こんばんは。もうウプサラの雪は完全に溶けて消えてしまいました。気温も5度を上回ることもあり暖かい毎日です。さて、先日初めてストックホルム大学にお邪魔しました。というのも、”Japanese Speech Contest for Students in Sweden”というイベントが同大学内ホールで開催されたんです。

 

この弁論大会の存在は直前に知ったのですが、スウェーデン人から見た日本像を聞ける貴重なチャンスだ!と思い切って一人で行ってきました(笑)。実際聞いてみて、行ってよかったと強く思います。日本語を一生懸命話すスウェーデン人たちに感銘すると同時、そのトピックも興味深いものが多く感心しました。

 

そこで今日は、その数あるトピックの中から「政治」を取り上げたいと思います。ここ数ヶ月は選挙もあって政治の話題が絶えないスウェーデンでしたが、今回は特に日本との違いに焦点を当ててみます。

 

2018年の国政選挙の結果

 

 

①社会民主主義

 

スウェーデンで最も大きい政党は「スウェーデン社会民主労働党(Sveriges socialdemokratiska arbetareparti)」と呼ばれ、資本主義や民主主義を取り入れつつ福祉や富の再分配にも注力する「中道左派」に分類されます。スウェーデンは主にこの政党の下で社会民主主義的福祉国家としてここまで成長してきました。

 

日本の民主主義との大きな違いは、社会主義の系譜から生まれる「平等思想」を現代の資本主義や民主主義にうまく溶け込ませている点ではないでしょうか。福祉などの社会保障制度にそれがよく表れています。

 

スウェーデンに暮らしてみるととても魅力的に映る社会民主主義ですが、これはスウェーデンだからできたこと。日本にそのままトレースするのは歴史的および地理的要因から見てまず不可能だと思います(特に人口密度が圧倒的に違う; 日本: 337人/km2, スウェーデン: 22人/km2)。神奈川県くらいの人口が日本より大きな国土に散っていると考えると、国民の管理もしやすい上に振り切った政策を実行しやすいように思えます(地域間の利害対立が減るため)。日本は日本なりのやり方を模索する必要がありそうです。

 

 

②一院制

 

日本の国会は衆議院と参議院で構成される二院制ですが、スウェーデンは1971年にそれを廃止し、現在は一院制です。これはあるスウェーデン人のスピーチで知りました。

 

ヤフー政策企画様より拝借、筆者簡略化

 

上記のようにそれぞれ一長一短あるのでなんとも言えないですが、ただでさえ意思決定のプロセスが冗長な日本は一院制でもやっていけるのではと思ってしまいます。

 

 

③国民の政治への関心度

 

「日本の国民(特に若者)の政治的無関心は深刻である」という文脈をよく目にしますが、それ以上に興味深いのがスウェーデン人の政治的関心度の高さです。数値で測るならば、スウェーデンの投票率(2018年の国政選挙)が87.1%で、日本の投票率(2017年の衆議院議員総選挙)は53.6%。一目瞭然というか、ジェンダーギャップの件同様悲しくなるというか…。

 

あくまで仮説ですが、スウェーデンの現状に一役買っているのが「教育」だと僕は捉えています。スウェーデン人の友達数名に話を聞く限り、彼らは小学校から高校までの間でしっかり政治に関する教育を受けるそうです。具体的には、政治的トピックについてクラス内討議があったり、校内で模擬選挙(実際の政党に対して)を実施することもごく普通にあるとのこと。時に彼らは「早く本物の選挙に行かせてくれ」とまで言うこともあります。本当に素晴らしい。

 

さらに、これもスピーチでスウェーデン人が話していたのですが、日本にある「記者クラブ」(※)たるものがスウェーデンには無いどころか法律で禁止されているそうです。ある程度であれ透明性があることも、国民が政治に積極的になれる要因なのではないでしょうか。

 

※記者クラブ…公的機関などの継続的な取材を目的とした、新聞記者や放送記者によって構成される閉鎖的な組織。記者クラブに所属する記者のみが特権的な地位と情報へのアクセスを得られるため、政治家との癒着による情報操作もまた可能であることから報道の自由が侵害されているのではという意見が少なくない。

 

 

今日はスウェーデンの政治事情について日本との対比を交えながら書きました。とりわけ大事なのは最後の「政治への関心度」。スウェーデン人は皆自分の主義主張をしっかり持っていて感心させられます。日本も見習うべきポイントがたくさんあるし、特に教育は早急に改革する必要性がありそうです。「スウェーデンは平等な社会だ ~幸せの理由~」でも書きましたが、日本の大学受験用詰め込み高等教育は時代遅れも甚だしいことを、スウェーデンに来てより一層理解できました。

 

政治についてはまだまだ詳しくないので、引き続き勉強してまた気づきがあれば更新します。日本にいたときは各政党のマニュフェストもよくわかってなかったな(笑)。外から日本を見る機会をもらえたおかげでようやく自分も政治に興味を抱くようになりました。スウェーデン人を見習って、これからは自分の主張を持てるように。ではでは、hejdå!

 

<参考文献>

人口密度ランキング

一院制/二院制のメリットデメリット

スウェーデンの投票率

日本の投票率

記者クラブ