空が見たくて飛び出した。 何かが見えると信じて。
そこには温かい夕日が僕を待っていた。
遠く遠く包み込む、夕焼け空に触れて歩みを止める。
過ぎ去りし日々の思い出に浸りながら、そっと僕は瞳を閉じた。
『…』
そこに言葉はない。 けれど、何かが確かに聴こえた気がした。
それだけで、僕は少しだけ前に踏み歩める力を得た。
あの夕日にさよならは言わない。 また戻って来るから。
だから、その時はもう一度同じ温かさで会って欲しい。
そして少しだけ成長した僕を、遠くの空から見つめて欲しい。
そうこころに願い、ゆっくりと夕焼け空に背を向ける。
ふと、頬に微かな笑みがこぼれた。
そんな僕の頬を、夜を告げる冷たい風がそっと撫でた。