症状が落ち着いているので、先生も安心して診察をしてくださっていたようです。
認知症は他人の前では、とかく平静(正常)を装うことが出来るのですが、母は以前
1度だけ、先生の前でも取り乱したことがありました。
あの時は、アリセプトの副作用が出ていて、上手く歩行が出来なくなったり、手が小
刻みに震え、母は自分に対して、混乱と失望と妄想と…自分が壊れて行く…という
実感の中にいたのでしょう。
介護をするようになったばかりの、私たちにしても、母から目が離せない毎日でし
た。
病気が母を壊して行く…
何よりも過保護なくらいに愛情を持って、私たちを育ててくれた母が壊れて行く…
目の前には
『鬼』とか『悪魔』になってしまった母がいました。
父のことを心底憎んでいるような暴言を吐き、時には暴力で訴えて来ました。
父はただ耐えてくれてはいましたが、いつ家族が崩壊してもおかしくない、いつ事件
になってもおかしくない…そんな状況でした。
そんな時、いつも思ったこと。
それは、母には申し訳ないが、私たちは『父を守る』と。
私たちはそこまで追い詰められていました。
幸いにも、それからはそこまで決断をせずに過ごすことが出来ましたが…
そんな過去から先生は診てくださっていたので、今の落ち着いている母をどんな風に感じたでしょうか。
先生はおっしゃいました。
今の状態を維持することが大切
だと。
これからの課題です。
健康な人なら、たやすいことでも、『今』を生きている母にとっては、周りのサポートが必要ですし、本人の気持ちが伴わないと出来ないことですから、これからはしっかり支えてあげたいと思いました。