私が尊敬する演技指導者
リー・ストラスバーグは



蚊を殺す衝動で 殺人するシーンを
演じられると言った。



愛してるというリアリティがあれば
演出家がどんな状況で
その言葉をいうことを求めても
「愛してる」と言えると言った。



役者が
このセリフが言えないというのは
キャラクターとシチュエーションが
できていないからだと。



これらは
みな 役者が舞台の上で
本当に生きるために
言われたことだ。



ロバート・デニーロが
舞台に出たときに
毎瞬生きるために
相手役のコーヒーカップに
ゴキブリのおもちゃを入れたり
クローゼットの中に隠れたという
エピソードを聞いたこともある。



思い出すのは
連続ドラマ「カラマーゾフの兄弟」に
出演いただいた吉田剛太郎さんの
ことだ。



朝 からステーキを食べる
強欲な父親 の役で。



リハーサル終わって
本番になり、吉田さんはいきなり
相手役の斎藤工さんに向かって
ステーキを投げつけた。



斎藤工さんの顔色が変わった。
そして 父親吉田さんとの
緊迫する喧嘩シーンが
見事に演じられた。



そのとき
仕掛けた吉田さんも
それを受けた斎藤さんも
すごいなぁって感動した。



役を本当に生きるためにやったこと。




いや 本当に役を生きたから
それが起こったのかもしれない。



あの非情な父親は
そういう男だもの。



シナリオに書かなかったことが
悔しいくらいだ。



役を本当に生きることは
プロの役者にとっても
大変なことなのだ。



私は役を「演じる」ものに興味がなく
役を「生きて」欲しいと
いつも思っている。



カタチでそれらしく見せるのは
熟練した俳優は簡単だ。



しかし それではエネルギーを見る
私にはつまらない。



どうしたら生きられるのか?



一回きりの
多くても数回の演技ですむ映像とは違い
毎日続く舞台で
毎回新鮮な気持ちで
生きるにはどうしたら?



本当に 今 ここで生きるには?



演出家として
それをどうサポートできるのか?



それが目下のいちばんの課題だ。



舞台はナマモノ。



一回一回が違う。
お客様の空気感で変わったりする。



それが舞台の面白さ。



今日も
最高の舞台をお届けします。
ミュージカル「天の河伝説」



心よりご来場をお待ちしております。
(現在 おかげさまで
全席完売となっております)



演出家  旺季志ずか