薄汚れたコンクリートの岸で
私は釣りをしていました
沖にはいかだに乗ったあなたがいました
あなたは私に
「大物は釣れそう?」と問いかけました
私は
「このあたりには大物はまるでいないよ」と答えました
しかしすぐにしなり軋む釣竿
これは大物かもしれぬ、と
糸が切れぬよう用心しながらそっと引き上げると
糸の先には60㎝程の黒とグレーのバイカラーのサナギがかかっておりました
それにはカタカナで
“ナンポキンザウルス”
って書いてありました
じいっと眺めていると
そのサナギは
カタカタと揺れはじめました
驚いてコンクリート製の椰子の木に駆け上ると
サナギはたちまち20m程の首長竜へとトランスフォームしました
私は思いました
『沖にいかだが見えないけれどあなたはどこにいったのかしら』
あれ以来
私はあなたと会う事は二度とありませんでした
不思議な
不思議な
ナンポキンザウルスの お話です
暗闇の中で
にじ色の鱗粉を振りまきながら
華麗に飛ぶ蝶々は
ふわふわしながらも
一心不乱に
ただ真っ直ぐに
光に導かれ
ようやく辿り着いた先は
蛍光灯
偽りの光
明るみに出て蝶々は
自分が蝶々ではなくて
蛾であった事に気付き
二度落胆しながらも
蛾として生きて行く道を選ぶのでした
「人間になるよりはマシ」
と


