先日、大阪の唐木指物職人、木原由貴良さんの工房にお邪魔させていただきました。普段は来客を受けつけないようなのですが、無理を言って、特別に見せてもらえることになりました。

個人的に、職人さんというと“黙々と作業する”などのイメージを想像していましたが、木原さんに関して言えば真逆。とてもよく笑い、話し上手で、本当に気さくで明るい人柄をお持ちの方です。

日本全国の"ジャパンデザイン"を集めたセレクトショップRin-木原由貴良さん
木原由貴良さん

さて、木原さんのプロフィールを簡単に紹介すると、高校卒業と同時に父親のもとに弟子入りし、唐木指物職人のキャリアをスタートさせ、現在、すでにこの道40年以上のベテラン職人さんです。始めた当初は、新築用の家具などを主に作っていたそうですが、現在は小物を中心としたラインナップに変わったそうです。また、キャリアを始めて、3・4年は全て手作業で行っていたようですが、その後、機械を取り入れながら、作業効率を上げるなどして、手鏡、くすり箱、箸、耳かきなど様々なプロダクトを世に生み出しています。

扱っている木の種類も、タイなどの東南アジアから輸入した唐木(かりん、紫檀など)を使用。唐木は使う程に手に馴染んでいき、深みのある艶が出てくる木なんだそうです。日本の木では、唐木程の存在感は出ないとか。私も一つ持っているので、これからが楽しみです。

$日本全国の"ジャパンデザイン"を集めたセレクトショップRin-唐木の山積み
唐木がいっぱいに積んであります

工房の中には、実に様々な機械があって驚きましたが、それ以上にびっくりしたのが、商品をつくるための道具まで、自分仕様にカスタムし作っている点。既存の機械を活用し、より効率良く商品をつくりやすくするためにこしらえた道具たちは、まさしく木原さんの「知恵の結晶」と言えます。様々見せていただきましたが、中には企業秘密の道具もちらほら。また、工房には2階もあり、主にものづくりの最終工程(研磨や漆塗り、組み立てなど)を行う、職人さんの秘密のお部屋といった感じでした。

日本全国の"ジャパンデザイン"を集めたセレクトショップRin-手鏡作成の実演    日本全国の"ジャパンデザイン"を集めたセレクトショップRin-研磨実演
手鏡作成中                        木材を研磨中

日本全国の"ジャパンデザイン"を集めたセレクトショップRin-手鏡をつくるカスタム工具    日本全国の"ジャパンデザイン"を集めたセレクトショップRin-カスタム道具2 
手鏡の鏡をはめ込む部分をくり抜くための道具  手鏡を加工する際に使う、手鏡を抑える道具

日本全国の"ジャパンデザイン"を集めたセレクトショップRin-漆を塗った商品を収納するための道具
漆を塗った商品がくっつかないようにいくつもの棒で仕切りをつくっています

木原さんは作業中に音楽を流しているということだったのですが、そのスピーカーに注目してみるとびっくり!料理で使うお玉が取り付けられていて、室内にバランス良く音が響くようにしているのだとか。確かに部屋のいろんな場所に移動してもいい音でした。なんでもカスタムして、そして、遊び心溢れるアイデアには本当に脱帽でした。素晴らしいです。

日本全国の"ジャパンデザイン"を集めたセレクトショップRin-カスタムされたスピーカー
家の中にあった大型のスピーカー。木原さんのカスタムスピーカーです。
スピーカーの口部分が上に向けられ、それを半球状の鉄板で音を拡散させています。

最後に、木原さんがものづくりにおいて大切にしている点をお聞きすると、

「様々なことに耐えること」
「使いやすいこと」
「修理がしやすいこと」

であるとおっしゃっていましたが、まさに木原さんの作品を見ると、それらの点が反映されていることがよくわかりますし、また、お話を聞いていると、ものに対する愛情や情熱が痛い程伝わってきます。職人としての木原さんの真摯な心構えと、人としての気さくな人間性を改めて感じ、本当に楽しい時間でした。そして、いい勉強にもなりました!

工房内の写真も少しだけ。

日本全国の"ジャパンデザイン"を集めたセレクトショップRin-キハラ工房内部2

以上、まずは簡単ながら、木原さんの工房訪問レポート第一弾でした。
次回は、木原さんに見せていただいた最近の作品を少しばかりご紹介致します。乞うご期待!