昔、昔、あるところに、
若く美しい娘がおりました。
彼女は誇り高く、自分に釣り合う伴侶に財力や家柄を求めました。
家を守ることが彼女に課された役目だったからです。
魅力的な彼女の周りには、たくさんの男性がいつも群がっておりました。
けれども、どんなに条件が整っていても、彼女は憂うつになるばかりでした。ハンサムで家柄も良く財力もある男性に求婚されても、心が動きません。
なぜなら、彼女が真に求めていた男性は、例え何も持たなくても、自らの力で人生を歩むことができる真に強い人だったのです。
しかし、彼女はそれが自分にとってどんなに大事なことであるかに気づいていませんでした。
なぜなら、鎧をきて鏡に映る自分しか見ていなかったからです。内にある優しさや弱さを隠すことが彼女の誇りであり、あるべき姿だと思っていたからです。弱味は見せられない。強くあらねばならないと。
涙を見せることさえ、忘れていたのです。
ある日、共に人生を歩む相手として愛することができる男性が現れたとき、彼女は気づきました。素直にならなくてはいけない。鎧を脱いだ自分を見せなければ。でないと、一生後悔するだろうと………
そして、自ら愛を告白し、幸せを掴むことができたのです。
真に求めるものが何なのか？
それがわからなくなるときがあります。
もしかしたら、自分で自分のイメージを固定しているからかもしれません。こうあらねばならない、いやあるべきだと。心の鎧を脱ぐと見えてくるものが、きっとあるような気がします。
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