こんにちは、リキュウコートです。 #184
今回も動画の解説を行います。
今回の動画は、ディラーで商品化(再生化)された中古車のガラスコーティング施工の模様をお伝えします。
カラーはブラックマイカ(パール)塗装です。
作業の目的はガラスコーティング施工ですが、お客様の要望もあり磨きを行います。
動画の最初に車輛全体をお見せしましましたが、遠目で見ると鏡面光沢の様にピカピカに見え、何故?磨きの必要性があるのか理解出来ないと思いますが、近づいて見ると薄らと雨染みや細い線傷の様なものが確認出来ます。
これは、商品化の際に除去し切れなかったものや、展示期間中に生じた傷やシミの様に思えます。
でも、遠目では鏡面の様にピッカピカです。
磨きの作業に入ってに感じたのですが、優秀な保護剤?光沢性に優れた仕上げ剤などで仕上げているのではないかと感じました。
この件は後から解説したいと思います。
※ 洗車を終えた磨き前の商品化(磨き)されたボディの状態
お客様の要望でコーティングする前に、傷やシミを改善して欲しいという希望に応えて磨く事にしました。
ここで、一般の方に問いたいのですが、すでに商品化されて汚れも無く、一見すると磨く必要も無いように思える状態を、どのバフを選択し磨きますか?
此処まで仕上がっていて、少しの傷・シミ程度ならスポンジバフで磨けるのではないかと、私も思いたいのですが、逆に汚れ堆積も一切ない、純粋に塗装に入った傷やシミは簡単には除去出来ません。
この初見の見極めが、磨きの経験の有無で別れる難しい所です。
この車を見て要望を聞いた時点で、面倒ですが「ウールバフ磨き」を行うしかないと思いました。
スポンジバフでは傷・シミに対し、歯が立たない事は十分承知している為です。
最近の動画解説では、バフ素材の違いによる、能力と役割を重点的にお伝えしていますが、磨きのテクニックよりも、バフの能力や役割を知り、症状に合わせたバフの選択が一番重要なので解説しております。
直に入った傷やシミは、スポンジ素材のバフでは除去は不可能です。
これは、コンパウンドの削る磨きでも同様です。
粗い研磨剤とスポンジバフの組み合わせでも不可能です。
私にとっては考える余地も無い当然の選択ですが、意外とバフの選択の重要性について、認識されていないと思える質問が多いので驚いている所です。
作業の入口であるバフの選択が間違っていれば、コート剤の性能が発揮出来ないどころか、無駄な作業に振り回されて、思い描く仕上がりが望めない結果となります。
今回の動画では、これまでに無い実車でのウール磨きが存分に観えますので、何かの学びになれば良いという思いで撮影しました。
最初にお断りしておきますが、今回の動画はお金を頂く仕事の為に、いつもの様な検証は行いませんので、あくまでもプロとして実際に行う作業の様子をお伝えするという動画です。
本来、撮影には様々なセッティングを要しますが、作業を優先している為に傷やシミが確認しづらい点がある事もご理解下さい。
今回は、車全面をウールバフにて磨きを行いますので、2回に分けてウール磨きをお伝え致します。
今回は前半のウール磨きをお送りします。
最初にボンネットの雨染みと洗車傷の除去です。
フロントガラスに近い箇所にて水が流れにくく、水たまりが起こり易い箇所の雨染みの除去です。
恐らくは、商品化されてから生じた雨染みの様なので、深さは無いように見えるので、マルチコート剤の埋める能力で除去出来ると見立てました。
但し、洗車傷の方は一回の磨きでは埋め切れるのかが微妙です。
ボンネットから磨き始めたのですが、初めの段階で違和感を得ました。
それは、このメーカーでは珍しく絡みや焼き付きが起こり掛けたのです。
※ 除去された不純物とコート剤が絡み合う状態
※ 不純物とコート剤が絡み合い焼き付きを起こす前の状態(画像左部)
スポンジバフでの絡みや焼き付きが発生する事はありますが、ウールバフの最初の磨きから、絡みが生じる事は珍しい事例です。(特にこのメーカーでは)
絡みと言う現象は、汚れとコート剤が絡み合う現象により発生するもので、磨きが完成(商品化)している塗装では発生しないものです。
絡みの原因は、ピカピカに仕上がった光沢・仕上げ剤(保護剤)にあると感じました。
本来は、仕上げ剤というものは薄く膜を張る様な感じですが、結構な厚み?を感じる仕上げ剤・保護剤の様に磨きを通して感じました。
これだけの光沢を出す仕上げ剤ですので、ある意味では優秀な保護剤とも言えますが、マルチコート剤の磨きで除去されるという事は、私から見ると優秀な保護剤であっても不純物に属する物だと思えます。
コーティング系(フッ素・ケイ素)等での仕上げ剤や、コンパウンド磨きで行う最終仕上げ剤では、この様な絡みは出ません。
マルチコート剤で除去されるという事は、永遠に続く性質の物では無いと言えます。
本当の意味のある保護剤(コーティング成分)は、マルチコート剤で磨いても除去出来ません。
そこで思い浮かぶのがワックス・シリコン系の保護剤です。
ピカピカに発色する優秀な保護剤だと思いますが、劣化が進むと単なる不純物になってしまいます。
現時点でも、バンパーのパーツで不具合と思われる箇所が見受けられますが、少し白っぽく擦れた様な症状が確認出来ます。
この現象は保護剤(ワックス・シリコン)の柔らかさによる症状だと推測出来ます。
その性質の為に、手入れによる傷も入り易く、雨染みも付き易いのではないかと思います。
汚れが無い状態の磨きのはずでしたが、この保護膜を除去する必要性が出て来ました。
この絡み具合から推測すると強固な被膜であると思われる為、シリコンオフによる脱脂もスポンジバフ磨きも中途半端な磨きになると判断し、予定通りウールバフによる全面磨きを行う事にしました。
少しだけ最初の読みが外れて嬉しい事は、この保護膜に入った傷の除去は想定よりも楽になるという事でした。
塗装自体の直に入った傷の除去は難しい(手間が掛る)からです。
その意味で、傷除去を目的の磨きを行わなくても、不純物(ワックス被膜)の除去磨きを行えば、ある程度は傷が被膜と同時に除去されて来るからです。
勿論、保護膜の下にも傷・シミがあるので全てにおいて簡単という訳ではありません。
また、今回はコート剤の一回塗布で全体をウールバフで磨いて行きます。
これは、打ち合わせで説明したのですが、傷・シミの除去は完璧を求めると際限がありません。
実際にマルチコート剤を塗布し、同じ個所を何度も磨けば結構な傷シミを埋める事が可能です。
その為に、一回塗布で磨ける範囲で傷シミを除去するという条件で依頼を受けました。
前置きが長くなりましたが、これらの事を踏まえて動画を観れば、理解が深まるのではないかと思います。
マルチコート剤の素晴らしい事は、ゴム製品以外は殆どのパーツで同時に磨ける事です。
フロントバンパーとヘッドライトの材質が違うものでも同時に作業が出来ます。
※ ヘッドライトと樹脂バンパーを同時に磨き作業を行う様子
動画を観ても判るように軟質樹脂・ゴム製品・未塗装樹脂と最小限のマスキングで済みますので付帯作業が少ない事もメリットです。
ライトレンズも樹脂パーツのバンパーも同様の磨き方で綺麗になります。
場面は変わりドアサッシのセンターピラー部の磨きはでは、塗装が本体とは違い塗装が薄いので、無理をしてウールバフで磨く事はお勧めしません。
削らない磨きが売りですが、サッシ部は塗装も薄く、エッジ部に囲まれている為にウールの摩擦だけでも塗装が剥げる事があるからです。
※ 塗装が薄いセンターピラー部の軽い磨き
私でさえも、ピラー部の磨きでは力を入れないで軽い磨きを行っております。
この様な箇所では欲張った磨き(追い込みの磨き)は厳禁です。
施工前よりも改善すれば良いと思う事が肝心です。
今回の動画では最後の磨きとなるリヤドア上部の磨きです。
今回の撮影で、一番に塗装の状態が確認できる箇所です。
遠目で観るとピカピカですが近距離で見ると、荒れている状態が判ります。
多くの雨染みや洗車傷の様なものが確認できます。
ここで、一つだけ試してみたのが、今月一般販売を開始する「専用ウレタンバフ」による磨きです。
※ 目が粗く固くコシのあるマルチコート剤と相性の良い「専用ウレタンバフ」
バフの紹介にて手で擦った音を紹介していますが、文字通りの「ザラザラ」という音が聞こえ、濃色カラーの磨きで本当に使用出来るのか?皆さんも不安になっていると思いますので、試しで磨いて見ました。
磨いた感想ですが、最初に説明した保護剤の被膜は除去出来たと思いますが、商品化前の磨き残しの傷やシミ等までは除去出来ませんでした。
これは、最初に言ったようにスポンジバフの能力では仕方のない事です。
しかし、一番気になる点はウレタンバフの磨き傷ですが、見る限りでは問題は全くありませんでした。
※ 試しで行った専用ウレタンバフによる磨き
これがコンパウンドであれば、必ず白っぽく磨き傷が見えると思います。(目が粗く固い材質の為)
この点もマルチコート剤の性能を生かした点で、ウール磨きでさえ磨き傷が発生しないというコート剤の特性を生かし、汚れを容易に掻き取る為に目が粗く固い材質のスポンジの使用が可能になったのです。
傷シミの除去能力はウールバフには敵いませんが、不純物の除去で能力が最大限発揮できるスポンジバフだと自負します。
濃色カラーでも磨き傷を付ける事無く仕上がりますので安心して下さい。
※ 傷・シミ除去に適したウールバフの磨き
ボンネットの磨きの解説で言い忘れていましたが、コート剤と不純物の除去で起きる「絡み」ですが、今回のギヤアクションサンダーでは回転運動があるので、まとめて「絡み」を除去出来ましたが、決して無理をして機械磨きで除去しようとしないで、強く焼き付く前にマイクロクロスなどで除去して下さい。
水だけを補給する余力磨きは、コート剤が消化仕切れずにバフ内に多く残っていても「絡み」の原因にもなりますので、仕上げ磨きも兼ねて消化を促す為や、バフに取り込んだコート剤と不純物の絡みをリフレッシュする為に、頃合いを見ながら適時行っている行為です。
実車でのウールバフ磨きは少ないので、多くの場面の磨きを紹介したく解説が長くなりましたが、少しでも磨きの知識が深まれば幸いだと思います。
最後までお付き合い頂き有難うございました。
気になった方はサイトも覗いてみて下さい。