共演がなくなったからと言って、違う惑星に離れてしまうわけでもない。

連絡先だって、住んでいる場所だってお互いに知っている。

繋げておこうと思えば、いくらでも繋いでおける絆。

俺たちはお話の中の世界の学生じゃない。

大人たちが無理に引き離そうとしても、自分の意志の力で想いをつなぐことができる。

 

なのに、どうして。

これで終わりだと思い込んでしまったのか。

まるで消えない記憶のように写真集などを贈ろうと思ったのか。

小さく震えていたホワンの指先が答えを知っている気がした。

 

思い付きのように浮かんだ思考はどんどん膨らんで俺の胸を締め付ける。

 

<・・・ホワン?>

<・・・どうしたの?こんな時間に>

 

気が付けば、スマホの画面をタッチしていた。

ただの共演者が連絡するにしては常識を超えた時間だ。

それに気がつけないほど、もしかしたら、という予感は、止めることができない。

 

<・・・あのさ。あの写真集の意味、って何?>

<意味ってどいうこと?>

 

泣いているとばかり思っていたホワンは予想以上に落ち着き払った声をしている。

俺が作り上げた妄想だったのか、願望だったのか。

はたまたすべてが夢だったのか。

はかなく美しいホワンの姿を思い浮かべると、妖精が魅せた幻のような気もしてくる。

急に自分が先走った欲望に憑りつかれているような気がして、焦って会話を遮る。

 

<いや、いいんだ。意味なんてないんなら。>

<意味?わかんないなら、今すぐ僕のマンションまで来てよ>

 

ホワンの声がすると同時にライトが消えた。

 

意味・・・か。

今の返事も幻かもしれない。

もう一度かけなおしたら、冷たくあしらわれるかもしれない。

 

瞼の裏に残る携帯のライトがチカチカと思考を乱す。

 

「・・・よし!」

 

幻ならば、惑わされよう。

欲望ならば、受け入れよう。

お前が望むなら・・・抱きしめよう。

 

一人で肩を震わせることのないように。