長いので、読みたい方だけお読みください
※演者様の詳しいプロフィールに触れるものではありません
ラジオドラマを聞いて「新しい経験を得られた」という方もおられるようです。
作品を通して、なにか(朗読、ラジオ、文学、読書など)が広がったなら、とても嬉しいです!
素敵なお芝居をしてくださった演者様と、支えて下さったスタッフの皆様に感謝しております。
(今回は戯曲ですが、文豪の作品なので文学というイメージで書いてみますね)
SNSでも書いた通り、今年は、幅広く音声作品を聞かせて頂きました。
文学の収録は、誰にとっても「難しい」と思うからです。
場合によっては、時間内で終わらないかも?
プロだから大丈夫でしょうと思っていても、文学は一筋縄ではなさそうです。
難しすぎて、工夫しないと、次第に現場が疲弊していきます。
(たくさん失敗談がある気がします……)
最近では、コロナウイルスの影響で、収録が短時間になる傾向があります。
それなら、作品に合った候補を提案できると安心です。
現場の方たちが疲れないために大切なことだと思っています。
実際の収録では、演者様とディスカッションしたうえで、何度も調整して、丁寧にリテイク(セリフを録り直すこと)して、ということが多いです。
些細なニュアンスが難しくて、時間ギリギリまで粘ることも珍しくありません。
例えるなら「水にお酢1滴」くらいの精度です。
文学作品の場合は、それだけで大きく物語の印象が変わってしまいます。
感情が凝縮されていて、理解によっては「いかようにも受け取れる」こともある。
登場人物たちも「深い」人たちが多くて、掴みにくい。
本当に、小さな針に糸を通すような感じです。
私も何度も、演者さんたちの「演劇の産みの苦しみ」を見てきました。
スムーズに行くことも多いのですが、場合によっては微調整が難しい。
ただでさえニュアンスの塩梅が簡単ではないのだから、キャラクター性が「演者さんのストロングポイント」に合っていたほうがいい気がします。
そうじゃないと疲弊させてしまうのです。
とにかくみんなで悩み、演劇の産みの苦しみに「うーん……」となり、ベテランさんでさえ「もう一度やらせて頂いても宜しいですか」と言ってくださるようなことも!
例えば、堀辰雄の「浄瑠璃寺の春」を読んでくださった石田彰さんとは、収録前にスタッフさんを交えて、解釈をじっくりお話しました。
(おそらく現代劇では、ここまで綿密に話さないかもです)
そして、より分かりやすくなるように、噛み砕く方法などもご相談させていただきました。
温かく理解してくださり、収録ではとても丁寧にご対応いただきました。
心から感謝しております。
※ちなみに過去の出演者さんは私のWEBの仕事履歴にも載ってます
番組は、ご高齢の方も多く聞かれているので、ゆっくりしたテンポで、単語を明確に立てて頂くことが多いのですが、これも簡単そうに見えて、実はめちゃくちゃ難しい。
当たり前のようにやってくださいますが、高いスキルがないとできないことです。
語りと同じく、男性陣も丁々発止で話しているように見えて、キーワードを立てて話してくれているのです。
だから初見(?)でも理解しやすかったのではないでしょうか。
とにかく難しいので、
「なんで◯◯さんなのですか」ではなくて「その方じゃないと終わらない」というのが正直なところです🌀
ちなみに、初めて原作を読んだとき、友之丞さんのセリフは、私の脳内では、ずっと三橋さんで再生されていました。
それくらい「今回インプットした方の中で、この難役を時間内で終わらせてくれる人は誰なのだ……」と頭のコンピューターをフル稼働させていたのでしょう🔍
ちなみに今回は、(悪意のない悪女である)お国さんが出てくると難しすぎるので、語りに含めることにしました。
何日かお稽古できる媒体なら平気かもですが、それも至難の業。
すると、ちょっとしかセリフが出てこない人物を、立体的に捉えられる表現力が必要です。
かつ、しっかりと語ることができる経験値と視野も!
新しいことに挑戦していて、凛々しさをお芝居に込めることができる、神田朱未さんが浮かびました。
清野さんを候補に考えた理由は割愛しますが、聞いてくださった通りの表現力をお持ちですよね🎁
優しそうだし、可愛いお声の印象だけど演劇のド根性がありそうだし(難しい課題でも投げ出さないだろうし)、塩梅のいい正義感が心の芯にありそうだし、あと個人的な演劇の勘で「俺は必ず一途に想う」と、照れずに言い切ってくれそうな気がしました。
あくまで刑事の勘のようなものですから、他意はありません。
また、お国さんという女性を考えると、五平が若々しい声なら、彼女というものが、またひとつ表現できる気がしました。
「友之丞だけじゃなく、こんな若い子も恋の魔力で……!?」
という感じです。
一緒に旅に出て、五平が成人しているとはいえ、大きな年の差も何のその。
魅力的なお国さん、恐るべしです。
あとは音声作品ですから、友之丞との「声の個性」の差別化があることが条件でした。
そういうこともあり、今回は清野さんに担当して頂くことになりました✨
いやはや。
今回の「お国と五平」も、とても難しかったです。
演者様たちが、どれほど根気よくリテイクをしてくださったか。
はちゃめちゃな友之丞さんと向き合ってくれた三橋さんが、どれだけ苦心して突破口を見つけてくださったか。
とにかく個人的に、文学作品は、めちゃくちゃ難しいんですよ~😅
今回はとくに、演者のお三方が新しい方法を試してくださって、皆様に愛のこもった「芸術のお届けもの」をしてくださったと感じています。
だからこそ、多くの反響があったのでしょう。
新進気鋭の清野さんは、とくに大役ですから、緊張されたと思います。本当によく頑張ってくれました。
そうでした、収録当日!
一足早く来てくれた清野さんとお話する時間がありました。
すると、こんなイメージのことを言ってくれました。
「今回呼んでくださって、とても嬉しかったです」と。
それから私が、(自分の責任の中で)なにかを考えていることがわかったようで、温かく話してくれました。
清野さんは、そういう人です。
聡明で芝居に誠実で、気落ちしている人がいたら、きっと放っておかないタイプです。
三橋さんが寄り添ってくれる優しさを持っているなら、清野さんは、通り過ぎない人なのでしょう✨
ただ、個人的に「そう感じた」だけなので、話半分で読んでくださいませ。
(なにかの足しになるほどの情報にはなりません)
長くなりましたが、今回のラジオドラマの演出メモは終わりです!
尚、内容についてのご意見やご要望は、いかなる場合もお受けしておりません。予めご了承ください