「 再会した女 湘南-松本 500キロの殺人!? 」 (1995年)

 

(ゲスト)

大町千紗…阿木燿子、 小日向律子…鍵本景子、 高月静香…松坂隆子、 夏木潤平…望月太郎、 山崎…伊藤昌一、 丸目平八郎…阿藤快

 

 

オープニング。夏木と静香の二人を乗せて走る夜明タクシー。夏木は県会議員。次は、衆議院選挙に出馬したい意向だが、通るわけがないと静香は反対し、口論。静香は夏木の愛人で、県会議員選挙のとき資金援助をした。その返済も受けないうちに、通るはずのない衆院選挙に出馬されたらたまらないという理由。

 

 

本作から、栄光の大同交通1646。

 

 

信号待ちの時、後ろから走ってきたトラックに追突され、そっちがバックしたからだろう、などといちゃもんを付けられて乱闘。騒ぎを恐れてそそくさと逃げ出す夏木と静香。ただし、きちんと代金を置いていくのは律儀。お金の確保と乱闘相手の確保の間で葛藤した夜明さんが出した答えがこれ。

 

相手車両が積んでいたクレーンを使う。

 アクロバティック確保。「タスケテー」

 

 

そんな騒ぎに巻き込まれた後、付け待ちをしていた夜明さんのタクシーに乗ってきたのが律子。演じるのは鍵本景子さん。どこかで見た顔、と思ってググったら、NHK朝の連ドラ「ひらり」でひらりのお姉さん役みのりを演じていた方だった。ほんのり棒風味。

 

律子が向かった先は、東京シティラジオ。律子のリクエストでラジオをつけると、ちょうど、大町千紗がパーソナリティーを務める番組が始まる。その番組で語られる千紗の思い出の音楽はビートルズ。幼馴染で初恋の人からプレゼントされたとのこと。それを感慨深そうに聞いている夜明さん。律子は千紗のいとこ。律子によれば、千紗は東都大学英文学の教授でエッセーを何冊も出しており、品が良くて美人で若い子に人気がある。ほめ殺しのようなプレッシャーの中、千紗を演じるのは阿木燿子さん。結構な棒風味だけど、千紗のキャラには合っていたような気がする。

 

東京シティラジオで千紗と対面する夜明さん。千紗の初恋の人は夜明さん。千紗を逗子の自宅まで送ることになり、その車内で語られる夜明さんの青年時代。大学生のとき、お父さんを亡くして大学を中退し、警察官になった。そのころまで、千紗と夜明さんは交際していたが、夜明さんは仕事が忙しくなり、千紗は外国へ留学することになり、で、結局、別れることに。どうして警察をお辞めになったのですか?のやり取りも。

 

昔、夜明さんが千紗にプレゼントしたのはビートルズのイエスタデイのレコード。数日後の午前2時、勤務中の夜明さんが付けたラジオから流れてきたイエスタデイを聞いて、「再会したからって、いまさらどうにもなんねぇよ」と感傷的な夜明さん。

 

長野県松本市で、静香殺害される。静香は旅館の女将。現場に「チサ」というメモが残されていた。

 

元妻からの電話で起こされる夜明さん。あゆみちゃんが勉強をしない、夜遊びしている、というヒステリックなお悩み電話。そんなはずはないと笑い飛ばして電話を切った夜明さんだけど、当のあゆみちゃんの「彼ができたからって、ちゃんと勉強してるって」という言葉に心配症発動。でも、「お父さん、お母さんみたいにどんなお付き合いしているのなんて聞かないわよね。私のこと、信用しているもんね」というあゆみちゃんの言葉に、あゆみちゃんには何も聞けなくなる。 あゆみちゃん、策士だな。言いたい言葉を飲み込む夜明さんの表情がかわいい。あゆみちゃんが出て行った後、元妻に電話をし、あれこれ質問攻めして、ギャーギャー言うな落ち着け、と逆に言われ、ガチャギリされる。

 

長野県警の丸目警部、東京へ。丸目は夜明さん、神谷さんの同期で、7係三羽烏と言われた間柄。すっぽんの丸目、名推理の夜明、ヨイショの神谷と呼ばれていたらしい。丸目は、東山と国代を助っ人にして、静香殺害に関する捜査開始。

 

あゆみちゃんと彼のことで口論中の夜明宅へ、東山と国代がやってきて、「あー、もう、いやだいやだ」と喚きながらあがり込む。丸目から「酒をごちそうするから!」と言われて喜んでついていったら、自動販売機の前に連れていかれ、安いカップ酒を渡された。「俺たち、16,7のヤンキーじゃないんですよ。僕は、この年になって、自動販売機の前でうんこ座りするとは思いませんでした」としみじみ言う東山が可笑しい。

 

次いで、丸目も夜明宅に襲来。「よあけー」

阿藤さんの田舎臭さと愛嬌が好き。

 

 

東山たちは帰り、丸目と夜明さんで捜査情報の確認。静香の死亡推定時刻は21日深夜0時。愛人である夏木と、静香の高校のときからの友人で会った千紗が容疑者。千紗に関しては、部屋に残されていた「チサ」というメモのため。

 

夜明タクシーで逗子の千紗の家へ。タクシー代は警視庁では払えないと言う東山に「馬鹿野郎!そんなこと心配しなくていいよ!」と大威張りで言っていたのに、千紗宅へ着いて「警部、タクシー代」と言う東山に「わりっ、細けえのねえんだ」「いや、無茶苦茶大きいですよ。警部?!」。ここのやり取りもすごく好き。

 

逗子までの道中は、千紗に容疑を向ける丸目と、「彼女、人殺したりできるわけないだろ!」と怒鳴る夜明さんという安心の展開。

 

千紗の家で事情聴取。静香の殺害時刻、千紗は、逗子の自宅の寝室で律子と二人でいた、と供述。それを律子も肯定して、アリバイ成立。事情聴取が終わって、千紗と夜明さんが二人きりで思い出話をしている隙に、律子をナンパしている東山と国代のポンコツコンビ。まだこのころの国代は東大押し。「自分こう見えても、東大出てるんですよ」。

 

結局、丸目からタクシー代は回収できなかったため、神谷さんが支払う羽目に。昔、夜明さんに千紗という彼女がいるという噂を警視庁内で広めたのは神谷さんらしい。「チサ」というメモを巡って口論する神谷さんと夜明さん。「チサ」はレタスのことではないか、という国代の仮説に飛びつく夜明さん。夏木は農園も経営しているので野菜に詳しい、だからレタスを「チサ」と言った、静香は聞いたことのない言葉だからそれをメモした、という推理。

 

すごく無理やり感がある推理だけど、夏木に関する捜査を進めると、静香が持っていたはずの夏木の借用書が金庫から消えており、金庫には夏木の指紋がついていたことが判明。夏木が一気に最有力容疑者になるが、夏木は、借用書の盗みは認めても殺しは否認する。

 

千紗への容疑が晴れそうなので、そこは安心した夜明さんだけど、お客さんを乗せて国立競技場へ行く途中で、彼と手をつないであるいているあゆみちゃん発見。もう一つの心配症発動。お客さんがいるのも忘れて、車をバックさせて必死に様子をうかがう。

 

抗議するお客さんに「シッ」

夜明さん、必死すぎw

 

 

夜遅くに帰ってきたあゆみちゃんと夜明さんの口論。「私、お父さん困らせるようなこと何もしてない!それなのに、どうして・・・、どうしてお父さん、私のこと、信用してくれないの!」と言って、夜明宅を飛び出すあゆみちゃん。入れ違いで入ってきた東山たちに「おい!尾行しろ!あゆみが心配だから、捕まえろって言ってんの!」。尾行ってwww

 

東山たちによる今どきの女子高生講座。今の女子高生はコンドームをお守りにしている、「口紅・名刺・ポケベル」が三種の神器、あゆみちゃんも18なんだからボーイフレンドの一人や二人いてもおかしくない、という説得に一切耳を貸さない夜明さん。「先輩、いいですか~、よく聞いてください。あゆみちゃんも、いつかは、どこかの男と、結婚するんです」「ダメ!」。なんて言い合っているところへ、「ただいま」と小さな声であゆみちゃんが帰ってくる。夜明さんも「さっき、ごめんね、大きな声出して」と謝ることができて、仲直り。ここで謝ることができる夜明さんはエライ。

 

東山たちも拍手をして夜明さんを称える。

このくだりが、なんともいえずほんわかして大好き。

「えらいっ!えらいです。もぉ~、僕たちに、心配かけないで下さいよ~」

 

 

東山たちによる捜査の進捗状況報告。夏木の犯行を否定する方向の目撃者が出現。犯行時刻は深夜0時なのに、その目撃者が静香の家から出てくる夏木を見かけたのは翌朝。朝、静香の家を訪問して、死んでいる静香を見て、借用書だけを持ち出して逃げた、という夏木の供述に沿う証言。

 

目撃者の証言により夏木は釈放されるが、釈放後すぐに、ビルの屋上から転落して死亡。死ぬ前に「オーチサ」という言葉を残す。

 

「チサ」というメモに加え、「オーチサ」という言葉から、再び千紗に容疑を向ける丸目。再び夜明タクシーで逗子の千紗宅へ。

 

逗子の千紗宅で、律子から千紗のアリバイの詳細を聴取。静香の死亡推定時刻は21日の深夜0時。律子によれば、21日0時30分頃、千紗宅の寝室から、千紗が見守る中、実家の母に電話をかけた、とのこと。律子の母もこれを認め、裏が取れる。

 

千紗と夜明さんの思い出話その2。夜明さんが贈ったイエスタデイのレコードは、夜明さんの千紗に対するサヨナラだった、という話から、数日前にラジオで流れていたイエスタデイのことが話題に。千紗「久しぶりに聞いたせいか、涙が出るくらい懐かしくて。今思えば、日出夫さんと交際していた頃が、私、一番幸せだったのかも」。

 

千紗への疑い捨てきれない丸目。車でどのくらいかかるか時間を測定するため、夜明タクシーで逗子から松本へ。夜明さん「お前、大嫌い。長距離は大歓迎」。片道4時間半。そのまま長野県警に戻ろうとする丸目に「あっ、警部!タクシー代」と東山が呼びかける。「あ~、あいにくこまけえの持ってないんだ。わりいな」「だから、むちゃくちゃ大きいんだって、言ってるだろう!」。天丼大好き。ちなみに、料金は145,420円。1995年当時の逗子~松本間のタクシー料金(役に立たないデータ)。

 

親友に対する嫉妬心・憎しみ、千紗宅にある車いす、千紗の留学時代の知人である山崎と静香が鉢合わせして以来、静香が訪ねてこないこと、お嬢様扱いされてきたことに対する千紗の反発心。目撃されていた千紗と静香の口論。これらのことが積み重なって夜明さんも千紗への疑いを抱き始める。それを察したあゆみちゃん。「お父さん、その人犯人にするつもり?」「彼女、人を殺せる人じゃない。そう信じたいから、調べて疑惑、取り除きたいんだ」「まだ、刑事するつもり?千紗さん犯人だったらどうするの?」「彼女、犯人じゃない。立派なアリバイがある」「だったら止めるべきだわ。好きだった人、犯人みたいに見るのつらいだけじゃない」「・・・そうだな」。あゆみちゃんは、優しい。あゆみちゃんの恋愛話も、夜明さんの心配症エピソードとしてだけではなく、千紗に対する夜明さんの気持ちをあゆみちゃんが察するために必要だったんだなぁ。

 

千紗のアリバイトリック。松本の近くの倉庫に、逗子の千紗宅寝室とそっくりの部屋を作り、睡眠薬で眠らせた律子をそこへ運んで0時半ころ、律子の実家に電話をさせた、というもの。律子がなくしたコンタクトレンズがその倉庫の部屋から出てきたことが決定的な証拠に。いつになく大掛かりなトリック。ここの取り乱して泣く律子が、喚いているだけのうるさい芝居になっていて残念。

 

千紗に自主的に出頭させたい夜明さん。千紗のラジオ番組にリクエストを送る。このリクエストを読み上げる場面がすごく良い。「大町千紗様。僕は英語が苦手なので、この歌詞の意味がよく分かりません。ただ、その中に出てくる "I believe in yesterday" この意味だけは分かるような気がします。私は昔を信じたい、あの頃の、素敵だったあなたを信じたい・・・。それでは、タクシードライバーさんからのリクエスト曲を聴きながら、お別れしたいと思います。曲目は、ビートルズのイエスタデイ」。この歌詞の解釈があっているのかどうか、分からないけど、夜明さんからのメッセージとして使うのは、とても素敵だなと思う。

 

千紗の告白タイム。イギリス留学時代の同棲相手である山崎が転落人生の末、付き合っていた頃の破廉恥な写真を持って恐喝。これはカネを支払って終わったが、山崎が来た日にちょうど逗子の家に遊びに来ていた静香がその写真を盗んで千紗を恐喝。夏木は金庫から借用書を取り出したときに千紗の写真を見て、千紗が静香を殺したことを察し、恐喝。恐喝したら命が危ない、というのは2サスの教訓。

 

ラジオから流れたイエスタデイを巡る会話が、夜明さんが千紗を疑うきっかけとなった。二人の思い出の音楽であるイエスタデイが千紗に容疑を向けるきっかけとなる皮肉。「あのとき別れなかったら、あなたの人生を変えることはできたでしょうか」「私、自分の生き方に後悔していません」。ふわふわした演技の阿木さんが、最後、このセリフだけはきっぱり言っていたのが印象に残った。もうちょっと後悔とか未練とか感じさせてくれてもいいような気もするけど、文字通り後悔していない、ということが全面に出てきた阿木さんの演技は、これはこれでいいのかな、と思った。でも、ラストにかかるいつものテーマ曲は合わない。土曜ワイドにエンディング曲制度が導入されるのが次作からなのが惜しまれる。辛島さんの曲、合っていただろうに。

 

エンディング。千紗と結婚していればよかったのに、と言うあゆみちゃんに、そしたら、あゆみが生まれてないからそれは困る、と返す夜明さん。そして、あゆみちゃんが彼と別れたと聞いて、バンザーイ!と叫ぶ。この父娘、本当に、かわいすぎる。ラスト、お互い笑顔でエンドなんだけど、この笑顔がとても良い。

 

 

夜明さんの過去の恋愛話。あゆみちゃんの恋話も絡んで話が進む。親友に対する嫉妬と憎しみがもう少し丁寧に描かれていればなぁと思うけど、ラストの夜明さんのリクエストがとてもいいし、トリックもいろいろと穴だらけだけど大掛かりで面白かったし、丸目と東山たちのやり取りも面白いしで、好きな作品。この時期の話は、あゆみちゃんの成長と夜明さんの戸惑いが描かれていて、その点も面白い。