人の人生をわかった気にならない
ある朝あなたが会社へ行くと、新人さんがうっすらと涙ぐんでいた。隣を見ると、腕を組んでつっ立っている、古株のおばさん。「ああ、新人さんがおばさんに叱られているんだな、可哀そう」フッとそう感じるかもしれません。でもあなたのその瞬時の想像、必ずしも真実とは限らないのです。もしかしたら、花粉症で涙の止まらない彼女のために、心配したおばさんが目薬を渡しただけかもしれません。誰かに話を聞いただけ、ちらっと見ただけなのに、まるで事の真相を知ったような気持ちになっていませんか。すべてはあなたの思い込みかもしれないのです。
遠離一切顛倒夢想(おんりいっさいてんどうむそう)
「遠離」は、遠く離れていること。続く「顛倒夢想」とは、私たちの妄念(もうねん)の心。つまり間違った考え方や妄想などから解放されて、正しく物事を見ることができるようになったという一節です。