明日から明後日の2日間にかけて日銀金融政策決定会合が開かれますが、この場でマイナス金利が解除される事がほぼ確実な情勢です。もし仮に解除されなかったとしても、その場合は次の4月の会合で解除されるでしょう。

 

   そもそもマイナス金利とは何なのかという事をブログでいつか詳しく説明したいと思っていたのですが、もう無くなってしまうのが確実なものを長々と説明しても仕方がないのでやめておきます。今問題なのは、マイナス金利が解除されると一体何が起こるのかという事です。

 

   結論から言うと、マイナス金利が解除されても実体経済的には正直何も起こりません。細かい話をすると銀行の利益がほんの少しだけ増えるというような事はありますが、所詮は微々たるものであり経済に影響を及ぼすようなものにはならないでしょう。というのもマイナス金利というのは、それ自体が大きな効力を持つものというよりはハッキリ言って象徴としての意味合いが強い政策でした。マイナス金利の存在によって金融が劇的に緩和されるという訳ではなく、大規模金融緩和(つまりは景気回復)に対する不退転の決意を示す意味でマイナス金利が導入されたと言ってもいいかもしれません。

 

   マイナス金利を解除したとて、実体経済が目に見えて悪化するような事は無い筈です(厳密に言うとほんの少しは悪くなるかもしれませんが)。ただし、景気回復への不退転の決意の印として掲げていた旗を降ろすというのはやはり重要な意味を持ちます。特に外国人投資は、マイナス金利そのものに大した意味が無い事を理解しつつも、それを解除するとなると「これは日銀の政策変更の合図だ!」と捉えるでしょう。マイナス金利解除の先にはゼロ金利の撤廃が待っています。マイナス金利解除自体は厳密に言うと政策金利の利上げに該当するかどうかは難しい所ですが、ゼロ金利が0.1%や0.25%に引き上げられればそれは明確な利上げとなります。「マイナス金利解除は始まりに過ぎず、今後本格的な利上げがさらに進む」と認識されてしまえば、株価に悪影響が及ぶのは必至です。

 

   なので株価にとっては、マイナス金利の解除そのものよりも解除時の説明を日銀がどのように行うかが重要です。①「日本は確実に景気回復している。今後は物価も賃金も上がる。だからマイナス金利を解除した!」こんな説明では今後本格的に利上げしますよと言っているようなものなので、株価に大ダメージを与える事になるでしょう。ですが②「今回はマイナス金利の解除を決めたけれども、日本の物価高はコストプッシュであり需要や賃金は依然弱いままだ。これらが確実に強くなるまでは、ゼロ金利は絶対に続ける!」というような説明なら、実質的な金融緩和継続が意識されて株価は好調に推移するというコースは十分考えられます。

 

 私の個人的な意見としては、そもそも現時点でのマイナス金利解除に反対です。しかし現実的に間もなく解除される事が確定的であるのなら、せめて上記の①ではなく②のような説明で株価に悪影響が及ばないような配慮を願うしかありません。というか、まともな人間なら言うまでもなく②のコースとなるよう最大限に注意を払います。ところが、これまで日銀は失敗に次ぐ失敗を重ねてきました。まともだったのは前任の黒田総裁だけでそれ以前の白川・福井・速水・三重野の4総裁は拙速かつ不必要な利上げを繰り返し、日本の景気後退を強力に後押ししたり回復しかけた景気の腰を折り続けた結果、日本は世界で唯一、30年も賃金が上がらずデフレが続くという暗黒社会になってしまいました。日銀は前科4犯、そういう歴史があるからこそ私は懸念を感じずにはいられないのです。

 

 しかも困った事に、植田総裁のこれまでを見ているとどうもこのオッサンは上記のボンクラ4総裁と似たような思想の持ち主に思えてなりません。昨年末の「チャレンジング」といった不用意かつ不適切な発言が象徴的ですが、とにかく隙あらば利上げを進めたい、そのためには国民生活などどうでもいいという姿勢が見て取れます。そもそも2年近くも実質賃金が下がり続ける中での物価高というスタグフレーションをもって「物価と賃金の好循環が見えた」という認識を持っている事自体、私から言わせれば異常で危険です。

 

 しかし、是非は別にしてマイナス金利はほぼ確実に間もなく解除されます。植田総裁がボンクラ4総裁と同様の大バカではないと願う次第です。正直、怪しい気がしていますが…