植木枝盛うえきえもり(1857-1892)
『新体詩歌 自由詞林』より
【米國獨立】
▼
茫々乎たり 茫乎たり
太平洋は 太平の
基も固し 文明の
風も香し 亞米利加洲
百年前は 英吉利の
國の支配の いと辛く
民の自由 踏躙り
其の暴虐も 極まれり
當時同盟 十三洲
之を忍ぶに 忍ばれず
頻に鳴らす 革命の
獨立閣の 鐘の聲
獨立閣の その鐘も
之をたゝいて たゝき破り
生くも死するも この時ぞ
自由よ自由と 叫びつゝ
老も若きも 差別なく
少女が友も 押なべて
其赤心を 振おこし
先に/\と 競ひたち
樵る男も 海士が子も
草刈る賤も とり/\に
己が獲物を 提げつ
吾も/\と 雄健びて
雲の如くに 四方より
襲ひ來れる 英國の
其の大軍も 物かはと
進み戰ふ いさましさ
天にとゞろく 雷は
此處や彼處の つゝの音
四方に閃く 電は
交ふる戈の その火花
きのふは親子 もろ共に
煙のなかに うち顛(まろ)び
けふは兄弟 相倶に
雨ふる丸の 下に伏し
あはれ千古の 英雄や
又絶世の 佳人まで
むなしく茲に 戰場の
露と消しも 幾許ぞ
血は漂ひて 波土頓の
ひろき海をも 朱に染め
屍は積みて 落機の
たかき山をも 築くべし
羶風腥雨 天地の
間に溢れ あふれつゝ
七とせあまる 憂き月日
猛り戰ふ 其の結果
妖氛遂に 打晴て
目出度こゝに 英國の
支配を遁れ 獨立の
旗を雲井に 飜へし
凱歌の聲と もろともに
始て開く 新天地
自由共和の 新天地
榮え行く世の 新天地
『新体詩歌 自由詞林』より
【米國獨立】
▼
茫々乎たり 茫乎たり
太平洋は 太平の
基も固し 文明の
風も香し 亞米利加洲
百年前は 英吉利の
國の支配の いと辛く
民の自由 踏躙り
其の暴虐も 極まれり
當時同盟 十三洲
之を忍ぶに 忍ばれず
頻に鳴らす 革命の
獨立閣の 鐘の聲
獨立閣の その鐘も
之をたゝいて たゝき破り
生くも死するも この時ぞ
自由よ自由と 叫びつゝ
老も若きも 差別なく
少女が友も 押なべて
其赤心を 振おこし
先に/\と 競ひたち
樵る男も 海士が子も
草刈る賤も とり/\に
己が獲物を 提げつ
吾も/\と 雄健びて
雲の如くに 四方より
襲ひ來れる 英國の
其の大軍も 物かはと
進み戰ふ いさましさ
天にとゞろく 雷は
此處や彼處の つゝの音
四方に閃く 電は
交ふる戈の その火花
きのふは親子 もろ共に
煙のなかに うち顛(まろ)び
けふは兄弟 相倶に
雨ふる丸の 下に伏し
あはれ千古の 英雄や
又絶世の 佳人まで
むなしく茲に 戰場の
露と消しも 幾許ぞ
血は漂ひて 波土頓の
ひろき海をも 朱に染め
屍は積みて 落機の
たかき山をも 築くべし
羶風腥雨 天地の
間に溢れ あふれつゝ
七とせあまる 憂き月日
猛り戰ふ 其の結果
妖氛遂に 打晴て
目出度こゝに 英國の
支配を遁れ 獨立の
旗を雲井に 飜へし
凱歌の聲と もろともに
始て開く 新天地
自由共和の 新天地
榮え行く世の 新天地