今週末、FMヨコハマさんでラジオドラマ「煙草と悪魔」が放送される予定です!
私は演出と脚色を担当しています。


放送前ということで、ネタバレにならないよう、配役について少し触れてみます。
(簡単な収録の思い出は放送後にスケジュールが可能であれば書くかもしれません)

※このブログは憶測からの誹謗中傷を防ぐ意図があります。見たい方だけ御覧ください。


《配役の候補について》

配役については、いつも番組スタッフさんたちと相談しておりますので、私に決定権はありません。

以前も書きましたが、私たちがお願いしたい演者さんの候補は、下記のとおりです。

・難しい文学作品を限られた時間内で、スタッフさんや演者さんが疲れない範囲で、的確に演じられる
・キャラや作品の雰囲気に合っている


ラジオドラマですから、決まった尺の中で放送されます。
いつも約5~15分くらいでしょうか。

短く脚色してあるので展開や感情が凝縮されていて、難度も高くなっています。
ニュアンスは細かく調整していくことが多いです。水にお酢を1〜2滴くらいのイメージですね。

それを限られた時間で収めていきますから至難の業です。
丁寧に表現する力も必要だと思います。

コロナ禍のあと、健康に配慮して、できるだけ短時間で収録することが増えました。
ですから、私が個人的に「お気に入り」だから、という理由で配役することは難しいです。時間内で終わるかわからないからです。 

 

ただ、「この演者さんのお芝居の良いところを知ってもらいたいな」というのは、女性でも男性でも、ご出演の皆さんに等しく思っています。

今回のように、難度がある作家さんの場合は「過去にご出演された方」を候補にすることが多いです。そうしないと、作品自体が難しいので収録が長引き、演者さんもスタッフさんも消耗します。これまでに何度も失敗したことがあります。

とくに芥川龍之介のような緻密な作家は、一筋縄ではいきません。
今回は悲劇ではないので、テンポ感も必要になります。

ちなみに芥川を取り上げるのは3回目です。
そのたびに、過去に出演してくださった方をお呼びして、塩梅が難しいと思われる箇所でお力をお借りしています。
(助演やバイプレーヤーの方も含みます)
おかげで印象的な作品になり、心から感謝しています。


ちなみに今回は清野さんが、何度も根気よく応じてくださってます!
本当にタフだったと思います。新人さんながら、今回もよくやってくれました。
そのぶん魅力があるシーンになっていると思うので、どうぞお楽しみに。

配役の候補の理由は、明るさに関する理解と、特有のリズム感(たとえば関西圏におけるものなど)をお持ちであろうと考えたこと。やりすぎてしまうと駄目だし、やらなすぎても違うような気がされます。あとは声の音域。前回、矛盾する2面性について考えてくださったので、それを活かして下さるだろうと考えました。

先輩の山中さんのおかげで、清野さんの『新しい演劇の扉』が開いているんじゃないかな?
と勝手に私は思っています。
(現場でお芝居を実際に見せていただくのは、特別な経験になるものです)


山中さんの語りの技術は、言わずもがなですが、素晴らしいです。
今回は「山中さんのテイクの的確さ」を清野さんが現場で拝見させてもらっていたので、私の気持ち(難しい語りがテキパキ終わっていく)はわかってくださるでしょう。「雨月物語」のときも驚嘆しましたが、今回もすごかったです。
私も大変勉強になりました。
精密な的確さは、とくにナレーションの現場経験がある方はみんなそうなのですが、山中さんもそのうちの一人です!

配役の候補の理由は、語りが安定していること。やはり明るさに対する理解と、それを自然に織り込める方だと思ったこと。明るい内容のコンテンツにも実際にご出演されていると思います。難しい物語なので、的確に収録の時間内でおさめてくださることも重要です。作家性の鋭さを内包できる表現力も必要ですよね。あとは、苦戦するかもしれない新人の清野さんを、必ず温かく見守ってくださると考えたことです。お人柄の部分もあるように思います。



きっと清野さんが「理解しやすい」ように噛み砕いて、さりげなくアドバイスしてくださっていたのではないかと思います。なぜなら、清野さんが現場でたくさん成長していたからです。山中さん、本当にありがとうございました。
きっと清野さんも嬉しかったと思います。(私の勝手な予想です)


まとめますと、作品に合っていない人を、万が一キャスティングしてしまうと、ものすごく消耗させてしまいます。
何度も失敗してきた私が言うのですから、間違いないです。

「どうして私の推しさんを使ってくれないんですか」という感想も複数あるようですが、上記を大切に考えているから、というのが答えです。つまり、皆様の推しさんを大切に考えているのです。

勿論ものすごく無理をしてくださって、演劇の魂をガリガリ削ってくださるなら、なんとかできるかもしれません。
しかしそれは聞いていて疲れてしまうし、私たちも望んでいません。
せっかくの機会ですから無理なくやりたいです。

現場にお呼びしないからと言って何かが物足りないわけではないし、もちろん好き嫌いではありません。個人的には、いつも難しすぎるので、作品に呼ばれないほうがいいんじゃないかな、とも思います。
 

その演者さんが苦しくないように、本当に合っている作品でお会いしたいです。
それがラジオドラマを作っている私たちの願いです。
お気持ちはわかりますが、どうぞご理解ください。

今回も、とっても難しかった「雨月物語」を見事に語ってくださった山中さんと、「お国と五平」で工夫してくれた清野さんが、「難しい……ですよね」というニュアンスのことを仰っているのですから、きっとそうなのでしょう。


演出の音声効果を織り込んでいる私も、何度も直しては聞き直して、の連続でした。
いつも芥川作品は、とくに精密なので、みんなで悩みますが、今回もそうでした。
 

杉田智和さんが読んでくださった「魔術」も、沢木郁也さんが読んでくださった「古千屋」も、本当に本当に、現場のみんなで苦心しました。大変やりがいのある作品ですね。


最後になりますが、ご出演の演者様への誹謗中傷に関して、極めて悪質なものは、所属事務所に相談します。
憶測で何かを書くことは望んでいません。ご自分を守るためにも、やめてください。
残念ながらそうでない場合、事務所と然るべき方法を考えて参りますので、予めご了承ください。

また、心ない書き込みで疲れてしまう場合は、反応せずブロックやミュート機能などで、適切に自衛されてください。


皆様がラジオでポジティブに楽しんでくださることを願っています。
ぜひ山中さんと清野さんが、何度も何度も丁寧に考えてくださった作品を楽しまれてください。