駅につくと、まおはすでに待っていた。

サングラス越しでも一瞬でわかる太陽のようにキラキラと眩しい存在。
穢れた世間など知らぬ曇りのないオーラが、綺麗で、後ろめたくさえある。

「・・・あ。久しぶり。」

俺に気がついたまおが、軽く手をあげてはにかむ。

記憶よりも、ほんの少し背が伸びた気がする。
子供だと感じていたラインが、シャープになった気がする。

・・・それはただの勘違いで、俺の願望だろうか?

「元気してた?」
「・・ん。まあまあ。」

「どこ行く?」
「・・・どこでも。」
「行きたいところ、考えとけ、って言ったろ?」

久しぶりに会った距離感に戸惑っているのか、いつもの元気さがない。
物理的距離というものは、精神的距離も離してしまうのか。と寂しくなる。

・・・ついこの間までは、離れることでなかったことにできる。と願っていたくせに。

実際に会うまでは、何をしたらいいんだろう?間がもつんだろうか?
と、心配になったりもしたけれど。
お互いの近況を話したりしながら、ぶらぶらと街を歩いているだけで、あっと言う間に時間は過ぎていった。

「これ、今よく聞いてるんだよね。」
「へえ。そうなんだ。」

自分一人では興味を持つことのなかった音楽のジャンルを知ったり。
お互いにはまってたゲームが同じだったりして、攻略本を二人で覗きながら盛り上がったり。
クレーンゲームで見事に全滅して、「大ちゃんでも苦手なことあるんだねえ!」と、逆に感心されたり。
マックのクーポンだと思っていたのが、全然違う店ので大笑いしたり。

シナリオ通りじゃないデートというものが、こんなにも楽しいものだと初めて知った。

「あ~。これ、もう公開されてたんだ。ちょっと観てもいい?」
「いいよ。」

前から気になっていた家族愛を描いた作品のポスターが映画館に貼られている。
気まぐれに話題をふっても、快く受止められる安心感。
まおが人の話に眉根を寄せているのを見たことがない。

「やっぱ、映画にはポップコーンでしょう!」
「同感っ!」

二人では多すぎないか?ってぐらいの大盛りのポップコーンを買ってしまうあたり、
やっぱりどこか浮かれているのだろう。