あしたもともだち | P's diner

あしたもともだち


<前回までの粗い粗筋>

病床の中、久しぶりに電話をかけてきた悪友N。

僕の病状もお構い無しに、一緒に遊郭に行こうというN。
そんな魅惑の誘いをなんとか退け、安堵する僕。

しかし、それはNの本当の狙いの第一段階にすぎなかった。

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巧みな話術によって、見事「遊郭行き」を「普通に飲みに行く」に
切り替えた僕。

麟「じゃあ、どこで待ち合わせようか」

N「北千住にいい店知ってるんだけど、そこでいいか?」

麟「え?北千住?」


おかしい。
僕が住んでいるのは東京都中野区。
Nが住んでいるのは神奈川県川崎市。

そんな二人が待ち合わせるのに、どうして東京都足立区北千住なのか。

関東以外の方にもわかりやすいように、おおげさに例えると、
岩手と青森に住んでいる二人が、北海道で待ち合わせるようなものです。

もっと言うと、
御堂筋沿いに住んでいる二人が、わざわざ梅田で待ち合わせる
ようなものです(ありえるんじゃないのか)。

とっても薄い、僕の大阪知識をひけらかしたところで話を戻しますが、

もっと二人の中間地点的なところ、品川とか、有楽町とか、
そのへんでしかるべきなのに、なぜ北千住なのか。


麟「なんで北千住よ?」

N「だからいい店があんだよ」

麟「いい店ってどんな店よ?」

N「マジでさ、カワイイ娘ばっかりで」

麟「待て待て待て待て待て待て待て待て!
どういうこと?」

N「マジでいいキャバなんだって」

麟「マジでいいキャバとか言うな!キャバとか略すな!
なんで久々の再会をキャバクラで迎えるんだよ!」


何を考えているのでしょう野口は。
しまった。Nだ。

詳しく事情を聞いてみると、
なんだか難しいプログラミングの仕事に就いているNが、
最近技術提供という形で、北千住のとある会社に通っていたそうで、

その時に行った北千住のキャバクラに、「運命かしら」と
思うほどN好みの女性がいたとのこと。

Nとしてはその女性が忘れられず、何度か一人で通っていた
らしいのですが、さすがに一人では淋しくなってきたので、
どうせヒマぶっこいてるであろう僕に同行を求めたというのが真相。


Nの(叶わぬ)想いを考えると、行ってやってもいいかなと思いましたが、
人見知りが最大の売り(?)であり、魅力(??)である僕は、
日本で五指に入るほどの

「キャバクラを楽しめない男」
もしくは
「結婚できない男」ですので、

悩みに悩んだあげく、即答でお断りしました。

タバコに火をつけられるだけで嫌な顔をしてしまう僕がいると、
Nの(叶わぬ)恋を台無しにしてしまいそうだしね(詭弁)。


麟「とりあえずホントに普通に飲もうよ。
キャバクラとかそういうのは今度(来世で)つきあうから」

N「・・・わかったよ。普通に楽しく飲むか」

麟「そうそう」

N「じゃあ場所とか時間、俺が決めていいか?」

麟「別にいいよ。吉原とキャバクラ以外ならなんでもいいよ」

この段階で、僕はまんまとNの策略にはまってしまっていたのでした。
これまでのNが出してきた、「吉原」「キャバクラ」といった突拍子も無い
提案の数々は、上の言葉を僕から引き出す為のブラフにすぎなかったのです。

さすがN。
昔から「軍師になりたい」と言っていたっけ。
「三国志」とかメチャクチャ巧かったっけ。


N「じゃあ来週の土曜日の8時、新宿で大丈夫?」

麟「いいけど、お前んちから新宿遠くない?」

N「大丈夫大丈夫。最初から新宿ってことになってるから」

麟「・・・・・・え?最初って?」

N「いいからお前絶対来いよ!じゃねえと人数合わねえから」

麟「・・・人数?」

N「こっちも3人揃えるって言っちゃってるから」

麟「3人?・・・まさか!」

N「吉原とキャバクラ以外ならなんでもいいって言ったでしょ?」

麟「・・・・・・」


ぐうの音も出ないとはまさにこのこと。
文系が理系に敗北した、記念すべき瞬間(?)。


というわけで、来週の土曜、
つまり今週の土曜、
つまりつまり今日、

ホント久々に『合コン』にいってきます。





しかし、
なぜNは、こんな回りくどいやり方で僕を合コンに誘ったのか。


それはきっと、普通に誘われても絶対に行かないという、
僕の天の邪鬼さ加減をNが熟知しているから。





そして、
なぜ僕は、「今度合コンに行きます」の一行で済む話を、
長々と、しかも何回にも分けて書いたのか。



それはきっと、僕が今日の合コンに対して、極度に緊張しているから。





ヒィー