りのバカ!」。バカバカ言われる国代はかわいそうだったけど、てんこ盛りのバカは、かわいかった。東山の言葉のチョイスがいちいちかわいい。

 

安西は美也子を裏切って、千晶と婚約。動機があるので美也子が安西殺しの最有力容疑者となるが、夜明さんが証言するアリバイが壁に。

 

東山にあゆみちゃんとの仲直りの仲裁を頼む夜明さん。仲裁するのはいいけど、東京に戻るわけにもいかないし、と言う東山に、あゆみちゃんはこのホテルにいる、と夜明さんが言った時の東山の表情がw

 

鳩が豆鉄砲を食ったよう。でも、そりゃ、そうなる。

 

 

そこからの東山劇場。

あゆみちゃんへ夜明さんの言葉として、「『あゆみ~、ごめんね~、お父さんが言いすぎちゃったよぉ』だって。それからあの女の人、『あゆみ~、誤解だよ、お父さんはそんなじゃない』だって。自分で言やいいのにな」。

夜明さんへあゆみちゃんの言葉として、「『お父さん、私の方こそ、ごめんね。三郎君のことは誤解よ、もう、お父さんたら、心配症ね』」

東山の一人芝居、好き。

 

東山のおかげで仲直りして、越後湯沢を散歩する夜明さんとあゆみちゃん。昔、あゆみちゃんが3歳のころ、1度だけ家族旅行をした時の思い出話をする。あゆみちゃんが鳩が好きで、平安神宮の境内を走り回っていた、という話。ほほえましいなぁと和んでいても、油断できないのが二時間サスペンス。千晶の遺体を林道で発見。さらに、現場を去っていく怪しい男を目撃。

 

美也子に近しい人間が立て続けに2人も殺されたことで、美也子の容疑が濃くなるが、安西殺しの際のアリバイがやはり壁に。そのせいで美也子を疑いきれない東山に神谷さんが喝。「お前はすぐそうだ、すぐ夜明さんに洗脳される。俺の言うことと、夜明の言うことと、どっちを信用するんだ!」。ピッと電話を切る東山。喝は届かず。

 

東山、千晶の実家が経営している河島建設に聴き込みに。そこで、社長秘書から、千晶はもともと河島建設社員で高校時代から付き合っていた吉岡と結婚するのではないかと思っていたら、いきなり安西と婚約をして驚いた、という話を聞く。

 

動機という面では、千晶に捨てられた吉岡も容疑者に浮上。それでも美也子のことが気になる東山に、美也子は仕事に生きがいを感じており、男に裏切られたからといって、嫉妬で人殺しをするような人間とは思えない、と夜明さん。いつもの、あの人は心の優しい人だ、も付け加わるけど、この頃はまだ、盲目的ではなく、冷静に分析しようとしていたんだな。

 

美也子、吉岡にナイフで襲われる。あゆみちゃんと一緒に通りかかった夜明さんが吉岡を撃退。取り押さえ方が、いかにも喧嘩慣れしてる風で、いかにも渡瀬さん。

 

吉岡はもともと美也子と付き合っていたのに、美也子を捨てて千晶と付き合った。吉岡は、美也子が自分と千晶を恨み、千晶と吉岡を別れさせるために千晶に安西を紹介し、その上で、千晶と安西を殺したのではないか、と供述。

 

あゆみちゃんから夜明さんへの言葉が優しい。「お父さん、最初、お父さんのこと誤解して言い過ぎたけど、あのとき、一つだけ本心言ったのよ。お父さんが誰と恋をしようと勝手だって。お父さん、いつまでも一人でいること、ないよ。一人じゃ、寂しいもん。ただね、あの女の人が、何か事件に関わっているんだったら、お父さん、あんまり優しくしない方がいいと思う。もともとそれが原因で、ありもしない噂たてられて、刑事辞めることになったんじゃない。私が言いたいのはそれだけ。じゃあね」。

 

事件は急展開。現場に残されていた指紋から、冒頭、夜明さんのタクシーに乗り、美也子を尾行していた小原が浮上。取り調べると、安西と千晶を殺したと自供。しかし、殺害状況の詳しい話については黙秘する、という身代わり犯人臭をプンプン漂わせる。

 

美也子への疑いを捨てない神谷さん。夜明さんは、「しつこい奴だね」と切り捨てるが、神谷さんの言葉「美也子には、過去にまだ何か秘密があるんじゃないんですか。安西と千晶を殺さなければならない、隠された動機が」に触発されて、美也子の高校時代を調査。高校時代の担任から、美也子は父を亡くし、母一人子一人で佐渡から新潟に出てきた、美也子はおとなしい性格だったが、男に騙されてお金をむしり取られた母のことを恨んでいた様子だった、ということを聴き取る。

 

小原は探偵。小原の事務所から、安西が複数の女性と交際していることに関する証拠となる写真が出てくる。小原曰く、その写真で安西を恐喝しようとしたら、逆に、警察に突き出すと脅されたので殺した、千晶は安西とのもめ事を聞かれたので殺した、とのこと。でも、相変わらず、殺害状況に関する供述は曖昧。

 

突然の唐突なヒントタイム(地図が逆だった、ということから推理に入るのには驚いた)から、安西、千晶の殺害現場が逆だったら、と考察する夜明さん。美也子のアリバイが崩れた瞬間。さらに、美也子とともに佐渡の筒井家の墓を訪れ、亡くなったはずの父の名前がないことを確認。

 

祝杯は十中八、九、毒入り、という2サスの常識を弁えていなかった安西は、東京ではなく越後湯沢で美也子に毒殺され、千晶は、越後湯沢ではなく東京で、2サス最強武器の一つであるスパナで殴られた後、絞殺された。

夜明さんの説得(あなた中の良心を信じたい)に応じ、美也子の告白タイム。母のようになりたくない、男に捨てられたまま生きたくない、という気持ちが、安西と千晶を殺させた(それにしても、千晶がゲスい。千晶の「あなたが羨ましかった」の上滑り具合がひどい)。ここまでは分かるんだけど、心の奥底では母親が好きで好きでたまらないはずだ、と美也子に言う夜明さんの話はいまいちピンとこない。

 

小原は美也子の父親。30年前に殺人を犯したために美也子たちの前から姿を消したが、出所後は美也子を見守り、美也子を守るために身代わりで自供。

 

告白タイムのラスト、佐渡情話が流れる。故郷への思いを表現したのだろうけど、これは、合わないと思う。なんだか、カラオケのイメージ映像のように見えて仕方がなかった。

 

エンディング。また旅行、行きたいなぁ、と言ってお小遣いをねだるあゆみちゃん。あゆみはもう大人なんだから、と夜明さんがお断りすると、バイトして行こ、と挫けない。誰と行くの?とそこが気になる心配性な夜明さん、「私はもう、大人ですから」とはぐらかされながら、でも、「俺に故郷があるとしたら、やっぱりあゆみだな」と和んでエンド。

 

 

田中美奈子さんは、母親に対する憎しみと愛情が殺意の原動力になる、男運がない女性を演じなければならない、という縛りがあるのかな。第23話とよく似たような役柄。だけど、本作は、第23作と比べて、母親に対する愛情があまり描かれていないため、深みがいまいちだった。父親の話も断片的で、いろいろな要素がバラバラでまとまりがあまりなかった印象。あゆみちゃん、東山と夜明さんとのやり取りはとても面白かった。

 

エンディングテーマ。松田聖子「あなたのその胸に」