あの時あの瞬間、何も考えてなかったんだよね。
前にさとしが捕まえたやつ。逆恨みの典型だった。
オレは、アイツがさとしを見る憎悪の目に、さとしが気がつかないよう、オレが視線を遮っただけ。さとしの前に一歩出ただけ…そしたら、あいつ撃ちやがって。
オレはさとしをかばうように撃たれた。
かばったんじゃないんだよな。さとしがあんなヤツの視線に触れないように隠した感じ?
記憶は…ふふ。
オレは変わらずにさとしを愛してるよ。
だから、さとしを忘れた。
きっとさとしは自分を責める。オレがそばにいたら、守れなかった自分を責め続ける。だから、忘れたフリをしてるんだ。
アンタの重荷になりたくない…のかもしんない。
でもさ、オレ達に終わりなんかないでしょ。
だから、またアンタがオレを…
その日まで待ってるょ。また手ぇ出してくれるんでしょ…さとし。
もう1年経ったけどね。ま、何年でも待てるなら待ちますけど…ね…。
大野さんは魚は何が好き?
あ、あ~なんだろ、結構なんでも好きかも。ニノはちゃんと食ってんのか?なんか痩せた気ぃするけど。
え?大野さん分かる?科研のみんなも気がつかないんですけどね、オレが痩せたのを。よく見てんな~。
やっ、ただの当てずっぽうだし。この仕事、体力勝負だからさ。おっ、鯵!うまそ~。俺好きなんだよね、鯵。特にこの時期。
ふふ。大野さんは鯵好きだろうと思って。頼んでおきました。良かった。あ、口んとこ、ついてますよ。
…その夜1年ぶりにさとしの口元に触れた指先は、火傷したように、熱を忘れなかった。
さとし、アンタはオレに触れたくないのかょ…もういいんだよ。アンタは悪くないんだ。
だから早くオレを奪いに来いよ
さとし…
話も弾むはずもなく、ただひたすら目の前の肴と酒を呑んだ。
それでも、そばなにいられることが…泣けるほど嬉しいんだからな~オレはアンタが好きだわ…今更だけどね。