今日は向かいの家のまおが泊まりに来ている。
まおの両親が水入らずでの旅行ならしく、家族同然の俺ん家で、まおの監視役をおおせつかった。

「こら~~。まお、歯みがきしないと、虫ばい菌がくるぞっ。」
「きゃはははっ。はみがき、いや~~。」

逃げ惑うまおを追いかけて、家中を鬼ごっこ状態で。
やっと捕まえたかと思ったら、歯ブラシを用意している間に、するりと逃げられる。

「もう、知らないからなっ。一緒に寝てやらないからなっ。」

ぷんすか。とわざと怒って、まおに背中を向けると急に不安になったのか背中にぎゅうっと抱きついてくる。

「だって・・・。オトナになりたいんだもん。」
「・・・はあ??」

9歳も年下のまおの思考回路は時々突拍子もないことを言い出す。

「だいちゃみたいに、はがぬけたいんだもん。」

自分の歯を、ぎゅ~~と引っ張るまおの仕草に・・・・。

「あははっ。・・・そっかあ。なるほどなあ。・・・あのな。まお。歯は、新しい歯が作られるから、抜けるんだよ。
歯みがきしてたほうが元気なオトナの歯が生えてくるよ?虫歯になったら、オトナの歯、生えてこないかも~~。」
「・・・そなの?」

きょとん。とばかりに俺を見詰めてくるまおの顔が愛らしすぎて。

「だから、カッコイイオトナになるために、歯みがきしような?」
「・・・うん。だいちゃみたいになれる?」
「ああ。ちゃんと歯磨きしてればな。」
「じゃあ、する~~~。」

あーんと素直に口を開けて待っているまお。

俺が歯が抜けるたびに、「ほら。まお、歯が抜けたんだぞ~~。まおもオトナになったら抜けるからな。」と教えていたことと。
歯みがきしないと、虫歯になって歯が抜けるぞ。って教えていたことが、まおの頭の中で幼いなりに解釈されていて。

何でも俺の言うことを信じて、することをよく見て、成長してるんだなあ。と思うと、ものすごく嬉しくて。

「おりこうさんだな。まおは。」

しゃこしゃこと磨いてやり、うがいをさせ、洗面台のイスから飛び降りるまおの手をつないでやる。

「だいちゃ~~。ごほうびは?」

キラキラと瞳を輝かせながら、「僕、えらいでしょ?」と言わんばかりに自慢げなまおのほっぺに、ちゅ。とキスをした。

「えへへ~~。だいちゃ、だいすきっ!!!!」


小さな・小さな俺だけの天使。

だいすきだよ。

まお。


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もうすぐ5歳の3男君のいい訳(笑)
・・・というか、本当に虫歯になったら歯が抜けるから、抜けたいから磨かない。と思っていたらしい。

幼馴染な二人が、こんなやりとりしてたらかわいいなあ。と思いました。