少し前に、国勢調査の用紙が配布された。
あ~~~、と妙な氣持ちで受取り、さっさと書いて10月2日には投函しちゃおう、と
書ける場所のみ、埋め始めた。
5年に一回のこの調査、勤め人になって翌年に、
第一回目の経験をした。
職員は片端から割り振りがあり、私は若いから、と男性の独身寮と
単身寮を割り振られた。
若いから、は、当然、相手とロマンスをしろ、という意味ではない。
用紙配布の際、大概の場合、相手が不在が多いので
メモを添付して配る。
それでも、土日などを利用し、在宅を狙うのだが
こちらの意図通りに行くはずもない。
○月○日 何時ごろ回収に伺いたいのですが
もし都合がございましたら、この用紙で希望日時を
お知らせください、と連絡用のメモもつけて配る。
返事があればいい方。
相手は、それをしたからと言って、何の見返りもないので
なしのつぶて、か、何度行っても会えない、という
パターンも多かった。訪問時間をいろいろに変えて幾度も伺った。
20時とか、午前7時とか。
心折れるような言葉を言われたことも多い。
若いから、はこの辺りに起因する。
何度でも、会えるまで訪問しろ、という意味である。
時間指定してくる場合も、日曜 正午、とか、土曜 午後4時、など
他の用事など何もできない時間も多く
また、同じ時間が重なった場合は、近くの建物なら
それぞれに、前後10分ほどずらして頂けませんか、と頼み
間に20分の空白を作り、最初の方の聞き取り、走って次の方の処へ行き、
また聞き取り、という、若く無ければできない芸当をしていた。
仕事の都合で、それしか無理だ、と
23時30分を指定された時は、
バットを持って臨んだ。男子単身寮である。
対象者ばかりでなく、他のすれ違った男性に襲われる危険性もなくはない。
相手から見えない場所にバットをおき、もし何かされそうになったら
即、掴めるようにスタンバイした。
バカみたいだが、それが現実だった。
バイトでお願いする調査員には若い女性も多く、
まあ私は職員なので、覚悟を決めてゆきますが
バイトさんに何かがあったらまずい。
数年後、女子には防犯ブザーが支給されるようになった。
た~ぶん。全国規模での同一行動だ。
何処かの誰かは、危険な目に遭っていたのだろうと推察した。
真っ暗な山道歩かなければならない人もあったろうし
妖しい街角を歩かなきゃならなかった人もあっただろう。
タコ部屋なみの待遇の中に、この国勢調査は成り立っている。
それを知っている人はどれくらいいるのだろうか。
報酬?バイトさんも、雀の涙。
職員は職務なので、19時以降になった時は、1時間のみ時間外勤務手当がついた。
現地までの往復時間も含め。そんなものです。
今は自分が調査員をすることはないけれど
「国勢調査」という文字を見ると、それらが浮かんできて
苦しかった思い出ばかりが浮かんでくる。
バットは使わなかったものの、いいじゃねぇかお酌しろよ、と
部屋に引きずり込まれかけたこともあったし
こんな時間に男の部屋に来るってことは
いいってことだろう、と言われたこともある。
あなたの指示ですが?きたくて来てませんから。
夜道を一人歩いていて、私なにをしてるんだろう、と思ったこともある。
今は、ネット回答が出来るようになり
あのころの、嫌な思いをしながら頑張ってくれていた娘っ子たちに
あの頃これがあったらよかったね、と言いたい気持ちになった。
※ 追記
国勢調査とは 統計法という法律に基づいて、日本に住む全ての人・世帯を対象として
5年に一度実施する国の最も重要な統計調査です。
外国人の方も対象であり、全ての世帯に回答する義務があります。
男女の別、出生の年月、就業状態、従業地または通学地、
世帯員の数、住居の種類、住宅の建て方(戸建て、集合住宅)などの項目を調べます。
住民基本台帳(住民登録)などの届出に関係なく、10月1日午前零時現在、
ふだん住んでいる場所で調査するので、日本の人口や世帯の実態がわかります。
つまり、10月1日現在、このニホンの大地の上に
何人の人間が暮らしていて、どんな仕事や暮らしをしていて
どんな家に住み、どんな仕事をしているか、を数字で表し
今回のコロナ禍のような事態になった場合、どれだけの人数に
どんなふうに扶助を行えばいいか、それには
どれだけお予算を編成すればいいか、等を
はじき出すために必要なデータを作成するための
基礎調査になります。
本当は1000人いるのに、やらね~、と調査に非協力で900人しか回答しなかったら
予算編成の際の、対象者を少なく見積もることになり
予算がたりない、というような事態になったりします。
調査協力は、自分自身の為になります。
自分も公僕でしたから、国勢調査、という単語を聞けば
どういう時に、どんな風に活用することになる、どんな数字、と
そらんじられますが、多分一般の方には馴染みないし
なにしたいの?と思われるだけだと思うのです。
TV番組のスポット的に、1回30秒でもいいから
こんな調査で、こんな役に立てます、というような文言を
自然に頭に入るくらいまで、しつこく流せばいいんじゃないか、と
考えます。だって、国営調査とは?と質問して、
明確に応えられる方、多くはないでしょう?
国勢調査実施している側も、私と同じく 当たり前 な人間だから
「それがピンとこない人」のことを ないがしろにしているのではないか、
今回書いてみて、そんな感想を持ちました。
そのピントきてない方、に応えて頂かないとならないのだから
もう少し、親切にしてもバチあたらない、と思うのですが。