あなたの海を見たい | みほ日和

みほ日和

春は花
夏ほととぎす
秋は月
冬雪さえて 涼しかりけり

心の中に去来する思いにとらわれて

つい、その周波数の中にどっぷりと浸ってしまうことがある。

 

つまり、落ち込むという事だ。

 

自分ってバカじゃん?後悔してもどうにもならないことを

繰り返し「もしものコーナー」のように、幾度もシュミレーションして

自分を責め立て、それは己の省みに必要なことだとしても

何も生み出さない、先に進まない行為でもある。

気付くとひたすら統合を続ける。

自分が暗くなったからと言って、誰の得にもならないのだから。

 

 

2月末に出会った男性がある。

ドラッグストアでバイトしている青年。

私は2月末脳内出血を起こし、しかし己で何もかもしなくてはならなかったので

買い物に行き、何も考えずに2Lのペットボトルを何本も買ってしまった。

会計を終え、荷物をサッカー台に運ぼうとし、重さに絶望した時

青年はさっと籠を取り、サッカー台まで運んでくれた。

きっと酷い顔をしていたんだろうと思う。やっとふらふら歩いていたのだから。

「大丈夫ですか?」

その青年の笑顔に救われた。

こんな行動を、さり気にできるこの子は、親がちゃんとしたしつけを

してきたんだろうな、と思った。

「あなたはその笑顔が人を元気にしてくれるから

いつもその笑顔、人に向けてあげてね。私はあなたの笑顔に救われたよ」

青年は、他の店員に断って、車まで荷物を運んでくれた。

そんなの、業務に入っていないのに。

「家では、何とか頑張って降ろしてくださいね。

ついて行ってあげられなくてごめんなさい」

「ここまで運んでくれただけで感謝ですよ、ありがとう」

こんな言葉、なかなか言えるものではないだろう。

 

 

大学生だという彼は、春休みが終わると学校に戻り

なかなか顔も会わなかったけれど

それから二か月ほどした頃に邂逅できて

「あ!前に話させて貰ったお客さんですよね!」

私はそう多くの人と出会っている訳ではないからすぐ判ったけれど

青年は色々な人を見ているはずなのに。

「はい、病気してた時お世話になったの。よく覚えていてくれたね」

「あの時言われた言葉、励みに頑張ってるんです。

あんな褒められ方したの初めてて。

なにか特殊なことが出来なくてもいいんだって。

凄く自信つけて貰えたんです」

自分の言った、ただの一言をこんなに真面目に受け止めてくれて

それを自分の心の中に留めて、生きて行ってくれている。

こんな嬉しいこと、ないな、と自分が泣きそうになった。

 

何気に名前を覚えてくれて、その後再び邂逅できた時

「西住さ~ん!元気そうな顔見られて良かった。西住さん、笑ってくれるのかわいいですよ!」

西住、可愛くないです、しかも青年の母親くらいです(-_-;)

 

 

この、<落ちた>状態で、一昨日また再会できたのですが

「西住さん、何かありました?元気ないですよ」

「あ、友人亡くなったり、人に迷惑かけたりしちゃったので」

青年、レジから商品整理に入り、こっちなら話せます、とひと気のない売り場に誘ってくれて

「人間だから、西住さんも落ち込む事も勿論ありますよね。

西住さんは、僕にとって、いてくれるだけで元気にしてくれる女性なんです。

そんな西住さんが力落としているのは、僕も辛いです。

いつも、西住さんは周りの人間を元気にしてくれる、それは見てて

判りますよ、ここの他のスタッフにもさり気なく気遣う言葉

かけてくれてますよね。

元気で当たり前、とは求めません。僕に、何かできることはないですか?

言ってほしいんです、大したことは出来ないけど

短い時間でも、何か話すこと、くらいはできるから」

青年は、どんな心を持っているのだろう.

御召し列車を見に行った時、細々世話を焼いてくれた青年もそうだけれど

何を求めることもなく、惜しみなく自分の持てるものを差し出してくれる青年たち。

スターシード、と呼ばれる年代の青年たちは、こんなにも他者と自分の

境目を持たないんだね。

なにか得になる事もないのに。

ひろく、深い海みたいな心なんだろうな。

あなたの海を見たい。

不意にその言葉が浮かんだ。

深く、人を気遣ってくれる心のやさしさ、ゆたかさ。

私はそれを、わずか二十歳の青年から教えられた。