「  真夜中の殺人招待状!夢を捨てた女の危険な誘惑… 」 (1997年)

 

(ゲスト)

木村藍子…美保純、  木村哲夫…遠藤憲一、  徳山康彦…三上晴巳、  鈴木和枝…松井紀美江、  郷田宗助…石田太郎、 岡本真一…西岡徳馬

 

 

オープニング。スタッフ・キャスト紹介がなくなった。まだ蓉子さんは出てこないけど、本筋の内容と関連性のあるキーワードを題材とするコントが本作から開始。

本作では、お葬式について。お葬式帰りらしい一家を乗せた夜明さん。娘さんが「私がおばあちゃんを殺したのよ」と物騒な言葉で嘆くが、なんでも、娘さんが買って行った大福をのどに詰まらせて亡くなってしまったらしい。その父母もそれぞれ自分を責めて嘆く。そんなにおばあちゃんのことを思っている一家なのに、遺骨を忘れて降りる、という、痛恨のミス。遺骨をお届けしたところへ、かっぱらいがとおりかかり、遺骨が吹っ飛ばされ、取り落とす。かっぱらいは夜明さんがタクシーで追って取り押さえるが、繰り返される一家父の「幸せに縁のない母でした」が頭に残る。

 

夜明さんがクサクサした気分で帰宅すると、あゆみちゃんが朝食の支度をして待っており、神谷さんから届いた手紙を渡す。中には、木村藍子から夜明さんに宛てた兄の葬式の案内状が。警視庁に届いたので転送したとのこと。木村藍子という名前に心当たりがなかった夜明さんは神谷さんに電話をするけど、神谷さんは「ひょっとして、昔の、コレだったりして」とゲスい応答。

 

昔の女じゃないかって、ウッフッフッフ

 

 

案内状に従いお葬式に行ってみる夜明さん。藍子の兄 哲夫は、夜明さんが6年前に逮捕し、服役した殺人犯。服役中に病死したとのこと。刑務所に入らなければこんなことにはならなかった、だから、夜明さんには葬儀に出席してもらいたいと思った、と恨みがましく言う藍子。

警察をお辞めになったんですか?のやり取りの後、新宿にある藍子の店(クラブ)まで夜明さんがタクシーで送る。お店での会話の中で、藍子は、哲夫が冤罪と強く信じていることが分かる。

 

夜明さんの行きつけの食堂で、哲夫が逮捕された6年前の事件に関する説明。哲夫が殺した相手は同じ自動車整備工場で働いていた元同僚の志賀。和枝を巡って志賀と哲夫がもめていた、哲夫の逃走先は妹の藍子のところではないか、という情報は、志賀・哲夫の元同僚であった徳山が提供。哲夫は逮捕された後の取り調べで犯行を認め、凶器も哲夫の証言通りの場所で見つかって、容疑確定。

 

藍子の依頼に基づいて、新宿の店から横浜の家へ藍子を送る夜明さん。その車中で、志賀を殺したかったのは哲夫より和枝の方だった、と言う藍子。

 

翌日、元妻の電話で起こされる夜明さん。夜明さんが甘やかしたからあゆみちゃんが大学に落ちたという苦情。前作からちょっとブランクがある(この間に渡瀬さん、脳梗塞を発症したのかな?)から、この間に、あゆみちゃん、大学に落ちて、浪人中という設定。夜明さん、お前がガミガミ言うからやる気をなくすんじゃないか、と一応あゆみちゃんをかばうけど、当のあゆみちゃんは、ダイエットテープを指に巻きながら、今日の講師はつまらないから予備校に行かない、などと自由な発言。さらに、浪人生とか予備校生とか言わないで、大学0年生と呼んでほしい、と現実逃避。あゆみちゃん、基本はいい子なんだけど、結構、ダメなところがある。スーパーフリーターの基礎がこのあたりで形作られているのかもしれない。

 

藍子から約束の迎車の指名。志賀を殺したかったのは哲夫より和枝の方だった、という先日の発言が気になりあれこれ尋ねる夜明さんだけど、その話をさえぎって、藍子はコンビニに寄る。このコンビニが今はなきホットスパー。

 

トリックにもその名が出てきたホットスパー。テレ朝御用達?

 

 

そのころ、中伊豆・天城湯ヶ島の別荘で放火があり、徳山が死亡。

 

横浜の藍子の家につき、藍子に「私にできることがあったら、何でもおっしゃって下さい。お兄さん亡くされて、お力を落とされているのは分かります。でもあなたには、その悲しみから立ち直ってほしいんです」と声をかける夜明さん。その言葉に絆されてか、これから夜食を食べるから一緒にどうかと誘う藍子。一人でいることが疲れる、と藍子は言うけど、後から思えば、それは、徳山が死ぬ時を一人で過ごすことはつらいという意味なのかな、と思ったりした。「立ち直ってほしい」っていう夜明さんの言葉がうれしかった、とも藍子は言う。それも多分、嘘でもあり、本心でもあり。

 

徳山死亡について夜明さんに報告に来た東山と国代。車で来たから大丈夫、という東山からキーを奪い、強引にタクシーに乗せ、捜査のために中伊豆へ。地元警察の捜査により、徳山は睡眠薬を飲まされて、火から逃げることができず死亡したことが判明。現場の遺留品は真珠のイヤリング。和枝は現在、宝石商を営んでいることから、和枝が容疑者に。

 

徳山が死亡したのは、東京の不動産業者である郷田宗助の別荘。東山たちは郷田にも聴き込みに行くが、徳山との接点はない。

 

強引に乗せたタクシー代金の支払いは神谷さんのお仕事。あいつら、帰ってきたらクビだ、なんてブツブツ文句は言うけど、きちんと支払うのはえらい。事件に関する意見交換。和枝が怪しいという夜明さんに対し、哲夫が病死したとたん徳山が殺されたことから藍子がにおう、という神谷さん。「馬鹿じゃないの」といつものやり取り。

 

台所の炊事の音で目覚める夜明さん。あゆみちゃんが来ていると思って「あゆみ~、新聞とって~」と声をかけるが、あがりこんで料理をしていたのは藍子。会社で住所を聞いて来てみたら、鍵が開いていたのであがった、とのこと。神谷さんが店に訪ねてきて、徳山の事件でのアリバイを聞かれたので、なぜかと思って、という口実。

藍子が作った朝ごはんを食べようか、というタイミングであゆみちゃん帰宅。怒りのオーラ全開で、藍子は気まずそうに帰る。「信じらんない。娘が来ているのに女の人うちにあげるなんて!」「離婚してんだから、女の人あげようが、男の人あげようが、おかまあげようが、関係ないだろ!」と言いながらも、電話は必死に阻止する夜明さん。言葉は強気だけど、元奥さんには知られたくないらしい。あゆみちゃんは、藍子の危うさを敏感にキャッチ。「あの人、怖い人だわ」「分かるの。あの人、こんにちはって言いながら、目は笑ってなかった」。

 

徳山の死亡推定時刻に湯ヶ島で和枝が目撃されたこと、以前、徳山が和枝にお金を無心し、口論していたのを目撃されたことから、和枝が最有力容疑者に。しかし、和枝は犯行を否定。郷田は和枝のパトロンで、その大事なパトロンの別荘に放火なんかするはずがない、という弁明。東山たちは和枝で決まりと思っているが、神谷さんは、それを疑問視。さすが名警部神谷さん。

 

和枝がひき逃げされ、死亡。哲夫が亡くなってすぐに徳山、和枝が殺されたのは、二人に恨みを持つ藍子の犯行であることを示しているのではないか、と神谷さん。徳山殺しに関しては自分のタクシーに乗っていてアリバイがあるし、なにより人を殺せるような人ではない、と否定する夜明さん。アリバイ作りに利用されたのではないか、と神谷さんに煽られて、本格的に調査に乗り出す。「女を信じるなんて、馬鹿ですよ、夜明さん」とニヒルに言う神谷さんだけど、冒頭のゲスい顔がチラついてしまう。

 

哲夫が勤めていた自動車整備工場と哲夫たちが住んでいた家の近所の肉屋で聴き込み。同じ整備工場に勤めていたことから、哲夫は、志賀・徳山と知り合った。工場のおやっさんによれば、藍子はよく工場に来て哲夫の仕事を眺めていたとのこと。哲夫は、志賀、徳山に引きずられて道を踏み外したらしい。肉屋の女将さんによれば、兄妹の仲はとてもよかったらしい。肉屋のおかみさんは内田春菊さんのようだけど、こんな顔だったかな?

 

離婚をしたことを「なんとなく」あゆみちゃんに謝る夜明さん。木村兄妹の家族の絆話を聞いて、我が身を振り返り、離婚をして家族をばらばらにした責任を感じたのかな。それに対するあゆみちゃんの返しがよかった。「恨んでなんかないわよ。私ね、お父さんたちが別れた後、こう思うようにしているの。私は、ほかの子と違って幸せだって。だって、私には、帰るうちが2つもあるんだもん」。

 

和枝を轢いた車の持ち主は郷田。郷田には、開発を巡って賄賂をばらまいていたという噂がある。東山の推理:徳山は、郷田の黒い噂を種にして和枝をゆすった。徳山を和枝が殺し、和枝を郷田が殺した。この推理、徳山を和枝が殺す、というのは分かるけど、郷田が和枝を殺す理由がよく分からない。

 

一方、神谷さんは、相変わらず藍子が怪しいとにらんでいる。徳山が死んだ別荘の図面を広げてあーだこーだ推理。神谷さんのセリフに「いい別荘だな」とイジリがあったので、この別荘、渡瀬さんが所有していたゲストハウスのマホラじゃないかなと思う。

神谷さん、あーだこーだ考えているうちに、哲夫が獄中で死亡したことを藍子が恨んで犯行を重ねているとすると、哲夫を逮捕した夜明さんも藍子のターゲットになるのではないかと気づく。東山に電話をして注意を促すけど(久しぶりに神谷さん呼び捨てネタも)、夜明さんと別れた後。

 

神谷さんの予感は的中で、夜明タクシー、ブレーキに支障が生じ、車に追突。

結構な勢いでぶつかって、ボンネットがグシャッとなってる。

 

 

この事故で夜明さんは、むち打ちになって自宅で静養。神谷さんたちがお見舞いにやってくるが、神谷さんの手土産はバナナ。今どきお見舞いにバナナなんて持ってくる奴はいないという夜明さんに、昔は病気したときしか食べられなかった、バナナを馬鹿にしてほしくない、と熱弁をふるう神谷さん。でも周囲の人々には響かず、夜明さん→東山→国代→東山とたらいまわしにされるバナナ。「いや、朝飯からバナナ、俺、猿じゃないんですから」。東山のツッコミ、かわいらしくて好き。

 

藍子を疑う神谷さんに反発する夜明さんだけど、「ブレーキに細工なんてことが藍子さんにできるわけないだろ」と声に出してみて、自動車整備工場のおやっさんの、藍子がよく工場に来ていた、という言葉を思い出し、夜明さんにも藍子に対する疑いが芽生え始める。

 

藍子が哲夫の無実を強く信じているのは、徳山が和枝に「志賀を殺したのは俺たちだ」と言っていたのを立ち聞きしていたから。哲夫が志賀殺しの犯人でないのであれば自供するはずがないと言う夜明さんに、「兄は濡れ衣を着せられたまま死んだの。夜明さん、あなたにも最愛の肉親を失うことがどんなに苦しいことか、分かってほしいものだわ」とあゆみちゃんピンチフラグ。

 

藍子に連れられ(なぜ、あゆみちゃんが藍子についていったのかは不明。あんなに警戒していたのに)、伊豆の別荘で徳山と同じように焼死させられそうになったあゆみちゃん。間一髪で夜明さんに救い出される。

 

現場となった伊豆の別荘。多分、マホラ。

豪快に煙がたかれてる。

 

 

そして、このときの車は、1646ではなく941。

事故で1646は使えなくなったということかな。

 

 

あゆみちゃんへの加害は看過できない夜明さん、藍子に一発ビンタをかましてから、告白タイム。

 

哲夫・志賀・徳山・和枝の4人は昔、銀行強盗を犯していた。哲夫が加わったのは藍子の大学進学資金が欲しかったため。その後、カネを使い果たした志賀が、再度、銀行強盗をしようと徳山たちを誘うも、分け前をもとに新しい生活を始めていた徳山・和枝は断る。志賀は二人を脅し、二人は哲夫に志賀を殺させようと企てる。二人は志賀に「昔のことをばらされたくないならもう一度、強盗に手を貸せ」と哲夫を脅迫させ、哲夫は昔の強盗への加担がばらされると藍子が不幸になる、と考えて、志賀を殺害。二人にとっては計画通り。だから、後に藍子が盗み聞きする 「志賀を殺したのは俺たちだ」というセリフが出てきた。

これが志賀殺害事件の真相だけど、徳山の言葉にとらわれた藍子は、哲夫は徳山・和枝に濡れ衣を着せられたと思い込み、徳山・和枝を殺害。徳山殺害時のアリバイは、ファックスを使ったトリック。

 

材料が少なくて最後に怒涛の推理だし、推理も、そんな事実からそんなことを認定してしまうのか、ということも多くて、なんだか消化不良な感じの告白タイムだけど、「よし、帰ろ。あっ、バス停、向こう」「乗せてよ(笑)」という夜明さんとあゆみちゃんのやり取りを見ることができたので、良しとする。それに、富士山もきれいだったし。

 

エンディング、お詫びのためか、夜明さん、あゆみちゃんにプレゼント。あゆみちゃんは怒っていないようだけど、元妻の怒りは激しく、もしあゆみちゃんが来年も大学に落ちたら、夜明さんに予備校代を全部払わせる、と息巻いているらしい。「冗談じゃないよ、あゆみ~」と言う夜明さんに、来年はもう一つ上のランクの私立大学に受かってみせます、と力強いあゆみちゃんの言葉。来年は、国立にしない?という夜明さんだけど、最後は、(あゆみちゃんの学費を稼ぐため)一生懸命頑張りまーす、でエンド。

 

 

兄のことが大好きな藍子が、誤解に基づいて2件の殺人と1件の殺人未遂を犯す。単純に言えばそうなっちゃうし、実際、そういう事件ではあるんだけど、ところどころで藍子に迷いが見られたのはよかった。過去の事件と現在の事件が錯綜して分かりにくいし、告白タイムも消化不良だったけど、合間合間の会話はおもしろかったので、そこはよかった。エンケンさん、第1作の時よりは出世しているような感じだけど、まだまだ脇のわき役といった感じ。徳馬さんは、なんでこの役を徳馬さんが、と思うような役だけど、「特別出演」の表示がされてて、納得。

 

エンディングテーマがついた最初。辛島美登里「あなたの愛になりたい」