競馬の師匠の巻

 

その壱   「出会い」

 

琴富士の師匠は第53代横綱琴櫻の佐渡ヶ嶽親方

 

相撲と人生の師匠であった

 

どうしようもない弟子だと自分でも思うが

 

お叱りはあちらへ行ってからタップリと

 

その他自分自身の人生の中で教えを請い、授かり感銘を受け

 

その道の師匠とさせていただいた方が何名かいらっしゃる

 

琴富士は勝手に弟子と名乗っているわけではなく

 

その教えを請うた方には弟子となる事を伝えてはいる

 

師匠の方で承認していないだけである(それは弟子ではないじゃん)

 

プロレス  ジャイアント馬場師匠

 

空手    倉本成春師範

 

 

芸能    丹波哲郎師匠

 

ボクシング 菊池万蔵師匠

 

 

 

色々なジャンルでのご指導を頂いて恐縮の至りであった

 

その中でひと際異彩を放つ師匠がいた

 

あまり褒められたものではないが競馬の師匠が琴富士にはいた

 

その出会いから話は始まる

 

中央競馬から地方競馬もやるようになった琴富士

 

南関東4競馬場

 

大井、船橋、川崎と地方競馬に、のめり込んでいく琴富士

 

行ってないのは浦和だけとなったある日

 

部屋の大林マネージャーから

 

「今日の夜は関取衆食事会です」と連絡が入った

 

千葉県の後援会の方が師匠はじめ関取衆全員を連れての食事会だという

 

5時に部屋のマイクロバスに関取衆が乗り込み市川の某ステーキハウスに着いた

 

上がり座敷にそそくさと座り親方が後援会の方にご挨拶

 

何でも今を時めくビートたけしが食えない若いころ面倒を見たという塗装業の社長

 

 

 

「ささ、親方、乾杯しましょう」とビールが注がれた

 

乾杯が終わると厨房から待ってましたとばかりに料理が運ばれてきた

 

見たことないほどのボリュームのサラダ、きれいに差しの入った牛刺し

 

バカでかいスペアリブにガーリックトースト

 

次から次へと運ばれてくる1キロステーキ

 

 

全て和牛である

 

一通り料理が運ばれ店主が挨拶に

 

「社長、今日はありがとうございます、親方初めまして」

 

長いコック帽を正座した横に置いてマスターが丁重に挨拶する

 

 

 

およそ力士は自分の席ではないと暇を持て余し早く帰りたい病がはじまる

 

食事も大体終わった頃関取衆はもれなくその状態であった

 

宴もたけなわとなり社長が「もう一軒行きましょう」というのを

 

師匠が「場所も近いので今夜はお開きで」断った

 

琴富士はじめ関取衆は「ナイス!師匠!」と思った

 

人生とは面白いものでこのステーキハウスのマスターとこれから

 

長い付き合いが始まるとは両人知る由もなかったであろう

 

翌日琴富士は稽古が終わり一目散にタクシーに乗り込み、浦和に向かった

 

 

 

 

競馬場に着いたのは6レースが終わり配当金がモニター画面に映し出されていた

 

新聞を買いパドックへ行く琴富士

 

本馬場入場後場内の場立ち予想で予想を買う

 

外れる

 

パドックへ行く

 

予想を買う

 

外れる

 

何レースかやっていたら後ろからトントンと肩を叩かれる

 

「勝負師の肩に触るなよ、」と言いそうになったが

 

「関取!昨日はどうも」と先に挨拶された

 

昨日のステーキハウスのマスターだ!やばい!親父(師匠)にバレる

 

慌てて「すいません、親方に言わないでください」と懇願するように言った

 

「そんな事言わないよ!一人で来たの?」

 

「良かったらこっちおいでよ、一緒にやろう」となった

 

2人ともファーストコンタクトなので口数は少なかった

 

ついて行くとマスターの知り合いらしき男の方がいてマスターが

 

「スーさん、お関取さんだから、よろしくお願いします」と紹介する

 

このたった今紹介されたスーさんなる人物が琴富士が競馬するうえでの師匠と呼ぶ人になる

 

スーさんは少し厄介そうな顔をして「3-6」と一言、ただそれだけであった

 

マスターが「スーさん、1は?」と聞く

 

「マスター、いいとこ見るね、でも3着いっぱいだ」

 

果たしてそのレース6-3-1の順であった

 

いきなりの事で琴富士は信用できずに3千円しか買わなかった

 

配当金は800円くらいだが簡単に一点で的中させたこの人は何者?

 

マスターが「関取、俺来れない時があるから、いないときはスーさんに頼んであるから」

 

琴富士は何か楽しみが増えたような気分になった

 

次のレースを聞こうとマスターに聞いたら御徒町に用事あるから先に帰ったとのこと

 

非常に残念な思いをして帰路についた

 

 

 

次回琴富士万馬券の巻

                      自費出版は手持ち不如意の琴富士