今日はご主人 顔色がいいですねー
奥さんいらっしゃると 嬉しいですねー



寒いから 毛布を持ってきましょうねー
奥さん 掛けてあげてくださいねー



は?
脳死ですよ?

顔色は変わるんですか?
暑いとか 寒いとか 分かるんですか?



私は看護師を 睨みつけました



あのね? 奥さん
ご主人 心臓はまだ動いてるんですよ
生きていらっしゃいます



は?
これが生きている?
じゃあ看護師さん  貴女と変わってくださいよ




横から見ても
上から見ても
離れて見ても
これが生きているなんて
子供騙しじゃ あるまいし
軽々しく言わないでください
まるで人形じゃないですか!



私は病室に入ってくる全ての看護師に対して
牙を剥きました






理由がありました





主人の口には人工呼吸器のための管が入っていて

時々口元の脇から プクプクと
気泡が漏れることがありました


私は それが 見た目にも怖かったし  
主人は苦しい訳ないのに
苦しそうに見えて


その度にナースコールを押しました




程なくして来てくれる看護師さんは
みなさん管を器用に回したり 
角度を変えたりして



大丈夫ですからね



そう優しく声をかけてくださいました



それだけで
私は心底 ホッとしたのです
涙がじんわり 滲んできたのです





ある日
丸眼鏡の茶髪の若い看護師が 入ってきました




「アッハッハッハー


蟹さんやん」





ただそれだけの言葉が
甲高い声が
バカにしたような笑い方が

私に 刺さりました





私は耐えられなくなり
部屋を飛び出し


顔を覆って
泣きました









主人の尊厳を
傷つけられ

泣くことしかできなかった私は


悔しくて
悔しくて‥‥


やがて 顔を上げると
私は その日を境に


まるで モンスターのように


牙を剥いたのです




そして ついに

ある事をきっかけに



「警察呼びますよ!」



そう看護師長に
言われてしまうのです



ちなみに
主治医は



個室に移ってから10日め




「ご臨終です」




この言葉を言うためだけに
病室に入ってきました




たった一度たりとも

主人を見に来る事は
ありませんでした