「日銀文学」というフレーズ、皆様聞いた事はありますでしょうか?日銀が景気の見通しを発表したり金融政策の説明をしたりする際に用いる表現があまりに難解かつ複雑怪奇である事から、これを皮肉る意味で使われるフレーズです。日銀本店の所在地から本石町文学と言われたりもするようです。
 日銀文学の例を挙げてみましょう。例えば2013年5月に発表された日銀の景気判断は「一部に持ち直しの動きが見られている」だったのに対し、2か月後の7月には「緩やかに持ち直しの動きが広がりつつある」に変わりました。凡人の我々には何が言いたいのかサッパリですが、日銀的にはこれは景気判断の上方修正にあたるようです。また、この景気判断に「基調」という単語が入ると、多くの場合はあまり良くない意味で使われます。つまり「景気は持ち直している」という表現が「景気は基調としては持ち直している」に変わるとこれは「短期的にちょっと不景気になってるように見えるけど、長い目で見た時には基調として回復してるから大丈夫」というような意味になります。日銀が足元の不況シグナルから目を背けているサインとも取れますね。ちなみに「注視する」は直訳すると「見てるだけ」、つまり「何もしない」の隠語です。

 そんな日銀文学ですが、植田総裁になって以降あるフレーズが頻繁に登場しています。それは「修正」という単語です。「大規模金融緩和の修正」「金融緩和の枠組みの修正」というように。
 しかし「大規模金融緩和の修正」「金融緩和の枠組みの修正」などと言われるといかにも「これまでの政策をより良い方向に改める」というようなイメージを抱きがちですが、実際は植田総裁が「修正」という単語を使う時は総じて「利上げ・金融引き締め」を意味しています。つまり植田総裁は「修正」という単語を使ってあたかも良い事をしているような印象を与えて、実際は日本の景気を痛めつけている訳です。次回の日銀会合は来週に迫っておりそこでは「金融緩和の枠組み修正」という名の国債買い入れ減額(つまり金融引き締め)が決まる予定となっており、注意が必要です。