あらすじ:小学校の夏休み。紅羽と俊也は、幼馴染の遊歩の誘いで田舎の祖母の家へ泊りにきていた。しかし、夜に聞かせてもらったお話で怖くなった3人は…
登場人物(配役)
紅羽(♂):弟、友達想いのしっかり者。小学校2年生
俊也(♂):悪戯好きで、やんちゃ。小学校1年生
遊歩(♀):二人の幼馴染、しっかり者。小学校1年生
遊歩の祖母(♀):子供好きであるが、厳しい所もある
虫歯お化け(♂):黒い布を被った姿に、片手に爪を持つ。
紅羽:
俊也:
遊歩:
遊歩の祖母:
虫歯お化け:
ストーリースタート
祖母M:これは…あの3人がまだ幼かった頃の話じゃ 孫の遊歩が友達を連れて泊まりに行きたいと電話してきてな、夏休みに入ってすぐに、幼馴染の紅羽と俊也という兄弟を連れて来てくれたんじゃよ。あの子達は元気に村の子供達と遊んだりとそれは賑やかな日々を過ごしていたんじゃがなぁ…。ある日の夏の夜の出来事じゃった
(田舎にある大きな家。大広間でパジャマ姿の3人が布団の上ではしゃいで遊んでいる)
俊也:いぇーい!枕当たったー!
紅羽:やったなー!おい、逃げんなよ!ずりいぞ!
遊歩:よーし、あたしもいくわよー!
俊也:待て待て!、二人で投げるなんて卑怯じゃんか!
紅羽:すきありー!
俊也:(枕が当たる音)兄ちゃん、ケツに当てるなんてひでぇじゃんか!
祖母:ほらほら、もうそろそろ寝る時間じゃよ ちゃんと歯磨きしておいで
紅羽、遊歩:はーい
(多少ずれてもいいです)
祖母M:まあ、紅羽と遊歩はすぐに返事をしてくれたんじゃが、俊也は布団の上にすぐ寝そべってしまってな、嫌そうにこう言ったんじゃ
俊也:えー、面倒くせぇーよ 歯磨きなんてしなくていいからさっさと寝ようよ 明日はカブトムシ採りに行くって言ってたじゃんかあ
祖母M:あの子はとにかくやんちゃで言うことを聞かん子でな。私はこんな話をしてあげたんじゃ
祖母:おや?そんな事を言っとると、こわーいお化けがやってきて、虫歯にされちまうぞ?
遊歩:おばあちゃん、それって虫歯お化けのお話だよね?
俊也:お化け?そんなのいんのかよ
祖母M:そうじゃ みんなが眠った頃、歯を磨かん子を捜してな、見つけると虫歯にさせようと追っかけてくるんじゃ そんで、捕まえると長い爪でその子を虫歯にする怖いお化けじゃ。
(風が吹いて、風鈴が鳴る)
紅羽:ま、マジかよ なんかこええよな…って、俊也?お前なんで俺にしがみつくんだよ
俊也:べ、別に怖くなんかねえよ!ただ寒くってさ…
紅羽:は?今夏だぞ?それにお前のデコの汗はなんだよ?ビビってんじゃんかよ、お前も
俊也:う、うっせえよ!ビビってなんかないからな!
遊歩:そういえばあたし、前にもおばあちゃんにそのお話きいたけど、そのときは信じなかったんだ でも本当に見たし、虫歯になったことがあるんだよ…
祖母M:孫が見たというんだから、本当におるんじゃろうな だけどあのやんちゃ坊主は引っ込みつかんようになったのか、必死に強がっとったよ とはいえ、目に涙を浮かべて兄にしがみついてるのを見ると、ほんとは怖がってたんじゃろうねえ
祖母:おやおや。随分と強がっとるのぉ 遊歩はお化けに追っかけられて、結局捕まっちまって歯が痛いって泣いた事あってのぉ それからはちゃんと歯磨きするようになったんじゃよ
俊也:へん!そんなお化けなんか本当にいるもんかよ!遊歩だってどうせ夢か幻覚でも見たんだろうしさ
祖母:さぁさ、お化けに追いかけられたくなかったら、早く歯を磨いておいで そろそろ灯りを消すからの
紅羽:じゃあ行ってくる~
遊歩:ま、待ってよ、あたしもー
俊也:ちぇっ2人ともビビリなんだからよ
祖母M:そんなこんなで遊歩たちを洗面所へ行かせると、私は布団を直したり蚊取り線香をつけたりした しかし、悪戯坊主はまだ歯磨きをやらんかったみたいなんじゃ
(明かりが灯る洗面所で、紅羽と遊歩が並んで歯を磨いている)
遊歩:よし、歯磨きおーわりっと あれ?俊也は?
紅羽:ん?どうせまた台所でお菓子のつまみ食いでもしてるんだろ 昨日だって怒られた癖に、こりねえ奴だよな
遊歩:そうね って、きゃあああああ!
紅羽:な、なんだ!?
俊也:やーい、ビビってやんの!
遊歩:うわーん!紅羽ァ! 頭の上乗ってるの取っええええ!
紅羽:なにがあった ってうわぁ!?おい俊也!お前どこでこんなクモ捕まえてきたんだよ!!
俊也:ん?さっき廊下にいたから捕まえたんだよ お前ら、あの話でお化けがほんとにいるって思ってんのがおもしろくってよ 黒いって言やあ蜘蛛とかぴったしじゃん
遊歩:し、俊也のばかああああ!
紅羽:お前なにやってんだよ!遊歩に謝れ!このバカが
俊也:へん、やーだね ばあちゃんが来て歯磨きさせられないうように、俺は部屋に戻ってるわ
祖母M:まったく困ったもんじゃ そのあと泣きながら戻ってきた遊歩を泣き止ませて、俊也に女の子を泣かせたらいかんって叱ってやったわな さて、ここからは3人から聞いた話なんじゃが、どうやらもうあのお化けは姿を隠して、じーっと狙いをつけとったみたいじゃ
虫歯お化け:……いたな
俊也:ん?風の音かな まあいいや
(灯りを消され、暗くなった部屋でそれぞれ寝息を立ててる3人。ふと俊也がゆっくりと目を覚まして、起き上がる)
俊也:やっべ トイレに行きたくなっちまった 早く行ってこよっと
祖母M:お手洗いを済ませて、手を洗っていると鏡に映っていた後ろが急に真っ黒になって、何か赤い目をしたのが、じっと見ていたらしいのぉ。兄か遊歩が仕返しに来たと思って振り返ったら…
俊也:…え?
虫歯お化け:おおいたいた。悪い子みーつけた
俊也:う、うわぁぁ!?だ、誰だお前はあ!
虫歯お化け:僕かい?僕は虫歯お化けっていうんだ 君が歯磨きしない子だって目を付けてたからねぇ さ、こっちにおいで
俊也:い、いやだよおおおおお!
虫歯お化け:ふ~ん、結構足の速い子だねえ そんなに逃げないで、僕と友達になってよお へへへへ
祖母M:どうやら大人の背丈ぐらいの大きなお化けが立っておって、ヘラヘラと笑いながら腕を伸ばしてきたらしい 俊也は腰を抜かしちまいそうになりながらも、必死で廊下を走って泊まっている部屋に逃げ込んだそうじゃ だけどお化けはしつこく追い回してきよってのう
(部屋に戻るも、追いかけてくるお化けが怖くて逃げ回り、紅羽の足に躓いて派手に転ぶ)
紅羽:いって!なんだよ俊也!気をつけろよな!もう
俊也:兄ちゃん、お化け…虫歯お化けがいるよお!
遊歩:な~に~?もう うるさいよお
紅羽:お前なに寝ぼけて って、うわああ!?
遊歩:え?え?って、ああ!虫歯お化け!!!
虫歯お化け:おや?君もいたのかぁ でも今夜はあの子だからねえ へへへ
祖母M:起こされた二人もびっくり仰天 遊歩を知っていたみたいだから恐らく同じやつだったんだろうねえ とにかく隅っこに追い詰められまいと、大騒ぎだったらしいのお
俊也:うわーん!虫歯なんかになりたくねえよお!
紅羽:このやろお!!俺の弟をいじめんじゃねぇ!
虫歯お化け:おや?おもちゃを投げるとは乱暴な子だなあ、もう
遊歩:二人とも、こっち!
祖母M:3人は風呂場へ逃げ隠れたらしいんじゃ 朝になれば、お化けが諦めて逃げてくと思ったんじゃろうな
紅羽:ここに隠れてれば、すぐにゃ見つからないだろ
俊也:兄ちゃん、遊歩ぉ…
紅羽:大丈夫だって、俊也 なぁ遊歩 お前、虫歯お化けに会った事あるって言ってたよな?
遊歩:う、うん それがどうかしたの?
紅羽:お前、あのお化けの嫌いなのって知ってるかな…ってな それ使ったら、あいつ逃げてくだろ?
祖母M:遊歩が悪戯で泣かされて怒ってたというのに、紅羽も俊也を助けようとしてたのは、やはり仲よしなんじゃろうなあ
遊歩:え?き、急にそんな事言われてもわかんないよお
紅羽:なんだよ 知ってると思ったのによ
遊歩:あ、そういえば…
紅羽:お?なんか思い出したのか?
遊歩:たしか前に、あのお化けに外で会ったんだけどね でもその日曇ってて、急に雨が降って来たの そしたら、あのお化けいなくなっちゃったんだ
俊也:なあ兄ちゃん なんかわかった って、うわああ!?
祖母M:お化けは地獄耳なのかわからんが、遊歩たちの後ろから現れて、俊也を抱きかかえてしまったらしいんじゃ
虫歯お化け:へへっ つーかまえた もう逃がさないからね
紅羽:くそっ 俊也!絶対助けてやるからなあ!
俊也:うわああん!怖いよおおお!
虫歯お化け:へへへ そんなに泣いても無駄だよ?この長い爪で歯を痛くさせてあげるからね♪
俊也:や、やだよお…
紅羽:んなことさせるかよ!弟を離せ!クソ野郎!!
(飛びついて引き離そうとするも、あっさり床に落とされる。)
虫歯お化け:なんで君はこの子を助けようとするのかな?歯磨きもしない悪い子なのに たしか君もそこのお嬢ちゃんも、僕に泣かされたことあるよね?でもすぐに治したり歯磨きをするようになって、捕まえられなくなっちゃった つまんないよ
紅羽:お、俺はお前なんかこわくねえかんな!
祖母M:お化けは、どうやら3人を知っていたみたいじゃ 一度虫歯にされたら、二度とならないようにするもんじゃからな
(洗面器で湯船の水を掬い、お化けに引っ掛ける)
遊歩:えーい!このバカお化けえ!あたしの友達をいじめるなあ!
虫歯お化け:ひぃっ!水!?嫌いいいい!
俊也:な、なんだ?
紅羽:よおし!やつの弱点がわかった!俊也を助けるぞ!!
遊歩:うん!せーの!
祖母M:2人がかけた水がお化けの腕やらあちこちに当たったらしくてな、どろりとゆっくり溶けだしてきてきたらしいんじゃ その隙に俊也の足を引っ張って助け出したらしいの
(お化けに駆けより力いっぱい、俊也の足を引っ張り助け出す)
俊也:あ、ありがと…
虫歯お化け:あ、あきらめないぞ…僕は…お前を虫歯にして…
紅羽:き、消えた?
遊歩:退治、できたのかな?
俊也:もうお化け…こない…よね?
祖母M:遊歩らに阻止されて虫歯にさせることができなくなったお化けは、これはたまらんと黒い霧の中へ消えていったらしい そして3人は疲れと眠さでその場にへたりこんだまま寝てしまったらしいんじゃ しかし目が覚めると、何故か布団の中で眠ってたらしいのう
祖母:さあ、朝だじゃよ みんな起きなさい
紅羽:あれ?俺達…
遊歩:うん、確かお化けと…
祖母M:まるで狐かたぬきに化かされたような様子じゃったが、俊也だけは私に抱き着いて泣きはじめたんじゃ
俊也:ば、ばあちゃああん!
祖母:あれま、急に泣き出してどうしたんかいね?
俊也:ごめんなさーい!俺、これからちゃんと歯磨きするよおお!
祖母:おやおや、急に何を言い出すかと思えば よしよし、泣くな泣くな いい子じゃから さ、みんなはよ着替えんさい、カブトムシを取りに行くんじゃろ?はよう行かにゃすぐ居なくなるでな
紅羽、俊也、遊歩:はーい!
(多少ずれてもいいです)
祖母M:これで私の話はおしまいじゃ あのやんちゃ坊主が泣いたってことは、ほんとに虫歯お化けはいるんじゃよ お前たちも気を付けんと、お化けがいつの間にかこっちを見とるるかもしれんでの?