戻れる、と思っていたのに・・・・。

虹色の反響が予想以上によかったので、続編を作る。という話が舞い込んできた。
原作もしっかりしていたし、監督の撮りかたも大好きだったし。
何より、自分たちが全力で演じ上げたものが評価された。ということは嬉しかった。

<マジですか?続編??>

素直に嬉しいという感情が沸き起こる反面、やっと感情を無視することに成功しかけていたのに。
と、不安が蘇る。

俺が普通に接していたら、今までどおりでいられる。
まおにとっては、頼れる先輩。兄のような存在。

・・・よし!

呪文のように何度も口の中で唱える。

撮影現場で会ったら、ギイとタクミで。
少しぐらいまおを意識してしまっても、役柄上だから、とごまかせるだろう。
台本を読んでいると、ぎくしゃくした関係から始まっているし。
久しぶりだからギイを取りもどすのに時間がかかっている。ともいい訳できる。

まおは疑うことを知らないから。

多分、うまくやっていける。


そんな俺の心を知ってか、知らずか、礼儀正しいまおから挨拶のメールが入る。
まおらしいなあ。と、思わず頬がゆるむ。

<今度、また共演することになったんだね。よろしくお願いします>
<・・・らしいな。3がつく作品とかって、めっちゃ嬉しくねー?>

<大ちゃんの演技がよかったからだよ>
<まおも、めっちゃがんばってただろ?その熱意が伝わったんだよ>

<いやいや。監督のお陰かな?あんなに綺麗に仕上がると思ってなかった>
<確かに!我ながら、ちょっと感動しちゃったもんなあ>

うん。大丈夫。
尊敬する親しい先輩、を演じきれている。

<・・・久しぶりに、会えないかな?>

ドキリ。
まおからのプライベートの誘いに、心臓がひやり、と冷えるけれど、当たり前のように誘いに乗らなければ、意識していることを自白するようなものだ。

<そーだな。卒業してから、なかなか会えないもんな>

間髪いれずに、返事を返す。

<じゃあ、今度の日曜日に>
<日曜?あ。そっか。お前、まだ学生だもんな>

あっさりと決まってしまった約束に内心焦りながらも、どこかで期待している。
まおの気持ちは、過去の共演者であろうと、憧れであろうと、俺の上にある。と。

誘ってくれたのは、まおだけど、やっぱりここは年上らしくエスコートをしないとな。
とは、思うけれど、同年代の女性をエスコートするのとは訳が違う。
雰囲気のあるカフェで落ち合って、お洒落な町並みを楽んで、夜景を見ながらバーで乾杯する。運がよければ、そのままホテル・・・。
なんて、シナリオが全く通じない、高校生でしかも男だ。

高校生のころって、何してたっけ・・・?
カラオケ?ボーリング??ひたすら、街を練り歩き??
そもそも、部活が忙しくてあまりまる一日自由!ってことがなかった気がする。

行きたいことろ、考えとけよ。

結局まおに丸投げをしてしまった。

期待と不安が交じり合うと、こんなマーブル模様になるんだな。
心の中に同時に存在する温度差を、どこか冷静に見詰めている自分がいた。

・・・・ちょっとは、成長した。ってことだろうか?