フランスにおける居住権というものは、まことに厄介なもので、スクワット(空き家などに勝手に侵入して居すわるのっとりのような行為・不法占拠)などの問題もしばしば耳にしますが、この行為自体は、不法であるというのに、彼らを追い出すのは、生易しいことではありません。

 

 今回の話は、賃貸の話ですが、シャラント・マリティーム県(ヌーベル・アキテーヌ地域圏(フランス西部)で、2017年以来、家賃未納のために家主が法に訴える手段をとりはじめ、2019年3月にラ・ロシェル裁判所、その後2020年11月にポワティエ控訴裁判所での裁判を経て、裁判所は所有者に有利な判決を下していました。

 

 裁判に時間がかかるのは、珍しい話ではありませんが、それから、さらに3年の年月をかけて、この居住者は、いよいよ住居からの追放の危機に直面していました。

 

 しかし、問題なのは、この女性が97歳という高齢であるうえに、視覚障がい者(盲目)であるということで、こういうケースに必ず集まる人道的な面を問題視するような声が高まり、彼女の弁護士は、この陳情書を裁判所に提出していました。

 

 「彼女は80年前に難民としてフランスにやってきて以来、この家に60年以上住んでおり、解決策なく彼女を追放することは、彼女にとっての死刑を意味する!」とまあ、こんな感じの強烈な言葉を使っての意見です。

 

 結局、シャラント・マリティーヌ県は、「裁判所の判決は履行されなければならないが、「彼女の同意を得て」「適切な宿泊施設」が見つかるまで自宅に留まることができる」とし、県のサービスは、「彼女の年齢、運動能力、障害に適応する宿泊施設を見つけるために取り組んでいる」と発表しています。

 

 しかし、これまでに彼女に対しては、2ヶ所の宿泊施設が提案されてきていますが、彼女はこれらを拒否してきており、彼女がごね続ければ、このままの状態が続くということでもあります。

 

 人道的に彼女を追放するのはどうかという意見もわからないではありませんが、そもそも否があるのは、家賃を滞納している借主の方で、この間の、滞納された家賃は積載されていくだけで、これが今後、支払われる可能性は限りなく低く、結局、家主が泣き寝入りを続けることになります。

 

 長きにわたり、居住している場所をこの高齢者に、出ていけというのは忍びないのはわかりますが、だからといって、家賃を払わずに居座り続けるのが許されるというのは、妙な話です。

 

 フランスで家やアパートを貸すというのは、リスクが多いことで、家主は日本人の借主を好んで探しているというような話を聞くことがありますが、これは、日本人の場合、取りっぱぐれる可能性が低く、しかも、お行儀よく、きれいに住んでくれるという評判が高いことからくるわけで、家賃が払えなければ、そこには住めないという当然の理屈がフランスでは必ずしも通用しないということでもあるのです。

 

 

 

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